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マリエルの5000年前の友達

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マリエルの5000年前の友達

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待ち受ける罠

 さて、未知のエリアに足を踏み入れた生徒たちは、慎重に歩みを進めていた。

 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は、光術を使って、暗闇を照らした。

「おお、明るい! 陽子さん、ありがとう! これで探しやすくなったよ。超感覚や殺気看破があるとはいえ、やっぱり視覚が使えると段違いだからね。どこに罠が仕掛けられているかわからないから、気をつけていこう」

 喜ぶウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は笑顔で答えた。

 しかし、明るくなったとはいえ、安全が保証されているわけではない。

「ここには、隠すぐらいのモノがあるんだろう?」

 匿名 某(とくな・なにがし)は、つぶやきながら調査スキルを発動していた。

 某の後ろには、結崎 綾耶(ゆうざき・あや)大谷地 康之(おおやち・やすゆき)と続く。

 某は、トレジャーセンスを使いつつ、禁猟区や女王の加護で罠を警戒。

 綾耶は、これをサポートするように禁猟区で周囲を警戒。某たちが見逃してる発見があったらすぐに報告できるよう、万端の備えを怠らない。

「遺跡ってのは何があっても不思議じゃねえからな」

 こう警告するのは、しんがりを務める康之。彼も、女王の加護で後方の安全を確認している。

 3人の見事なコンビネーションにより、一行の歩みは進んだ。

 しかし、どこに危険が潜むかわからない遺跡に、セシル・グランド(せしる・ぐらんど)は、恐怖を隠せない。

「遺跡ということは『神話』は関係しているのでしょうか? 『神話』は少しぐらいなら知識がありますが・・・・・・森次、怖いので先行ってもらえませんか?」

 神話の話を持ち出しながらも、涙目になりながら一ツ橋 森次(ひとつばし・もりつぐ)の背中を押している。

「セシル。ちょっと、押さないでくれる? うわっ」

 一ツ橋 森次(ひとつばし・もりつぐ)がつんのめって、前方の床石を踏んだ途端・・・・・・

「ピュンピュンッ」

 一行に向かって、矢があられと撃ち込まれた。

「危ない!」

 和泉 真奈(いずみ・まな)は、とっさに森次をかばう。

 しかし、流れ矢がセシル・グランド(せしる・ぐらんど)の腕に当たってしまった。

「うわーっ」

「大丈夫か、セシル!」

 一ツ橋 森次(ひとつばし・もりつぐ)が身を挺してパートナーをかばう。

 神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)は、急いでセシルを回復させると、素早く罠の解除にとりかかった。

「ふう、これで大丈夫。もう矢は飛んでこないよ・・・・・・これは、アロースリットだね。侵入者が来ると、壁から矢が発射される仕組みなんだ。ほら、ここ見て。床の色が少し違うだろう? ここを踏むとスイッチが入るんだよ」

 翡翠と同じローグの桜田門 凱(さくらだもん・がい)も、この手際のよさに感心していた。

「さすがは翡翠だな。よく見破った・・・・・・でも、罠はここだけじゃあるまい。もし、封印を解除しようとすると、儀式が発動する危険があるんじゃないか?」

「それは大いにありえるな。よし、これからも罠が隠されているかもしれないから、石を床に投げて確認しながら進もう」

 そういうと、一行はまた歩を進めた。

※ ※ ※


 アロースリットの攻撃を受けたことにより、生徒たちは一層の緊張感をもった。

 清泉 北都(いずみ・ほくと)は、禁猟区を張り巡らし、周囲に罠や待ち伏せ等がないかを確認する。同時に、超感覚も駆使して、有事の際、咄嗟に反応出来るよう構えていた。

 霧島 春美(きりしま・はるみ)も、罠の発見に余念がない。

「歩いていて足音が変わったり、色が違う石があったり、遺跡内に風がふいていたり、水がたまっていたりとか、他と様子が違うところは念入りにチェックよ!」

 そういって、あちこち歩きながら、壁を調べたり、床をたたいたりを繰り返していた。

 霧島 春美とは逆に、中原 一徒(なかはら・かずと)はむやみに動き回らなかった。

「俺は、常に戦闘に備える。だから、ここで静かに待機しているんだ」

 そういいつつも、敵がいないか、遺跡に異常が起きないかと、五感を働かせていた。

 しかし、しばらく何事も起こらないとみるや、六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)は別の話題へと生徒たちの気をそらせた。

「この遺跡は、鏖殺寺院関連のものだな。私の考えだと、鏖殺寺院は、女王器に関し何かを調べる、もしくはそれを入手し実験をしていたのではないかと思うよ。おそらく、古シャンバラ王国の戦力を無効化する実験をしていたのではないかな?」

 六鶯 鼎の仮説を、霧雨 透乃(きりさめ・とうの)は興味なさげに聞いていた。

「ふーん、なんだか難しくてよくわからないなあ。私、正直いうと鏖殺寺院とか儀式には興味はないから、調査は他の人に任せるよ。でも、戦えそうなものが出てくるまでは、調査している人達の近くにいるから・・・・・・罠とかを見つけるのも、そういう人のほうが得意そうだからね」

 パートナーの緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)も、他人任せのところはまったく同じ。

「確かに、遺跡のことは気になりますけど・・・・・・六鶯さんみたいに詳しい人がいるから、調査はお任せしまーす」

 六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)は、フンと鼻を鳴らしながら前方を見た。

「どちらにせよ、地下2階以降は保存状態が良い。だから、最奥部に行けば、なにがしか資料があるはず。うまくいけば女王器が見つかるかもしれないな」

 すると、だまって歩いていた神代 聖夜(かみしろ・せいや)が、鼻をヒクヒクさせながら鋭い声を発した。

「ム、なにか臭うぞ! これは、眠りガスだ!」

 人間よりもはるかに鼻の聞く獣人ゆえに、臭いの感知も早かった。

「プシューッ」

 勢いよく眠りガスが噴き出される。

「ここは俺が解除してみせる!」

 匿名 某(とくな・なにがし)は、ガスを吸い込まぬよう、鼻と口をふさいで噴出孔へと走っていった。

「ダメだ。解除できない。みんな、この噴出孔を迂回して進むんだ」

 一行がガスをよけて進む間も、匿名 某(とくな・なにがし)清泉 北都(いずみ・ほくと)とともにガスの孔をふさぎ、被害を食い止めた。

「ふう、助かった。さすがは聖夜だな。あなたのおかげで素早い解決ができたよ。その鼻に感謝だぜ」

 神崎 優(かんざき・ゆう)に謝意をしめされた銀狼神代 聖夜(かみしろ・せいや)は、うれしそうに嘶いた。

 しかし、喜び合っている神崎 優(かんざき・ゆう)たちの横で、六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)はなにやらゴソゴソとやっている。

「あなた、そこでなにをやっているんだ? みんなもう先に行っちゃったぜ」

 神崎 優の問いかけに、六鶯 鼎はニヤリと笑った。

「トラップを仕掛け直しているのさ。後から来るであろうクイーンヴァンガードや、遺跡の守護者たちも引っ掛るようにね」

「はぁ?」

「私が遺跡のトラップを解除するのは、自分が通りやすくするため。後から来る連中に邪魔されたくないから妨害工作を施すのさ」

 そう言い放つや、コソコソ奥へと進んでいく六鶯 鼎を尻目に、神崎 優(かんざき・ゆう)水無月 零(みなずき・れい)は、思わず顔を見合わせた。

「うーん、不思議なことをする人だわ。ねえ優、ここに『トラップ注意』の立て札をたてておいたほうがいいかもね」

「そ、そうだね・・・・・・」

※ ※ ※


 生徒たちが遺跡の秘密を血眼になって探しているとき、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は宝さがしに夢中になっていた。

「さあ、お宝さん、出ていらっしゃい。私のトレジャーセンスと捜索があなたを見つけますよ〜。宝を見つけたらピッキングで開けるから」

 桜田門 凱(さくらだもん・がい)も、負けてはいない。

「まあ、せいぜいがんばれよ。よし、俺もローグの意地にかけて宝を見つけ出してやるぜ。女王器なんて大それたものに皆の目が向いているうちに、俺はお宝をゲットだ」

 こうしてふたりは、調査隊の一行とは別の行動を取りはじめた。