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マリエルの5000年前の友達

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マリエルの5000年前の友達

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地下3階へ

 封印のガーディアン、ストーンゴーレムを倒したものの、生徒たちは先へ進む道がみつからず、立ち往生していた。

 遺跡の内部構造をマッピングしていた神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)は、困惑して言った。

「おかしいな、この階層は、もうすべての部屋を探索したのに、封印を解くカギが見当たらない・・・・・・もっと下に階があるのかな?」

 酒杜 陽一(さかもり・よういち)はうなずく。

「確かに、この下にまだフロアがある可能性は否定できないな。重要なものほど、深く厳重な位置にあるのが基本だろう? 守護者や罠がより厳重な階層にこそ、重大な手掛かりがあるのかもしれんな」

 天枷 るしあ(あまかせ・るしあ)トゥプシマティ・オムニシエンス(とぅぷしまてぃ・おむにしえんす)は、用意した10フィート棒で、そこらじゅうの壁や床などを叩きまわっている。

「叩いたときの音が違えば、隠し部屋があるかもしれません。進みは遅くなりますが、くまなく叩いていきますよ」

 すると、ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)が、声を上げた。

「あら春美、そこの柱は入って来た所と様式が変わってるみたい。天眼鏡持ってるでしょ? ちょっと調べてみて」

「ん? どれどれ」

 霧島 春美(きりしま・はるみ)が柱を調べているとき、超 娘子(うるとら・にゃんこ)がさきほどの勝利の勢いで、横の壁を思わず殴った。

「こら、ニャンコ! 壁を殴っちゃダメよ。崩れたらどうするつもり?」

「ごめんニャさい・・・・・・」

「あれ? ちょっと待って。今ニャンコが殴った音、途中で変わったわね。なんか抜けたような・・・・・・春美、超感覚で注意してみて。もしかしたら、隠し部屋か階段でもあるのかもしれないわ」

「わかったわ。あっ、超感覚でうさ耳を出そっと。これで、どんな小さな音や気配も逃さないわ。 えへへー、これってかわいいよねー。うさ耳魔女な、名探偵の登場よ(はーと)」

 そういって、霧島 春美(きりしま・はるみ)が超感覚を集中させてみると、確かにこの先に空洞のようなものが感じられた。

「ニャンコ、手加減してもう一度叩いてみて」

「はい」

 超 娘子(うるとら・にゃんこ)が壁を叩く音を聞くと、ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)は確信を持った。

「ほら、このあたりで音の振動が奥に抜けてるわ。春美、ここ調べてみて」

 そこで、霧島 春美(きりしま・はるみ)が注意深く壁を調べてみると、なんと、引き戸のように、壁を開けることができたのだ。

 そして、その向こうには、みんなが捜し求めていた、下層への階段があった。

「でかしたニャンコ! 今日2つめのお手柄だな」

 酒杜 陽一(さかもり・よういち)に絶賛され、恥ずかしがりながらも満面の笑みを浮かべるニャンコであった。

※ ※ ※


 調査隊一行は、地下3階に降り立った。

 遺跡はますます暗く、ますます静まり返っていた。

 戦闘のない移動中にメンバーたちと会話を楽しんでいた大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)も、さすがにこの雰囲気では気軽におしゃべりをすることもなく、黙って歩みを進めていた。

 しかし、重苦しい沈黙は、メンバーの気を滅入らせてゆく。

 如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は、この空気を打ち破ることにかこつけて、隣を歩くテティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)に質問をぶつけてみた。

「テティスさん、訊いてみたいことがあるんだけど・・・・・・」

「え、なに?」

「さっき見たファラールと同じように、俺のパートナーも封印されていたんだ」

「・・・・・・」

 当のエミリア・パージカル(えみりあ・ぱーじかる)は、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)の袖を指でつまみながらくっついて歩く。

「俺たちの場合、偶然にもエミリアに触れたことで、封印が解けたんだけどね・・・・・・」

「そう・・・・・・でも、今回はマリエルが触れても封印は解けなかったわね」

「うん。でも、きっと封印を解く方法があるはず・・・・・・それより、俺思うんだけど、なぜ、封印されるような状態になったのか、テティスさんの意見を聞いてみたいんだ」

「そうね。ひとつは、強力すぎて倒せないから、封じるしかないという場合」

「なるほど」

「もうひとつは、封印しておくことで、その状態を保ち続けることができるって場合かな・・・・・・この遺跡では、こちらのケースであるような気がするの」

「ほう。じゃあ、もうひとつ訊いていい? 『剣の花嫁』と『十二星華』に関して、テティスさんはどう思ってる?」

「そうね。剣の花嫁は、光条兵器の守護者であり、パートナーの剣となる存在。十二星華は、星剣を用いてシャンバラ女王を陰ひなたから支える存在・・・・・・かな」

「ありがとう、気になっていたことが訊けて、すっきりしたよ」

 と、正悟の後ろにいたエミリア・パージカル(えみりあ・ぱーじかる)が口を挟んだ。

「私も、あなたと同じ、剣の花嫁なんですけど・・・・・・もし、自分が記憶が戻ったとき、以前とは全然違う状況だったとしたら、テティスさんならどうしますか?」

「うーん、そうねえ・・・・・・ごめん、それは私にもわからないわ。実際そうなってみないとね」

「確かにそうね。とにかく今は、封印されてしまった人たちの救出が最優先だね」

 朝野 未沙(あさの・みさ)もこれに同意。

「そうそう。マリエルさんが無事にファラールさんと再会出来たら、お祝いしようね。マリエルさんの大好きなスイーツ、いっぱい、いーっぱい作るから、楽しみにしててね!」

 こういって、傍らにいたマリエルを励ました。

 マリエルの不安な顔が幾分和らぎ、調査隊を覆っていた重苦しい雰囲気も、ちょっとだけ穏やかなものに変わってきた。

※ ※ ※


 やがて、調査隊の一行は、小部屋に入った。

 と、前を歩いていた数人が入ったところで、上から扉が降りて来て、先に入った生徒たちが中に閉じ込められてしまった。

 と、上のほうからゴトゴトと嫌な音が鳴り響く。

「これは、吊り天井だ! 助けてくれー!! 潰される!」

 部屋の中から神崎 優(かんざき・ゆう)が絶叫する。

 すかさず、佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)が、トラッパーで得ている知識と捜索を使って、解除の方法を探し出した。

「上だ。この上に吊り天井を動かしている装置がある。それを壊すんだ!」

「私が行くわ」

 秋月 桃花(あきづき・とうか)はそういうや、上空に飛び立って、吊り天井を動かしている装置のスイッチを切った。

 間一髪、中にいた生徒たちは救出された。

 命拾いした神崎 優(かんざき・ゆう)は、自戒の念をこめて言った。

「ふう、危ないところだった。どこにどんな罠がひそんでいるかわからないから気をつけないと。それに、もし間違った行動をして、マリエルの友人を死なせてしまっては元も子もないからね」

 一行は、一層気を引き締めて、奥へと探索を進めていった。