校長室
嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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第4章 衝突 地下道、地下ホール入り口を爆破後、最初に意識を取り戻したのは鬼院 尋人(きいん・ひろと)だった。武装をしていたこと。そして、パートナーの呀 雷號(が・らいごう)が庇ってくれたお陰だ。 それでも体のいたるところが瓦礫と土に押しつぶされ、首を動かすこともままならなかった。 「雷號、大丈夫か……雷號」 小さな声で、パートナーの名を呼ぶ。触れている体に温かみがあることから、生きてはいると思われた。 無線機のスイッチには辛うじて届く。だけれど敵に傍受される可能性があるのではないかと考え、連絡は入れなかった。 「……っ……」 「雷號、大丈夫!?」 「大丈夫、だ。獣人は……強靭な、体力がある」 意識を取り戻した雷號は、尋人にそう答えた。素早さを重視した軽装備で訪れたため、雷號は長くは持たないほどの重体であり、自分でもそれに気付いていたが、尋人には言わなかった。 しかし隠していても、途切れ途切れの言葉や流れ落ちてくる血から、パートナーが相当な怪我を負っていることが尋人に伝わってくる。 「今まで、戦う時くらいしかあまり話さなかったけど、……もっといろいろ話したい。だから……死なないで欲しい」 苦しげな尋人のその言葉に、雷號は微かに笑った。 「そう、簡単に、くたばることは……ない」 「オウ、痛いデース……」 ジョセフ・テイラー(じょせふ・ていらー)の体は、リジェネレーションで癒されていくが、体中に圧し掛かっている瓦礫をどかさなければ、きちんと回復が行えることはなかった。 ジョセフを庇った赤羽 美央(あかばね・みお)も重体状態だったが、目を覚ますと同時に無意識にヒールを使い、声を出せる程度には回復していた。 「どなたか、ご無事な方はいます、か……」 小さな声で確認すると、やはり小さな声で、尋人から雷號と共に危険な状態だが無事だと返事が届いた。その他の反応はなかった。 「大きな怪我はないデスか? トイッテモ、見えないので治療も出来まセンガ……」 ジョセフの問いには、頑張るよとだけ声が帰ってくる。回復技能がない分、尋人と雷號の方が危険な状態なようだった。 見回しても、崩れた壁や天井以外何も見えない。 美央は殺気看破で探ってみるが、近づいてくる敵は今のところいないようだ。ホールの中の敵は倒せていないはずなので、周囲が崩れたために、近づける状態ではないということなのだろう。 「通信機、動く……かな」 美央は痛みを堪えながら通信機のスイッチを押してみると反応があった。 直ぐに状況の報告と、救助のお願いをする。 ヒールで回復をしながら、現在地、仲間の状況、ホールは入り口を塞いただけで、中の敵の多くは生きているだろうこと、反対側に光条兵器使いが迫っていたことなど、分かること全てを説明した。 本陣からの返答によると、既に東塔に集まっていた者達が救助に向ってくれているとのことだった。本陣の方からも調査に向かった人がいるらしい。 通信を終えた後、美央は尋人と雷號。それから返答のないヴァイシャリー軍の人達に、声をかけていく。 「諦めないで……下さい。皆さんにも、家族や友達がいるはずです。残された人の悲しみは、その人にしかわかりません」 痛みに耐えながら、途切れそうになる意識を奮い起こして美央は話していく。 「適当に扱われて良い生命なんてないし、それは自分たち達にも言えること。だから、今生きているみんなで何とか生き抜きましょう。そして、また自分たちの居場所に帰りましょう」 「……名も知らぬ軍人サン、ユー達も男ナラ愛する人を悲しませちゃいけまセン」 ジョセフも、望みは薄いと分かっていても爆破地点の近くにいた軍人達に声をかける。 返事がなくても、言葉を続ける。 「這いずり回ってデモ、愛する人のところに戻るのが男デス」 「諦めないで、待ちましょう。今は仲間を信じて……」 美央はかすれる声で皆を励まし続ける。