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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
嘆きの邂逅(最終回/全6回) 嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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〇     〇     〇


 東の塔への転送は神楽崎優子からの指示もあり、屋上へ行われた。
 離宮を守護していた者達が同行していることもあり、ずれもなく物資とおよそ50人の増援が到着を果たす。
「皮肉なものですね。かつて離宮を守っていた私がここに攻め込む事になるなんて…」
 ニーナ・ノイマン(にーな・のいまん)は、遠くに見える建物を見ながらそう呟いた。
 直ぐに、物資が中へ運び入れられ、軍人達は簡単な説明後に加勢に外へ出る。
 アレナもふらふらと歩き出す。
 直ぐに秋月 葵(あきづき・あおい)がアレナの腕をとり、自分の肩に回す。
「アレナ先輩……ごめんなさい。お守りするって言ったのに大怪我させちゃって……」
 アレナは首を左右に振る。
「何も悪くないです」
「アレナ、やばそうだったら遠慮せず言えよ。そん時はおんぶでも何でもしてやるからよ」
 大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が2人の前に出て、笑顔をアレナに見せた。
「はい。大丈夫です」
 と、アレナは淡く微笑む。
 そして、彼女が向おうとしたのは塔の中ではなく、屋上の端だった。
「ん? 乗り物少ないし、飛んでいくのは無理だぞ」
「はい、そうではなくて……」
 塔の端に着くと、アレナは光条兵器を取り出した。
「すみま、せん……落ちないように、体押さえてくれますか?」
「……うん」
 葵が覆いかぶさるように、アレナの体を押さえる。
 アレナは塔から地上を見下ろして、何度か大きく呼吸をしてから息を止め、体に力を入れて慎重に、弓を引き、光を空に放った。
 空中で弾けた光が地上へと降り注ぐ。
 塔に迫っていた魔道兵器の多くが、その光に打たれ、体の一部が破壊される。
 光は仲間の上にも降り注いだが、動物は切らないと指定して放っていたため、皆無傷だった。
 アレナはそのまま、ぐったりと倒れてしまう。
「アレナ先輩……無理、しないでください」
 葵は泣き出しそうな声で言った。
 だけれど、彼女の一撃でかなり戦況が好転したことが見て取れた。
「……大丈夫です、よ」
 アレナはまた微笑んで立ち上がろうとする。
 葵は前から抱きしめるようにして、一緒に立ち上がった。
「飛空艇に乗って下さい。狙われたら危険だから、皆で護衛するために地上すれすれのところを飛びますけれど」
「はい」
 返事をしたアレナを、葵は一緒に転送してもらった飛空艇に康之と匿名 某(とくな・なにがし)の手を駆りながら、乗せた。
「なぁ、アレナはあんな目にあっても、そしてこんな状況な今も……誰かを護るっていう考えは変えないんだよな……」
 アレナは否定も肯定もせずに、消え入りそうな微笑みを見せていた。
「……俺は、アレナを護りたい。けど、そいつがアレナの邪魔になるなら、俺はアレナを『護る』のをやめる」
 康之の突然の言葉に、アレナは不思議そうな顔をする。
「その代わり、アレナの事は何があっても『助ける』!」
 続く言葉も、アレナには不思議な言葉だった。
「あの……」
 アレナは康之にどうして? と問いたかった。
 だけれど、状況がそれを許さなかった。
 だから全て終わったら、お話しましょうと、言いたかったけれど。
 それも無理なことだと……思ったから。
「いえ、なんでもないです。急ぎましょう、お願いします」
 そう言って、葵に飛空艇を発進してもらった。

 増援到着の知らせを受けた大岡 永谷(おおおか・とと)は、作成した地図、要請して用意しておいた救護に必要な物資を救助に向うメンバー達に手渡した。
「塔の守護に力を貸してくれてありがとう。新たな、大事な仕事を無事成功させて欲しい」
「ああ、必ずな。……行くぞ」
 代表して、武尊が通信機を受け取り、仲間と共に敵の中を突っ切って使用人居住区へと向う。
 それから、永谷は塔で戦う者達にも声をかける。
「みんな、今までありがとう。ここを今防ぎきれば、事態が改善して俺達は勝利に近づけるはずだ。その為に、みんなで協力し合って頑張ろうぜ」
 傷だらけの仲間達が立ち上がり、永谷の言葉に「おお」と返事をしていく。
「負傷者は下がれ」
 増援の軍人達が塔から飛び出して混ざる。
 永谷は更に言葉を続けた。
「今、俺達は、一つの目的に向かって、様々な立場を超えて頑張っている。俺達の戦いの向こうには、希望が広がっている。その希望を掴み取る為には、俺達が頑張らなきゃだめなんだ。期待してるし、俺も期待にこたえたいぜ」
 言いながら、ラスターエスクード――巨大な盾を手に、最前戦へと出て敵の攻撃を防ぐ。
 永谷が防いだ敵を、軍人達が一斉射撃で倒していく。
「さあ、一気に片付けるわよ!」
「はい、母様」
 祥子同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)は、地上から駆けつけたセリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)の2人と合流をすると、敵の前へ躍り出ながら禁じられた言葉で魔力を上昇させた状態で、サンダーブラストを放つ。
「いきますよ。残敵掃討♪ 残敵掃討♪」
 静かな秘め事――静香は、火術を放ち敵を燃やしていく。
 増援の到着により、東塔の状況はかなりこちらが有利な状況となっていた。
「1体ずつ確実にいきましょう」
 ランスロットは敵、石像の側面へと回り込み、レプリカ・ビックディッパーを渾身の力で叩き込む。
 強烈な一撃により石像は破壊されて動かなくなる。
「アレナさんの攻撃のお陰でもありますよね。この拠点……拠点にいる人達も、なんとしても守らなきゃ」
 セリエはかなり体調が悪そうだったアレナを気にしながらも、目の前の敵達に集中をしていく。
 幻槍モノケロスを手に、魔道兵器達に挑む。やはり側面から、兵器の体に槍を突き刺していく。体に大きな穴の開いた敵が、倒れて動かなくなる。
「雷系に弱い兵器もいるみたいですね。石像の類は歩けない状態にしてしまえば、飛んで攻めてくることはないようです。コアとなる部分が体の中心にあるのでしょうか」
 静香はそう分析しながら、パワーブレスを皆にかけていく。
「それじゃ、もう1発!」
 祥子はサンダーブラストをもう1発放つ。
 機械系の人造兵器達の動きが鈍り、パチパチと光を放つ。
 続いて、幻槍モノケロスを手にチェインスマイト。敵を2体打ち倒す。
「十分片付けられそうですな。だが、敵の中に入り込み、孤立したりはしないよう皆も注意なされよ」
 ランスロットはまた1体、敵を頭から砕いた後、皆の元に跳び戻り次なる敵に狙いをつけていく。
「長く前線にいられるように、負傷はなるべく避けましょう!」
 セリエは魔法攻撃で弱った敵を狙って、強く一歩踏み込んで槍を突き刺し、倒す。