リアクション
※ ※ ※ アロースリットの攻撃を受けたことにより、生徒たちは一層の緊張感をもった。 清泉 北都(いずみ・ほくと)は、禁猟区を張り巡らし、周囲に罠や待ち伏せ等がないかを確認する。同時に、超感覚も駆使して、有事の際、咄嗟に反応出来るよう構えていた。 霧島 春美(きりしま・はるみ)も、罠の発見に余念がない。 「歩いていて足音が変わったり、色が違う石があったり、遺跡内に風がふいていたり、水がたまっていたりとか、他と様子が違うところは念入りにチェックよ!」 そういって、あちこち歩きながら、壁を調べたり、床をたたいたりを繰り返していた。 霧島 春美とは逆に、中原 一徒(なかはら・かずと)はむやみに動き回らなかった。 「俺は、常に戦闘に備える。だから、ここで静かに待機しているんだ」 そういいつつも、敵がいないか、遺跡に異常が起きないかと、五感を働かせていた。 しかし、しばらく何事も起こらないとみるや、六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)は別の話題へと生徒たちの気をそらせた。 「この遺跡は、鏖殺寺院関連のものだな。私の考えだと、鏖殺寺院は、女王器に関し何かを調べる、もしくはそれを入手し実験をしていたのではないかと思うよ。おそらく、古シャンバラ王国の戦力を無効化する実験をしていたのではないかな?」 六鶯 鼎の仮説を、霧雨 透乃(きりさめ・とうの)は興味なさげに聞いていた。 「ふーん、なんだか難しくてよくわからないなあ。私、正直いうと鏖殺寺院とか儀式には興味はないから、調査は他の人に任せるよ。でも、戦えそうなものが出てくるまでは、調査している人達の近くにいるから・・・・・・罠とかを見つけるのも、そういう人のほうが得意そうだからね」 パートナーの緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)も、他人任せのところはまったく同じ。 「確かに、遺跡のことは気になりますけど・・・・・・六鶯さんみたいに詳しい人がいるから、調査はお任せしまーす」 六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)は、フンと鼻を鳴らしながら前方を見た。 「どちらにせよ、地下2階以降は保存状態が良い。だから、最奥部に行けば、なにがしか資料があるはず。うまくいけば女王器が見つかるかもしれないな」 すると、だまって歩いていた神代 聖夜(かみしろ・せいや)が、鼻をヒクヒクさせながら鋭い声を発した。 「ム、なにか臭うぞ! これは、眠りガスだ!」 人間よりもはるかに鼻の聞く獣人ゆえに、臭いの感知も早かった。 「プシューッ」 勢いよく眠りガスが噴き出される。 「ここは俺が解除してみせる!」 匿名 某(とくな・なにがし)は、ガスを吸い込まぬよう、鼻と口をふさいで噴出孔へと走っていった。 「ダメだ。解除できない。みんな、この噴出孔を迂回して進むんだ」 一行がガスをよけて進む間も、匿名 某(とくな・なにがし)は清泉 北都(いずみ・ほくと)とともにガスの孔をふさぎ、被害を食い止めた。 「ふう、助かった。さすがは聖夜だな。あなたのおかげで素早い解決ができたよ。その鼻に感謝だぜ」 神崎 優(かんざき・ゆう)に謝意をしめされた銀狼神代 聖夜(かみしろ・せいや)は、うれしそうに嘶いた。 しかし、喜び合っている神崎 優(かんざき・ゆう)たちの横で、六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)はなにやらゴソゴソとやっている。 「あなた、そこでなにをやっているんだ? みんなもう先に行っちゃったぜ」 神崎 優の問いかけに、六鶯 鼎はニヤリと笑った。 「トラップを仕掛け直しているのさ。後から来るであろうクイーンヴァンガードや、遺跡の守護者たちも引っ掛るようにね」 「はぁ?」 「私が遺跡のトラップを解除するのは、自分が通りやすくするため。後から来る連中に邪魔されたくないから妨害工作を施すのさ」 そう言い放つや、コソコソ奥へと進んでいく六鶯 鼎を尻目に、神崎 優(かんざき・ゆう)と水無月 零(みなずき・れい)は、思わず顔を見合わせた。 「うーん、不思議なことをする人だわ。ねえ優、ここに『トラップ注意』の立て札をたてておいたほうがいいかもね」 「そ、そうだね・・・・・・」 ※ ※ ※ 生徒たちが遺跡の秘密を血眼になって探しているとき、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は宝さがしに夢中になっていた。 「さあ、お宝さん、出ていらっしゃい。私のトレジャーセンスと捜索があなたを見つけますよ〜。宝を見つけたらピッキングで開けるから」 桜田門 凱(さくらだもん・がい)も、負けてはいない。 「まあ、せいぜいがんばれよ。よし、俺もローグの意地にかけて宝を見つけ出してやるぜ。女王器なんて大それたものに皆の目が向いているうちに、俺はお宝をゲットだ」 こうしてふたりは、調査隊の一行とは別の行動を取りはじめた。 |
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