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マリエルの5000年前の友達

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マリエルの5000年前の友達

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5000年ぶりの再会

 封印を解くカギ、ブレスキャンセラーを手に入れた生徒たちの一行は、マリエルの友達が待つ地下2階へと戻る道をたどった。

 道中、一ツ橋 森次(ひとつばし・もりつぐ)はポツリと語る。

「マリエル、ちょっと話してもいいかな? 封印をとく時の情報になればいいと思ってさ・・・・・・実は、ボクのパートナーとの馴れ初めなんだけど」

「ええ、教えてくれる?」

「うん、あるとき、祖父から一つの鍵を貰ったんだ。そして数年後、家の関係で何もかもが嫌になったことがあってね。外にある倉庫で一人でぽつんとしていると、その鍵が光ったんだ。そして、鍵は目の前の古時計に反応していた・・・・・・ボクは鍵を開けた。そしたら、光の中にセシル・グランド(せしる・ぐらんど)が浮いていた」

 セシル・グランド(せしる・ぐらんど)は、森次の話を補足する。

「うん、そのときの状況はぼんやりとしか思い出せないのですが・・・・・・私が、以前の主と一緒に敵と戦っている時、私は敵の幻術にはまってしまい、暴走しました。おそらくそのときに封印されたのでしょうね」

「なるほど、セシルも封印されていたのね・・・・・・でも、ファラール、5000年もの間封印されていて、あたしのこと忘れていないかな?」

 メルティナ・伊達(めるてぃな・だて)は、マリエルに希望を持たせようと言葉をかける。

「ボクのパートナーも同じように封印されていたんだ。ファラールとは少し事情が違うけどね・・・・・・ボクははじめ、男の人に玩具にされ、弄ばれる毎日だった。そこから逃げるため方法を探していた時・・・・・・偶然にも屍枕 椿姫(しまくら・つばき)の流出していた思念とリンクがつながった。それで、契約したんだ・・・・・・そういうわけで、何の関係も無かったボクらが絆の糸が繋がったのだから、マリエルも大丈夫だよ。かつての友達なら、絆はすぐに手繰れるはずだから」

「メルティナ、ありがとう」

 元気の出たマリエルを見て、シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)も微笑んだ。

「よし、いよいよ封印を解くんだね。5000年前のことがなにかわかるかもしれないな」

※ ※ ※


 地下2階へと戻る隠し階段を昇り、一行は封印されたファラールの前にやってきた。

 ソラ・ウィンディリア(そら・うぃんでぃりあ)は、遠い目をして、ファラールのレリーフを見ている。

「ファラールちゃん、こんなところに閉じ込められて可哀想に・・・・・・窮屈やったやろ。あたしも、5000年前、鏖殺寺院と戦っていた。ふと気付くと首が無い状態で棒立ちしてる自分の身体を、その足元から見上げてた・・・・・・悔しいのは、悔しいと思う暇も無くそのままあっさり死んでもうた事や。だから、この子はどういう思いをしとったんやろな・・・・・・」

 メアリー・ブラッドソーン(めありー・ぶらっどそーん)も同じように回想する。

「そう、ファラール様は、同じシャンバラの仲間。このままにはしておけませんわ! 5000年前、私は、戦場で何の前触れもなく、いつの間にか死んでいました。お姉様や仲間達がどうなったのか分からぬまま・・・・・・さあ、マリエル、ファラール様の封印を解いて!」

 マリエルはうなずくと、女王器ブレスキャンセラーを、封印されたレリーフに突き立てた。

 すると、青白く冷たい光を放っていたレリーフは、生気ある暖かい色に変わっていった。

 しかし、長い星霜を経たファラールの身体は、容易に壁から離れなかった。

 ここはエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)の出番だ。

 エヴァルトは、工事用ドリルを取り出すと、ファラールの周りの壁をうがち、ようやく彼女を引っ張り出すことができた。

 晴宮 由紀(はるみや・ゆき)は、長い封印で衰弱しているファラールに水分や栄養を与えつつ、応急処置を施した。

 メルティナ・伊達(めるてぃな・だて)が、ファラールに声をかけ続けると、やがて、彼女は意識を取り戻した。

「ん・・・・・・ここは?」

「ファラール! ファラールなのね!?」

「あなたは・・・?」

「マリエルよ、マリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)。あなたの友達よ。会えてうれしい!」

 マリエルは、封印を解かれたばかりのファラールにひしと抱きついた。

 ファラールのほうは・・・・・・5000年ぶりの再会にも、記憶を失っているらしく、抱きつかれてキョトンとしている。

 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は、目頭が少し熱くなった。

「よかったな。ファラールさんは記憶をなくしているようだが、仕方ない。封印されたファラールは、いわば生贄なんだろうよ。彼女には、なにか特別な素質があるのかもしれないな。ともかく、封印がとけてよかった。さあ、残りの人たちも封印を解除するんだ」

 さきほど封印されてしまったのは、以下の4名。

 トゥプシマティ・オムニシエンス(とぅぷしまてぃ・おむにしえんす)
 ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)
 ヤード・スコットランド(やーど・すこっとらんど)
 水無月 零(みなずき・れい)

 さっそく、彼女たちのパートナーはかわるがわるブレスキャンセラーを突き立て、救出した。

 4人を封印から解くと、不思議なことに、ブレスキャンセラーは壊れてしまった。

 女王器は、呪いを打ち消すことで、その役目を終えたのだった。

「よかった! 無事で」

 天枷 るしあ(あまかせ・るしあ)はトゥプシマティに抱きつく。

 神崎 優(かんざき・ゆう)も水無月 零に駆け寄った。

「零! 大丈夫か? 心配したぞ」

「ごめんね、優。でも心配しないで。私はどこにも行かないよ。だって優は私の呼び掛けに答えてくれた人だから」

 優は思わず涙ぐむ。

 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)も、ロートラウトとの再会を心から喜んだ。

 だが、桜田門 凱(さくらだもん・がい)は、自ら助け出したヤード・スコットランドをいきなり殴り始めた。

「お前、逃走した上、こんな手間かけさせやがって!」

「やめろ、凱」

 天枷 るしあ(あまかせ・るしあ)は凱を羽交い絞めにする。

「ここから抜け出したい・・・・・・」

 ヤードはそうつぶやくと、一目散に出口へと駆け出してしまった。

「やれやれ、思ったとおりだ」

 八雲 緑(やくも・るえ)はふてくされたように吐き捨てる。

 空気を戻すべく、緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は口を開いた。

「とにかく、ファラールが5000年ぶりに封印から解かれたんだから、まずはファラールの話を聞きましょう。私は封印された人の気持ちというのはよくわからないけど、ファラールの話を聞いてみたいわ」

 そこで、ファラールは、自分の知りうる限り、この遺跡について語り始めた。

「みんな、助けてくれてありがとう。少し思い出してきたよ。この遺跡は、鏖殺寺院側の女王器を作る施設なんです」

 これを聞いて清泉 北都(いずみ・ほくと)が呼応した。

「やっぱりな。ファラールを使ってなにか良からぬ儀式を企んでいたに違いないと思っていたよ・・・・・・で、その続きは?」

「うん。中にはダークヴァルキリーへ献上するための女王器も作ってました。その完成のためにシャンバラ人の『血』を必要としていたんです」

 相田 なぶら(あいだ・なぶら)は目を丸くした。

「なるほどね。鏖殺寺院は、守護天使の力を礎にして、何か大切なものを守っているんじゃないかと思っていたけど、そういうことだったのか・・・・・・封印が解けたことで、謎も解けたよ。で、キミが捕らえられてたのも、やはり血が必要とされていたからなんだね?」

 ファラールは黙ってうなずいた。