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リアクション
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス!」
その階に立ち塞がっていたのは、ドクター・ハデス(どくたー・はです)であった。
隣にいるのは、高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)だ。
「ククク、我らの盟友である『理想追求機関ネバーランド』によって作られたこの太陽の塔の防衛、我らオリュンポスも協力しよう!」
「出たわ、ついに出たわ! ほら見たでしょ、悪の科学者よ! あたし知ってるわ、変な薬作って爆発してアフロになるのよね!」
「さ、さあ……アフロになるかは存じませんわ」
嬉しそうなシェヘラザードに袖を掴まれてガクガクと揺らされているのは、白鳥 麗(しらとり・れい)だ。
そんなシェヘラザードの反応に気をよくしたか、ハデスの演説もより一層熱を増す。
「フハハハ! 褐色肌の娘よ、威勢が良いではないか! だが、威勢だけで我らを倒せるかな!?」
「分かってないわね! 悪を名乗った時点で、お前の敗北は決定していたのよ! これ即ち、正義の法則! お前をボコって呪って凱旋してやるわ!」
高笑いを交し合うハデスとシェヘラザードを交互に眺めて、麗は溜息をつく。
「まあ、わたくしも手を貸して一刻も早く問題の解決を行うと決めましたしね。行きますわよ、アグラヴェイン」
麗に声をかけられて、サー アグラヴェイン(さー・あぐらべいん)は軽く一礼する。
「さて……このわたくし、白鳥麗。やると決めたからには真っ向から正面突破が信条ですけれど。始めてよろしいのかしら、悪の科学者さん?」
「フハハハ! 語るまでもない! 制御装置を破壊したくば、我らを倒してから行くのだな! さあ行け、改造人間サクヤよ!」
「ちょっと、兄さん! だから改造人間と呼ぶのはやめてくださいって、何度も言ってるじゃないですか! あと、なんで悪い人の味方をするんですかっ!」
言いながらも咲耶は、最高にノっているハデスを止める事が出来ないと悟り溜息をつく。
「はぁ……こうなると、もうどうしようもないですね……仕方ありません、制御装置の防衛くらいなら、正当防衛ですよね……」
「ねえねえ、呪っていいのよね。あれ、全力で呪っていいのかしら!」
「いいんじゃないかなあ。どうでも」
「やる気出しなさいよアーシア! 呪うわよ!」
アーシアを持ち上げてガクガク揺さぶるシェヘラザードに、黙って立っていたアグラヴェインが軽く咳払いをする。
「お嬢様、シェヘラザード様。あくまで優雅に、おしとやかに。百合園の生徒として恥ずかしくないよう、宜しくお願い致します」
アグラヴェインはそう言うと、シェヘラザードへと視線を向ける。
「特にシェヘラザード様。白鳥家ご息女のご学友であると同時に、格調高き百合園の生徒である事を常に気にかけ……」
「正義は家柄で行なうものじゃないわ! 己の信念だけが正義の証よ!」
アグラヴェインの言葉をスパンと切って捨てると、シェヘラザードは麗の肩を拳で軽く叩く。
「やるわよ、麗。あたし達の正義をぶつけてやるのよ」
「仕方ありませんわね。片付けて、さっさと百合園に帰ると致しましょう」
言うと同時に、シェヘラザードと麗は構えをとる。
「ハハハ、来るがいい! そして己の無力を思い知れ!」
ハデスの言葉と同時に、光のゴーレム達が動き出す。
その指には、少女リリアが嵌めているものと同じ、太陽をイメージしたようなデザインの指輪が嵌っている。
どうやら、これが太陽の塔で活動する為の資格の品であるようだが……どうやら、村で何となくオルヒトに貰ったもののようだ。
勿論、そんな事はこの場の誰も知る由もない。
「芸術は、爆発だー!」
と、そこに。魔力を込めた特殊ペンキを持ったロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)とアリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)が現れる。
「表現規制、ハンターイ!」
言いながら、ロレンツォは手近な光のゴーレムに黒ペンキをかける。
「ぬおっ、黒ベタだと!?」
「『夜』という存在が無くなったら、セレナーデとかノクターンというジャンルに意味がなくなるじゃないか! それは芸術的にも許せない!」
「ロマンスだって、昼間の明るい場所「だけ」じゃなかなか発生しにくいわよ?」
ロレンツォに続いて黒ペンキをぶちまけながら、アリアンナも笑う。
剣の花嫁的には、光あふれる世界って、ある意味理想だけど、ロレンツォみたいな人間にとっては、闇…というか、夜は、休息の為に必要な存在でもあるものね、と。そんな事を考えながら。
「どいてどいて!」
辺りに黒ペンキをかける二人をそのままに、シェヘラザードは仕切り直しを始める。
「見なさい! これも正義の力よ!」
「ぬう、小癪な!」
実に楽しそうなシェヘラザードとハデスであるが、しかし。
結果から言えば、ハデスがボコられて呪われて。
この階の制御装置は、しっかりと破壊されたのである。
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