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リアクション
「中々厄介な相手ですね」
御凪 真人(みなぎ・まこと)は光のゴーレムの一撃を受け、後ろに後ずさる。
「核の様なもの無しで、現在の形状をしていると言う事は……他にこの姿を維持しておくのに必要なものがあるはずですね」
言いながら、真人は光のゴーレムの姿をじっと見つめる。
倒すと、集まっていた光が拡散するように消失するゴーレム。
土のゴーレムが土で、アイアンゴーレムが鉄で出来ているように、光のゴーレムが光で作られているのは確認した。
しかし、光のような不定形のものを留める為の核が見当たらない。
それは、急所が存在しないという事を意味しているが……そんな不条理なものが、何の制約も無しに存在できているわけがない。
「となると……まあ、この塔でしょうね。これも光のゴーレムと同じ条件で出来ていると考えるべきでしょう」
戦闘の最中でありながら、真人は冷静な思考で推論を組み立てていく。
「物理攻撃が効かないとなると面倒だけど……効くみたいだな。にいちゃん、フォローするぜ!」
トーマ・サイオン(とーま・さいおん)が発砲し、光のゴーレムに銃撃を加える。
その攻撃に反応し、光のゴーレムはトーマへとターゲットを変更。
当初の目論見通りに、真人が光のゴーレムを観察する為の時間を稼ぐことに成功する。
とはいえ、光のゴーレムも光術という攻撃手段を持っている。
距離を稼いだから安心というわけでは決して無いが……。
「この塔なら少々の爆発でも壊れないよな……」
だったら安全を見極めて機晶爆弾の爆発で吹き飛ばすぜ、とトーマは真人へと合図を送る。
「魔力を吸収して半永久的に動く儀式装置に理想追及機関ネバーランドか……」
真人やトーマと合流していた涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)は、そう呟く。
「今回の件はそれなりに力を持った魔術結社が本気を出すと厄介な事この上ない話の典型みたいな事件ですね」
「確かにな。やってる事はくだらないのに、下手なダンジョンより厄介なもの作ってやがるし」
涼介とトーマは言いながらも、一体の光のゴーレムを葬り去る。
倒しても倒しても出てくる光のゴーレムだが、制御装置さえ壊してしまえば出現率が下がる事は分かっている。
「我が真名において、汝に命じる。出でよ、召喚獣:不滅兵団!」
涼介の呼び出した不滅兵団が更に一体の光のゴーレムを葬り去り、しかしそれでも次から次へと光のゴーレムが現れる。
「入口から放り出せば瓦解するでしょうが……闇術や、闇黒属性の武器で攻撃するのがセオリーですね」
その間に、真人は光のゴーレムについての分析を終える。
やはり、この太陽の塔の付属品と考えるのが一番正しい。
恐らくは、塔内部に集まった魔力の余剰部分がゴーレムとして排出されているのだろう。
制御装置を壊す事で光のゴーレムの出現率が下がる理由は、その辺りにあるのだ。
核が無いのも、弱点を作らないというよりは、太陽の塔の外で動かす理由が無いからなのだろう。
暴走対策としては、この上ない手段とも言える。
「ですが……厄介な事に変わりはありませんね」
そう、相手は太陽の塔の中でしか存在できない。
その代わり、光に満ちた太陽の塔の中であれば強力にして無尽蔵。
最低限の相手だけ倒して進むか、トーマの提案するように一気に吹き飛ばして走りぬけるのが一番正しい手段であるように真人には思える。
「消耗戦になれば、こちらが不利になるだけです。二人とも、ここを突破して中央へ向かいましょう!」
「オーケイ!」
「それが無難ですね」
三人は、中央へと向かって走り出す。
「敵が光を得意とするならば、逆に弱点は闇になるよね……」
中央では、三人の到着と同時に到着した清泉 北都(いずみ・ほくと)達による激しい戦闘が行われていた。
近づく光のゴーレムに北都が闇の輝石を使い、クナイ・アヤシ(くない・あやし)のシーリングランスが光のゴーレムへと叩き込まれる。
その狙いは当たっており、一体の光のゴーレムが元の光となって消え去る。
しかし、すぐに次の光のゴーレムが北都達を狙って襲い掛かってくる。
制御装置を壊さなければ、消耗戦になってしまうのは明らかだ。
だからこそ、クナイは叫ぶ。
「抑えている今のうちに……先に行ってください!」
クナイの声に、三野 千春(みの・ちはる)と東 朱鷺(あずま・とき)は装置へと向かい走り出す。
放たれる光弾にも構わず、千春と朱鷺は装置へと接近していく。
「これで……」
「この階の装置も……破壊だ!」
千春と朱鷺の攻撃が同時に決まり、制御装置は元の光へと変換されて消えていく。
「あ、この階の装置も壊れて……あそこに居るのは千春ね! 他は知らないけどよくやったわ。褒めてあげる!」
そこにやってきたのはシェヘラザードやアーシア達。
プリンセスカルテット。
呪術姫と呼ばれるシェヘラザードを見て、千春は微笑む。
自分の憧れていたものを思い出しながら、自分の大切な人を思い浮かべながら。
「あ、危な……!」
そのシェヘラザードの前に飛び出したゴーレムに北都達が反応するより、一瞬早く。
「とあー!」
叫び声と共に、バシリス・ガノレーダ(ばしりす・がのれーだ)が光のゴーレムに一撃を加える。
「……一気に決めるネ! チェインスマイトで連続キック! さらに続けてトドメの轟雷閃キック!」
掛け声と共に、次から次へと華麗なバシリスの攻撃が光のゴーレムへと叩き込まれていく。
「これが、バシリスの舞……さぁ、とくとご堪能あれヨ♪ フフフ、フフフフフ♪」
光へと戻って拡散する光のゴーレムを確認して、バシリスは決めポーズをとる。
「この調子なら、最上階まではそう時間はかからないわね」
「ええ、そうですね」
満足気なシェヘラザードに、次百 姫星(つぐもも・きらら)も頷く。
「そもそも夜は、「おやすみ」と「おはよう」と「また明日」を言うためにあるんです! 明日が無くなったら、とても哀しいですよ……」
「そうね。だから夜を消すなんてするヤツは悪よ。私はそう決めたわ!」
シェヘラザードに、姫星は力強く頷く。
「と言う訳で、この塔ぶっ壊しましょう! シェヘラザードさん、アーシアさん、力を合わせて頑張りましょう!」
「勿論よ、お前にも力を充分に振るってもらうわよ、姫星!」
「青春だねー。まあ、怪我しないようによろしくね」
ますます乗り気のシェヘラザードと姫星は、ガッシと拳を付き合わせる。
「勿論お前達もよ。さあ、次の階へ急ぐわよ! ノロノロしてるヤツは呪うわ!」
北都達にも声をかけ、シェヘラザードは階段へ向かって走り出す。
「ていうか、あたしより遅いヤツは呪うわ!」
「あ、ちょ……!」
「呪術姫の本領発揮、ですね。ふふ」
北都が、真人が、涼介が走り出す。
ここから、更に上へ。
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