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リアクション
第一章 太陽の塔前にて
「また一人出てきたのじゃ!」
「おっけー!」
ホエールアヴァターラ・クラフトでふわふわと浮いているミア・マハ(みあ・まは)の指示で、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)がしびれ粉を撒く。
「ぐあっ……くそう、動きが……っ」
「今よ! とっ捕まえちゃいなさい!」
褐色の少女の言葉に、地上に降りてきたミアが男に恐ろしい幻覚を見せる。
完全に動きの止まった男をレキが縄で縛り上げる。
「これに懲りたら盗賊はやめるんじゃな」
「殺すつもりなら、もっと簡単に出来ちゃうんだよ。その意味、ちゃんと考えてね」
更正しろ、と。ミアとレキはそう言っているのだ。
そしてその事実は、取り押さえられた男自身がよく分かっていた。
一言も発する元気すら無くしてうなだれる男達を見て、褐色の少女は満足そうに頷いている。
「素晴らしいわね。同じ学園にこれだけの使い手がいるなんて、鼻が高いわ」
「シェヘラザードってば……」
「調子がいいのじゃ」
少し呆れたような口調のミアとレキには気付かずに、シェヘラザードと呼ばれた褐色の少女は笑う。
そう、この少女の名前はシェヘラザード・ラクシー。
百合園女学院の生徒である彼女はプリンセスカルテットと呼ばれる四人組の一人にして、シボラからやってきた、呪術を得意とするネクロマンサーの少女。
人呼んで、呪術姫シェヘラザードであった。
並外れた正義感故か、こんなところまで出張ってきたようである。
「まあ、確かにわらわ達はまだ良い方じゃ。中には「悪い奴だから」と平気で殺しをする者も居るからの」
「なるべく殺しは避けたいからね。ここで全員捕まえちゃえればいいんだけど」
「その心意気が素晴らしいのよ。正義の味方はそうであるべきだわ」
「だけどやっぱり盗賊も数が多いね……何とかなるけど面倒かも」
そう言って、日向 茜(ひなた・あかね)は溜息をつく。
茜は傭兵としてやってきた雇われの身ではあるが、中々面倒な仕事だった。
殺しは厳禁、捕らえるのみ。
まるで正義の味方を体現するかのような命令ではあったが、命令である以上報酬分の働きをするつもりはあった。
「HAHAHAHAHAHA!! 私はアレックス・ヘヴィガード! 今から殺さずに捕まえるから覚悟するといい!」
「ちょっと……自重して」
「いや、あれはあれでいいじゃない。こっちが正義側だって分かっていい感じ。茜もアレックスを少し見習うべきだと思うわ」
「そうかしら……」
盗賊に大声で名乗りをあげるアレックス・ヘヴィガード(あれっくす・へう゛ぃがーど)に、辟易する茜ではあったが……雇い主がそう言うのであれば問題はないのだろう。
とはいえ、やはりアレックスは自重して欲しいなあ……と思う茜ではあるのだが。
「貴方達もそう思うでしょう?」
シェヘラザードが話を振ったのは、丁度一人の盗賊を縛り倒した七瀬 灯(ななせ・あかり)とラトス・アトランティス(らとす・あとらんてぃす)だ。
「そうですね。村に行かれても困りますし……ここで全員捕まえてしまうのもいいでしょうね」
「はぁ……皆で無茶して……無茶せんように見張っておきたいのに」
ノッている灯と比べると、ラトスは多少テンションが低い。
運命を共にしている以上、ラトスのテンションの低さは理解できるところではあるのだが。
ちなみに、灯もやはり百合園女学院の生徒であったりする。
ミアとレキも百合園女学院の生徒である事を考えれば、チーム百合女と呼んでも差支えが無いくらいだ。
「頼りになる学友を持って、あたしは嬉しいわ」
「私はイルミンスールの先生なんだけどねぇ」
そんなチーム百合の中で、居心地悪そうにしているのはイルミンスールの教師のアーシア・レイフェルだ。
アーシアにとって、シェヘラザードが有名人というのは大誤算だった。
姫だか米だか知らないが、そんな大仰な愛称で呼ばれているような百合園女学院の有名人だとは想像もしていなかったのだ。
「正義に学校なんか関係ないわ。どうしても気になるんなら、アーシアも百合園に移籍すればいいのよ」
「冗談が上手いわね」
ふう、と溜息をつくアーシア。
その視線の先では、アレックスと灯が抜群のコンビネーションで盗賊を一人捕まえていた。
塔から逃げ出してくるような雑魚盗賊は、もう少ししたら打ち止めだろう。
そうしたら、いよいよ突入のチャンスがやってくるのだ。
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