リアクション
「コリマ校長、今後に向けてのオレの考えを聞いてくれ」 * * * 「それで、話というのは?」 ドクター・バベル(どくたー・ばべる)は天御柱学院の上層部に直接交渉を行いに来た。 クーデターによってそれまで決定権を握っていた役員会が壊滅。現在は三科長会と教職員組合が暫定的に学院の運営を取り仕切っている。 とはいえ、超能力科の科長のポジションだけはずっと空きっぱなしなのだが。 「新体制作りに関し、提案を行いたい」 ほう、とパイロット科のサトー科長が興味を示した。 「技術関係のカリキュラムを充実させて欲しい。特に、世界の最新技術が集うこの海京だ。学校としても、力を入れたい分野だと俺は考えている」 「技術か、頭でっかちになんねぇんだったらいいんだがな」 整備科のベルイマン科長がぼやいた。 とはいえ、二人ともちゃんと話は聞いてくれそうだ。 「一応、資料は用意してある。ノア、頼む」 ノア・ヨタヨクト(のあ・よたよくと)に、資料を渡すように指示した。 そこには二点について特に記されていた。 技術倫理と、最新技術だ。 特に、前者の比重を重くするように訴える。 「倫理を知ってなお、その常識を超える技術へ踏み出す理性を鍛えるべきだろう。これは、旧強化人間管理課のような過ちを繰り返さないためにも必要なことだと考えられる」 強化人間管理課は既に解体ということで決定が出されている。 そのため、次の超能力科、ならびに強化人間関係の体制というのはよく検討する必要があるだろう。 バベルが最も今したいことは、ポータラカに行くことであるが、この状況では難しい。つまりここで上層部に食い込んで、技術大使としてポータラカ行きへの理由とすればいいということだ。 「そして後者の最新技術だが、地球の最新技術はここ海京に集うが、パラミタで最も技術が進んでいるのはポータラカだ。そこへ行き、学ぶことが必要だと思われる」 ここから結びつけていく。 「こちらから技術大使として研修に赴くことが出来るのが理想だが、不可能ならばポータラカから講師を派遣してもらう。これにより、まずはポータラカとの技術交流の第一歩とする。どうだろうか」 しばらく思案した後、結論が出る。 「現在、ホワイトスノー博士が不在となったこともあり、こちらの技術が手に余ってる状況だ。可能なら、ポータラカに行き、そして向こうから海京の技術顧問となる人間を連れてきてくれれば助かる。無論、その役目は任せよう」 こうして、ポータラカ行きの算段をつけることが出来た。 「……やれやれ。面倒なことばかりが起きたが、これで目的は達成出来そうだ」 帰り際に、バベルは一息ついた。 「しかし、さっきの交渉。貴公まるで常識人みたいに見えたぞ」 ノアが呟く。 「そんなまさかな。俺がまともな人間のように見えるのは、周りのネジが外れ過ぎてるからじゃないのか。 むむむ……むむむ…まだまだだな、俺も。だが、俺は天才。きっとちょっとだけ大器晩成型なんだ!」 褒められてるはずなのに、なぜか悔しがるバベル。 バベルにとっては、常識人というのは忌むべき言葉だ。常識を超えるのが、天才だと豪語する彼女にとっては。 「とにもかくにも、準備をしないとな!」 |
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