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リアクション
『そこまで言ったらもうプロポーズだ!』
『それで結婚しないとか乙女舐めてんの?』
『流石にそれは駄目だと思います』
『『ちゃんと責任取って来なさい!!』』
家族から総ツッコミを喰らった紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、幾度目か分からない結婚式を挙げることとなった。
「唯斗さん、ええと、本気ですか? 私はギフトですよ?」
だが、唯斗から結婚を申し込まれた天 純(あまの・じゅん)は、戸惑っている。
「ギフトだから、なんて関係ない」
そう言い切られてしまえば、純にはもう結婚を拒む理由などない。
「もう一度だけ、言うぞ。俺と結婚してほしい」
「その……ありがとうございます」
純はしどろもどろになりながらも、しっかりと唯斗の想いに応えた。
「こういう時は……不束者ですがよろしくお願いします。……こうでしょうか?」
唯斗は静かに微笑んで、純と共に結婚式会場へ向かうことになる……はずが。
「ちょっと待って下さい」
唯斗の背に、呼び止める声が掛かる。振り返れば、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)がいた。隣には、キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)の姿がある。
「ええと、お二人さんは?」
「私たちも結婚するんです」
「ああ、うん。おめでとう。それは良かった」
「というわけで、一緒に結婚式を挙げてくれませんか?」
「……は?」
アルテミスは以前キロスにプロポーズをして結婚式を挙げようとした。
だがドクター・ハデス(どくたー・はです)に反対されて、なんやかんやあって、結婚式場は爆発して、式を挙げられなかったのだという。
「いや、その時点でいろいろおかしいというか」
「というわけで、結婚費用は使ってしまったんです。なので、予算を抑えるために合同結婚式をしてくれませんか」
「命の危機を感じる提案すぎる」
「おい」
痺れを切らしたように、キロスが口を挟む。
「こっちは命がけなんだ。見殺しにするつもりなら、俺にも考えがある」
「いや、普通命がけの結婚式とか関わりたくないよね!?」
「キロスさん素敵……じゃなくて、どうか協力してもらえませんか?(主に資金面で)」
もう、なんだろうね、コレ。唯斗は溜め息をついて、式場に連絡を入れる。
「……あ、ハイ、分かりました……ええと、二人追加で……あ、違います、新郎と新婦が追加です…………衣装も追加でお願いします」
というわけで、唯斗が折れる形で合同結婚式が執り行われることとなったのだった。
◆
想定外のこともあったが、式はつつがなく執り行われていった。
「これより、誓約式に移らせて頂きます。これより新郎新婦が、永遠の誓いを立てますので……」
司会の言葉を聞きながら、唯斗は純を見つめる。
「純、お前の真名『天殉血剣』は今から『天殉訣剣』だ。殉ずる事と訣別する、って意味でな」
「はい……はい」
「そして、その名は俺が覚えておく。だから普段は紫月・純と名乗れ。俺の嫁さんとして、な」
「私は、純。紫月……純……」
それが、歩き出したお前の、ただの人としての名前だ。
唯斗の言葉に、思わず純が俯く。
「はい……その、すいません、どうしたら良いのか分からなくて」
純の髪の毛が真っ赤に染まっているのを見て、唯斗はクスリと笑った。
「続いて、もう一組の新郎新婦の、心の誓いに耳を傾けてお聞き下さい」
今度は、アルテミスとキロスの誓いの言葉だ。
「私たちは、結婚の誓いをします。これから心をひとつにして、正義の騎士として、共に助け合っていきます!」
二人の誓いを聞いているのは唯斗と純、
紫月 睡蓮(しづき・すいれん)くらいだが、それでもアルテミスたちにとっての証人だ。
「それでは続きまして、誓いの証として指輪の交換をしていただきます」
正直なところ、唯斗はホッとしていた。
結婚式自体は、もうすぐ終わる。それまで保てば、被害を被ることはないであろうと。
……だが、式がクライマックスに移るとともに、式場の外では不穏な足音が響いてきていたのだ。
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