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リアクション
春美の推理により導かれた太陽の塔の基本構造は、次の階からの探索速度を飛躍的に上げる結果となった。
しかし、それだけではない。
別の情報源を得て、それを利用している者達もいた。
「制御装置の中でも中枢的な役割を担っている重要部品はどれかとか、そういうのくらい分かるでしょ?」
「わ、わかんねえよ! マジだって!」
「本当アルか? 役に立たないフリしてるんだったら、大事な所を役に立たなくするアルよ?」
何やら物騒な会話をしているのは、桜月 舞香(さくらづき・まいか)と奏 美凜(そう・めいりん)だ。
塔の中でしぶとく生き残っていた盗賊団のリーダーを捕まえて無理矢理同行させているようだが……どうやら、男の手に余る構造のようだった。
もっとも、この塔の構造を理解できるようなレベルであれば盗賊団などに身を落としてはいないのかもしれないが……。
「だ、大体お前等なんなんだ!」
「あたし達? 盗賊団のリーダーすら泣いて許しを乞う美少女軍団、白百合団! ……ってね」
「中々上手いアルね。ちなみにアンスコだから、パンツじゃないから恥ずかしくないアル」
舞香と美凜は、言いながらコロコロと笑う。
「百合園生のサポートは白百合団の大事なお仕事。噂のプリンセスが怪我でもしたらみんなも心配するしね」
あたし達も大変なのよ? と言う舞香に、盗賊団のリーダーは訳が分からない、といった顔をする。
実際、わけが分からないのだろう。
百合園女学院のプリンセス・カルテットと呼ばれる四人組。
その中の一人であり呪術姫と呼ばれるシェヘラザードが此処に来ている事など知らないし、知っていても気にすらしないだろう。
彼らは魔法道具専門の盗賊団であり、今回だって何処かのバカが身の丈に合わない魔法道具で妙な実験をしてるのだろう、くらいにしか思ってなかったのだ。
入ってみれば超高度な魔法の塔。手ぶらで帰れるかと気張ってみたもののメンバーはバラバラ、あげくの果てには股間にハイキックをしてくる恐ろしい女に捕まってしまう。
運が尽きた、というのが盗賊団のリーダーの今の心境だ。
「まあ、いいからさ。この階の装置ブッ壊しちまおうぜ。とりあえず全部壊せば止まるだろうし、この先に皆も進みやすくなるはずさ」
舞香にそう言ったのは、この階で二人に出会った緋王 輝夜(ひおう・かぐや)だ。
ネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)と共に行動している輝夜は、舞香達の目から見てもかなりの実力者だ。
「お仕事……ですしね。手間は……省くにかぎります」
「そうアルねー。もう壊しちゃうアルか?」
光のゴーレムを一体消滅させたネームレスに、美凛も同意する。
ここでこれ以上盗賊団の親玉を締め上げても、悲鳴以外は出てこないだろう。
「お、俺を壊したって何もでねえぞ!?」
「いや、あたし等をなんだと思ってんだよ……」
一体どんな目に合わせたんだ、と目で語る輝夜から、舞香はサッと目を逸らす。
やりすぎてなんかいない、たぶん。
「それじゃあ、早速壊すとするか!」
「そうね。チャッチャといきましょうか」
スタイルこそ違うものの、互いに徒手空拳を武器とする輝夜と舞香。
二人の攻撃の前に、この階の制御装置も沈黙し。
「大分眩しくなくなったわ! この階の装置も壊れたのね!」
そんな声が近づいてくる。
「あら、噂のプリンセスの登場ね」
「依頼主のご登場か」
舞香と輝夜、そして美凜とネームレスは、笑顔でシェヘラザード達を迎える。
「なあ、おい。もういいだろ? 俺はもう帰ってもよぉ」
「逃げたら……分かってるわよね?」
笑顔を崩さないまま、盗賊団のリーダーを脅す舞香。
彼の苦難は、もう少し続くようだ。
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