リアクション
〇 〇 〇 東の塔への転送は神楽崎優子からの指示もあり、屋上へ行われた。 離宮を守護していた者達が同行していることもあり、ずれもなく物資とおよそ50人の増援が到着を果たす。 「皮肉なものですね。かつて離宮を守っていた私がここに攻め込む事になるなんて…」 ニーナ・ノイマン(にーな・のいまん)は、遠くに見える建物を見ながらそう呟いた。 直ぐに、物資が中へ運び入れられ、軍人達は簡単な説明後に加勢に外へ出る。 アレナもふらふらと歩き出す。 直ぐに秋月 葵(あきづき・あおい)がアレナの腕をとり、自分の肩に回す。 「アレナ先輩……ごめんなさい。お守りするって言ったのに大怪我させちゃって……」 アレナは首を左右に振る。 「何も悪くないです」 「アレナ、やばそうだったら遠慮せず言えよ。そん時はおんぶでも何でもしてやるからよ」 大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が2人の前に出て、笑顔をアレナに見せた。 「はい。大丈夫です」 と、アレナは淡く微笑む。 そして、彼女が向おうとしたのは塔の中ではなく、屋上の端だった。 「ん? 乗り物少ないし、飛んでいくのは無理だぞ」 「はい、そうではなくて……」 塔の端に着くと、アレナは光条兵器を取り出した。 「すみま、せん……落ちないように、体押さえてくれますか?」 「……うん」 葵が覆いかぶさるように、アレナの体を押さえる。 アレナは塔から地上を見下ろして、何度か大きく呼吸をしてから息を止め、体に力を入れて慎重に、弓を引き、光を空に放った。 空中で弾けた光が地上へと降り注ぐ。 塔に迫っていた魔道兵器の多くが、その光に打たれ、体の一部が破壊される。 光は仲間の上にも降り注いだが、動物は切らないと指定して放っていたため、皆無傷だった。 アレナはそのまま、ぐったりと倒れてしまう。 「アレナ先輩……無理、しないでください」 葵は泣き出しそうな声で言った。 だけれど、彼女の一撃でかなり戦況が好転したことが見て取れた。 「……大丈夫です、よ」 アレナはまた微笑んで立ち上がろうとする。 葵は前から抱きしめるようにして、一緒に立ち上がった。 「飛空艇に乗って下さい。狙われたら危険だから、皆で護衛するために地上すれすれのところを飛びますけれど」 「はい」 返事をしたアレナを、葵は一緒に転送してもらった飛空艇に康之と匿名 某(とくな・なにがし)の手を駆りながら、乗せた。 「なぁ、アレナはあんな目にあっても、そしてこんな状況な今も……誰かを護るっていう考えは変えないんだよな……」 アレナは否定も肯定もせずに、消え入りそうな微笑みを見せていた。 「……俺は、アレナを護りたい。けど、そいつがアレナの邪魔になるなら、俺はアレナを『護る』のをやめる」 康之の突然の言葉に、アレナは不思議そうな顔をする。 「その代わり、アレナの事は何があっても『助ける』!」 続く言葉も、アレナには不思議な言葉だった。 「あの……」 アレナは康之にどうして? と問いたかった。 だけれど、状況がそれを許さなかった。 だから全て終わったら、お話しましょうと、言いたかったけれど。 それも無理なことだと……思ったから。 「いえ、なんでもないです。急ぎましょう、お願いします」 そう言って、葵に飛空艇を発進してもらった。 増援到着の知らせを受けた大岡 永谷(おおおか・とと)は、作成した地図、要請して用意しておいた救護に必要な物資を救助に向うメンバー達に手渡した。 「塔の守護に力を貸してくれてありがとう。新たな、大事な仕事を無事成功させて欲しい」 「ああ、必ずな。……行くぞ」 代表して、武尊が通信機を受け取り、仲間と共に敵の中を突っ切って使用人居住区へと向う。 それから、永谷は塔で戦う者達にも声をかける。 「みんな、今までありがとう。ここを今防ぎきれば、事態が改善して俺達は勝利に近づけるはずだ。その為に、みんなで協力し合って頑張ろうぜ」 傷だらけの仲間達が立ち上がり、永谷の言葉に「おお」と返事をしていく。 「負傷者は下がれ」 増援の軍人達が塔から飛び出して混ざる。 永谷は更に言葉を続けた。 「今、俺達は、一つの目的に向かって、様々な立場を超えて頑張っている。俺達の戦いの向こうには、希望が広がっている。その希望を掴み取る為には、俺達が頑張らなきゃだめなんだ。期待してるし、俺も期待にこたえたいぜ」 言いながら、ラスターエスクード――巨大な盾を手に、最前戦へと出て敵の攻撃を防ぐ。 永谷が防いだ敵を、軍人達が一斉射撃で倒していく。 「さあ、一気に片付けるわよ!」 「はい、母様」 祥子と同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)は、地上から駆けつけたセリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)と湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)の2人と合流をすると、敵の前へ躍り出ながら禁じられた言葉で魔力を上昇させた状態で、サンダーブラストを放つ。 「いきますよ。残敵掃討♪ 残敵掃討♪」 静かな秘め事――静香は、火術を放ち敵を燃やしていく。 増援の到着により、東塔の状況はかなりこちらが有利な状況となっていた。 「1体ずつ確実にいきましょう」 ランスロットは敵、石像の側面へと回り込み、レプリカ・ビックディッパーを渾身の力で叩き込む。 強烈な一撃により石像は破壊されて動かなくなる。 「アレナさんの攻撃のお陰でもありますよね。この拠点……拠点にいる人達も、なんとしても守らなきゃ」 セリエはかなり体調が悪そうだったアレナを気にしながらも、目の前の敵達に集中をしていく。 幻槍モノケロスを手に、魔道兵器達に挑む。やはり側面から、兵器の体に槍を突き刺していく。体に大きな穴の開いた敵が、倒れて動かなくなる。 「雷系に弱い兵器もいるみたいですね。石像の類は歩けない状態にしてしまえば、飛んで攻めてくることはないようです。コアとなる部分が体の中心にあるのでしょうか」 静香はそう分析しながら、パワーブレスを皆にかけていく。 「それじゃ、もう1発!」 祥子はサンダーブラストをもう1発放つ。 機械系の人造兵器達の動きが鈍り、パチパチと光を放つ。 続いて、幻槍モノケロスを手にチェインスマイト。敵を2体打ち倒す。 「十分片付けられそうですな。だが、敵の中に入り込み、孤立したりはしないよう皆も注意なされよ」 ランスロットはまた1体、敵を頭から砕いた後、皆の元に跳び戻り次なる敵に狙いをつけていく。 「長く前線にいられるように、負傷はなるべく避けましょう!」 セリエは魔法攻撃で弱った敵を狙って、強く一歩踏み込んで槍を突き刺し、倒す。 |
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