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【WF】千年王の慟哭・前編

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【WF】千年王の慟哭・前編

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                    *


「……千年王」

 いつの間にか目を覚ましたエンヘドゥがリネン・エルフトの背中で小さくそうつぶやく。
 と、千年王の像の周りを光が走り、隠されていた魔術式が発動した。
 強烈な閃光は天井を突き抜け、空に古代カナン文字が浮かび上がらせる。
 そしてドラゴンの影が咆哮を上げて、像の中に吸い込まれるように消えた。

「なっ、なんだァッ!?」
「ヤバイってことだけはわかるな――ここから逃げるぞ!」

 祭壇を壊そうとしていた国頭武尊とカルキノス・シュトロエンデはそういうと、慌ててその場から逃げ出した。
 すると大聖堂が大きく揺れ始め、彼らが先ほどまでいた場所に、崩れた千年王の像の顔が落ちてくる。

「あれは――!」

 皆と一緒に階段を駆け下りていたダリル・ガイザックが、後ろを振り返って叫んだ。
 普段冷静なダリルがあまりにも驚いていたので、ルカルカ・ルーも後ろを振り向く。

「ほえっ、どうなってるのよ! なんで像の中に本物のドラゴンがいるの!?」

 目を大きく見開いている彼女が見たものは、壊れた千年王の像の顔から覗く、包帯に巻かれた本物のドラゴンの顔だった

「あの巨大な像は、千年王の棺だったというわけですわね」

 千年王の復活を感じ、どこか嬉しそうにする中願寺綾瀬。
 そんな彼女が纏っている漆黒のドレスがつぶやく。

「さて、これからどうなるのかしら?」

 次々に壊れていく千年王の像。
 その内側に隠されていた千年王の亡骸は、徐々にその姿を露にしていく。

≪……ウィアード様、千年王の亡骸を発見しました。回収班をお願いします≫

 と、MがテレパシーでWFのボスと思われる人物に連絡を入れる。

≪……像が棺となっていたようです。気づかなかったのは私のミスです。申し訳ありません≫
≪謝らずともよい。それよりも、我のためにも千年王の体は必ず持ち帰れ≫
≪……はい、この命に代えましても必ず≫

 ――オオオオオオッ!!

 と、亡骸のはずの千年王が吼えた。
 そしてゆっくりとその巨体を動かし、体を戒めるものを振りほどいていく。

「千年王が目を覚ましちゃったわよ」

 険しい表情を浮かべ、フレデリカ・レヴィがそういった。
 その横でルイーザ・レイシュタインがつぶやく。

「この場が復活をさせる場所だというのは、間違いではなかったみたいですね」
「まったく、本当にWFはろくなことをしないわね!」

 フレデリカが悪態をついていると、千年王が自分の足でしっかりと大地に立ち、像の中に一緒に眠っていたサウザンドソードを握った。

『暗イ、アツイ、イタイッ!』

 ――オオオオオオッ!!
 千年王が咆哮を上げて、サウザンドソードをメチャクチャに振り回す。

『ガアアアアッ! 焼ケルッ! 体ガ焼ケル!!」

 そして千年王はそういうと、自分の体をゴリゴリと掻き毟る。
 すると、腐った肉がこそげ落ち、千年王は悲鳴のような声をあげた。

『オオッ、オオオ、我ノ体ガ……誰ダ、我ニ傷ヲ負ワセル敵ハァッ!!」

 皮膚を失った体をしている千年王は、絶え間なく襲う激痛に錯乱してさらに暴れまわる。

『敵……!』

 と、契約者たちの姿を視界に捉えた千年王がそうつぶやく。
 そしてゆっくりと足を前に踏み出した。

『敵ハ全テ、コノ千年王ガ引キ受ケル!』

 ――オオオオオオッ!!
 千年王が吼えた。
 王としての威厳を失って復活した彼は、ただ敵を求める暴龍となって契約者たちに襲いかかる。

「……千年王!」

 と、エンヘドゥが千年王に向けて声をあげた。
 だが、その声は王には届かない。
 そんな中、千年王と相対する契約者たちは武器を構える。
 古の英雄と現在の英雄たちの望まぬ戦いが今、始まろうとしていた。


 ――後編へ続く。

担当マスターより

▼担当マスター

斉藤言成

▼マスターコメント

 最後まで読んでくださりありがとうございます。千年王の慟哭前編はいかがでしたでしょうか?
 少しでも楽しんでいただけたのなら、幸いです。
 
 リアクションについてですが、今回はエンヘドゥを救出する方やウォルター教授を捕らえる方が多くいましたので、突破に少し時間がかかるような展開とさせていただきました。
 そしてその結果、エンヘドゥもピンチに陥りましたが、皆さんのおかげでなんとか最悪の事態は避けられ、教授を捕まえることにも成功しました。
 ただ、千年王が復活してしまいましたので、後編は千年王との戦いとなります。
 千年王を倒すのか、それとも――。
 後編の行く末は、また皆さんのアクションにかかっています。もしよろしければ後編もご参加いただければと思います。
 そして最後に一言。
 皆さん今回もナイスなアクションありがとうございました!

■追記
またもや公開が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。