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リアクション
「た……す、けて――!!」
その連絡を最後に行方不明となった千年王プロジェクトの調査隊。
彼らを捜索するために集められた契約者たちは、空京大学の用意した飛空艇に飛び乗り、千年王が眠る霊廟へとやってきていた。
「これは――!?」
飛空艇から降りたレン・オズワルド(れん・おずわるど)は、サングラスの奥の瞳を見開いた。
彼の目の前に広がっていた光景はあまり無残なものであり、その光景を見た他の契約者たちも次々と声をあげた。
「皆殺しとは……酷いやりようですね」
レンの隣にいたパートナー・アリス・ハーディング(ありす・はーでぃんぐ)も例に漏れずそうつぶやく。
「民俗学者は死者に敬意を持って仕事に当たるものだと思っていましたが、まさか死者が眠るこの場所でその眠りを穢すようなことをするとは……」
「どうやらウォルター教授は学者としての誇りを捨て去ったようだな」
レンはそう言うと、拳を強く握り締める。
と、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が一歩前に出た。
「この人たちをこの場所でそのままにしておくのはかわいそうだ。飛空艇に乗せて、身元に還してやろう」
そしてそう言うと、地面に横たわる人たちの元へと駆け寄っていく。
「アキラさん、私もお手伝いします!」
「仕方ないのぉ……わしも手伝ってやるか」
アキラのパートナー、セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)とルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)もその後に続く。
他の契約者たちも、そんな3人の後に続いて動き出した。
「このまま乗せるのもなんだし、なにか包むものでもあればいいんだが……」
遺体の側に腰を下ろしたアキラがそうつぶやく。
「おい、こっちに連れてこいよ」
「んっ?」
アキラは聞こえてきた声に後ろを振り向いた。
するとそこには、従者である斥候や飛装兵、親衛隊員たちに指示を出しながら、要塞化の技術を使って簡易テントのようなものを作っている佐野 和輝(さの・かずき)の姿があった。
「簡易なものだけど、ここを拠点にしよう。遺体はここに集めて、キレイにしてやろうぜ」
和輝の言葉を聞いたアキラはうなずき、パートナーと共に遺体を拠点へと運んでいく。 と、和輝の背中をアニス・パラス(あにす・ぱらす)がツンツンとつついた。
「和輝、アニスは念のために拠点の周りに結界を張っておくね」
「ああ、わかった」
「ふふっ、では私は死因などを調べて時間でも潰すとするかな……」
リモン・ミュラー(りもん・みゅらー)が運ばれてきた遺体を見て、不気味に微笑む。
そんなリモンをアニスは無言で睨みつけていた。
「どうした? 私の顔に何かついているか?」
その視線に気がついたリモンがそういった。
だがアニスは何も答えず、ぷいっと顔をそむけてどこかに行ってしまった。
リモンはそんなアニスの背中を見つめていたが、興味を失うと遺体へと向き直った。
「ふむ、この辺りのものはかなり古いもののようだね。大勢の人々が建造に関わっている姿が見える」
周囲の状況を探っていた綺雲 菜織(あやくも・なおり)は、朽ちた柱に触れ、サイコメトリで過去の映像を読み取りながらつぶやいた。
有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)は、銃型HCを使って周囲のマッピング作業をしながら、そんな菜織にいった。
「それはそうですよ、菜織様。千年王は古代闇龍と戦っていたそうですから」
「奈織さん、美幸さん」
と、急に名前を呼ばれた美幸と菜織は、作業の手を止めた。
見れば、そこにはふたりの知り合いである緋山 政敏(ひやま・まさとし)が立っていた。
「政敏も来ていたのだね」
「まあね。でも、俺だけじゃないけど」
政敏はそういって肩越しに後ろ振り向く。
するとそこには彼のパートナーであるカチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)とリーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)の姿があった。
「あっ、お姉様!」
と、リリィーシアの姿を見た美幸が声をあげる。
「こんにちは、美幸ちゃん。よろしくね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
ふたりは挨拶を交わし、カチェアも挨拶をした。
「さてと、菜織さん。今回は色々と厄介そうだ。協力してこの事件にあたりたいと思うんだけど……」
「異論はない。そうしよう」
政敏と菜織はそう言うと、それぞれ協力するために色々と話しを始めた。
「おかしい……遺体の数が合わないわ」
ティ=フォンを片手に、拠点となる場所に並べられた遺体をチェックしていたフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)がつぶやく。
彼女のティ=フォンには事前の根回しで手に入れた調査隊のデータなどが入っていた。
「フリッカ、ウォルター教授やエンヘドゥさんの遺体が見当たりません」
同じように遺体の確認をしていたルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)が、フレデリカにいった。
それを聞いたフレデリカは眉をひそめる。
「どうやら情報通り、今回の事件にはウォルター教授……それにウィアード・ファウンデーションが関わっていると見て間違いなさそうね」
「そうですね。前回のこともありますし、その可能性は高いと思います」
過去にウィアード・ファウンデーションの関わる事件に関係していたふたりは顔を曇らせた。
「でも、エンヘドゥさんもいないのはどういう事なのでしょう?」
「わからないわ。でも、見当たらないのはエンヘドゥだけじゃないみたいね」
フレデリカはそういって、ティ=フォンへと視線を落とす。
「IDだけで、顔写真がないからわからないけれど、ウォルター教授が自分の身の回りや調査隊の世話係として個人的に同行させたメイド4名と執事1名の遺体もないわ」
「マリアンヌ・D・ストーン、辿楼院刹那、斎藤ハツネ、天神山葛葉、大石鍬次郎……ですね?」
「ええ、遺体が見つからないということはウォルター教授と何かしら関係があるかもしれないわ」
「ウォルター教授とウィアード・ファウンデーション。彼らは一体何を企んでいるのでしょうか?」
「さあ、何を企んでるんだかたは知らないけれど、この前みたいにろくでもないことに決まってるわ。絶対に阻止しなきゃ……!」
フレデリカはそう言うと、手に入れた情報を仲間たちへと伝えるために動き出した。
そんな彼女の後ろでは、手を合わせてから亡くなった人の遺品を調べるアキラの姿があった。
「申し訳ないけど、何か手がかりがあるかもしれないから調べさせてもらうよ」
「アキラ、遺品をわしに貸すのじゃ。サイコメトリでこの調査隊に何が起こったかを調べる」
「わかった。頼むぞ、ルーシェ」
「まかせておくのじゃ」
ルシェイメアはそう言うと、精神を集中させて遺品のサイコメトリをはじめた。
ちょうどその時、フレデリカからの情報でエンヘドゥが生きていることを知ったレンは、彼女へとテレパシーを送っていた。
「……反応はなしか」
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