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リアクション
・アンコール
「アンコール、アンコール!」
最後のバンドが終わった後、アンコールの声は止まなかった。次第にその声は手拍子へと変わっていく。
「まだまだ聞き足りないでありますな」
料理コンテスト会場から移動してきた剛太郎は、コンサートに感銘を受けつつ、まだ聞きたいと思っているようだった。
「最後、何かびっくりするような何か起こらないかなー」
ステージサプライズを休憩時間に目撃した梓は、このままでは終わらないと考えていた。
「実は、さっきタイムテーブルにないダンスがあってさー……」
と、その時はいなかった剛太郎に説明する。もしかしたらまた誰かがステージでやらかす事もあるのではないかと。
「ならばわたくしがやりますわ」
剛太郎のもう一人のパートナー、ソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)が急に前へ動き出そうとした。
「どうしたでありますか?」
コンサートの熱気に当てられたのか、それともいろいろな人と話している間に何かあったのか、様子がおかしいソフィア。よく見ると、顔が少し赤く、煙が上がっている。ショート寸前、といったところだろうか。
「あれ、さっきまで出演してた人はみんなどこへ行ったんだろう?」
アリーナにいたクライスは、ぼそりと呟いた。いつの間にか観客席で聞いていたコンサート出演者が皆いなくなっていたのである。
その時、ステージ袖から再び「Fairy ring」の五人が現れた。
「「「わーーー!!!」」」
大きな歓声が湧き上がる。
「みんな、アンコールありがとう!」
ボーカルの歌菜が歓声に応えた。
「この春、新しくやって来た人も」
メンバーが一人ずつ言葉を繋いでいく。
「これから旅立つ人達も」
「今日この日の出会いを」
「これからあるであろう、出会いを」
「大切にして、いきましょう!」
最後の言葉と同時に、煙幕ファンデーションで、ステージが一瞬見えなくなる。
そして、次の瞬間には、コンサートに出演して、観客を賑わせて出演者達が、一同にステージ上に集っていた。
「今日という奇跡に感謝して……みんな一緒に歌いましょう『絆』!」
ピアノ、ブラスから始まり、そのまま歌に入る。
昨日の君を僕はしらない
明日のあなたを私はしらない
だけど僕は知っている
だけど私は知っている
今日の君を
今日のあなたを
続いて繰り返しで、観客達も歌う。
今この時出会えたなら
過去(きのう)も未来(あした)も関係ない
僕達は
私達は
もう繋がっているのだから
サビが終わると、今度はギター、ドラム、ベースによるバンドサウンドになる。今日の様々なジャンルの音楽で、それぞれのやり方でこの曲の旋律を奏でていく。
忘れないよ、いつまでも
覚えている限り、それが今なのだから
アンコールの一曲を終え、全員がステージに並び、手を繋いで一礼する。
そして皆ステージから去っていった。
***
大きな拍手と歓声の中、無事にコンサートも終了した。
「いやー、このみんなが一つになるっていいよね。みんな、お疲れ!」
エミカは客席側のスタッフに声をかけていく。
「楽しかったで。開いてくれてありがとな!」
途中、社を筆頭に、エミカの姿を認めた幾人かは彼女にハイタッチをしていく。このパーティを楽しめた人達は彼女を好意的に捉えているようだった。
「あたしは何もしてないよー。みんなが本気でいいものにしようとしたから、こうなっただけだよ」
このパーティの主催者は、微笑みながらそのような事を言って回るのだった。
こうして、大きな歓声と感動の中、春休みのパーティは幕を下ろした。
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