空京

校長室

【選択の絆】夏休みの絆!

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【選択の絆】夏休みの絆!

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『篭城と、攻城と』
 行軍とは別の場所。城、陣などが配置されている場所があった。
 ここでは本格的な攻城戦が行われていた。
 攻城側の本陣には黒乃 音子(くろの・ねこ)黒乃 虎子(くろの・とらこ)黒羊郷 ベルセヴェランテ(こくようきょうの・べるせべらんて)が待機している。
「偵察はどうなってるかなー」
 音子がそわそわしながら偵察部隊からの連絡をいまかいまかと待っている。

「……こりゃまた立派なものでござるな」
 音子のパートナーであるフランソワ・ド・グラス(ふらんそわ・どぐらす)が湖畔に建築された城を見上げる。
 訓練のために、鋭峰は城すらも手配してしたようだ。それはもう見事な城を。
「これは、落しがいがあるでござる……さて、潜入班からの連絡はまだでござろうか」
 城の後方で待機するフランソワ。彼女は潜入班からの連絡を待っていた。

「砲台の準備は整っているでありますか?」
「ああ、とりあえずぶっぱなす準備は万端だぜ!」
 篭城側ではジャンヌ・ド・ヴァロア(じゃんぬ・どばろあ)指揮下の元、パプディスト・クレベール(ぱぷでぃすと・くれべーる)プーマ1号・クラウスマッファイ(ぷーまいちごう・くらうすまっふぁい)が砲撃の準備をしていた。
「会津、奇襲の方はどうするでありますか?」
 ジャンヌに尋ねられた会津 つるがにゃん(あいづ・つるがにゃん)が答える。
「敵は湖水から上陸して攻めて来るはず。正面にはあまり兵を配置しないで砲台で食い止めつつ、左右から一気に崩す、って感じかな?」
「なるほど、無難でありますな。そちらの手配は任せるでありますよ」
「りょーかい!」
 着々と相手を迎え撃つ準備を整える篭城側のジャンヌ。
 それを見ていた攻城側からの潜入者甲 賀四郎(かぶと・かしろう)
「……正面から行けば手痛い傷を受けるでござるな。早急に連絡を取らねば」
 だが、下手に動けば潜入者だと感づかれる可能性がある。
(事を急くことはない。時間はあるでござるからな)
 決して焦りはしない賀四郎。その判断が功をなす。
「んー、正面の人手がもうちょい欲しいかも。誰か言ってくれる人ー!」
「! ならば我が行きましょう」
「ほんと? 助かるよー、それじゃよろしく!」
 これで正面に行くまでの間は自由に行動ができる。
 賀四郎はすぐに正面には向かわず、一旦城の後方へ足を運び見聞きした情報を伝えに行く。

「……む、あの光は。っと、あれは?」
 城から放たれた小さな光、同時に紙切れが一枚落ちてくる。それを手に取ったフランソワは中を見る。
「……なるほど。すぐに引き返すでござる」
 賀四郎からの貴重な情報を携えて、今度はフランソワが行動を開始した。

「はいはーい、訓練もいいですけど体調管理はしっかりしてくださいね」
「まあ、ぶっ倒れたいというのであれば無理強いしませんが」
 炎天下、倒れた兵たちが大事にならないようにベアトリス・ド・クレルモン(べあとりす・どくれるもん)ジル・ド・レイ(じる・どれい)が訓練兵を見守る。
 そのすぐ近くではフラン・ロレーヌ(ふらん・ろれーぬ)が目を凝らしていた。
「……ん! 偵察班がきた! よーし、本陣へ引き返す!」
 帰ってきたフランソワが小船で近づいてきて、そのまま自分の船へ乗り込んだのを見てすぐさま本陣へとひきかえすフラン。
「どう? 首尾は上々?」
「はい。後は本陣にこれを伝えて、全軍で討って出るだけでござる」
「よしきた! さっさと伝えて城攻略といきますか!」

「……水軍がきたか。皆、出陣の時だ! 我々は回り込み、城の背後を急襲する!」
 軍師甲賀 三郎(こうが・さぶろう)の一喝が訓練兵たちの士気を高揚させる。
「そのまま正面で戦う部隊と合流し一気に開城へと持ち込み、城を落とす! そっちの準備はいいか?」
「もちろんだよ! ねーぐんそー!」
「―――」
 返事をした音子の肩には、夏の季節によくみかけるカサカサしてテカテカして全世界の人々に忌み嫌われている生物、通称『G』を駆逐する最強のハンター、アシダカ・軍曹(あしだか・ぐんそう)が乗っている。
 外見は少しあれだが、非常に大人しいため可愛がられているようだ。が、虫が嫌いな人にとっては地獄かもしれない。
「正面はわたくしたちにお任せを」
「決死隊のボクたちが門を攻略しちゃうのです〜!」
 正面からの攻撃を担当する虎子とベルセヴェランテの気合も十分だ。
 そこへ、フランソワが駆けてくる。すぐさま潜入・偵察班が手に入れた情報を共有する。
「砲台かーちょっと厄介そうだねー」
 音子がうーんと呻くが、三郎はまったく動ぜず喋る。
「城後方からの攻撃もあればそちらにも対応せざるをえまい。その間に」
「わたくしたちが門を攻略し、なだれこめばいい、でしょうか」
 言葉を遮り的確に答えを述べた虎子に対して、三郎は満足そうに頷いた。
「よーし、作戦に変更はなし! このまま行こうー!」
「上陸までは任せときなって!」
 フラン率いる水軍部隊先導の元、音子たちは二手に分かれて行動を開始しようとしていた。
(これは、まずいかもですね)
 成り行きを見守っていた天璋院 篤子(てんしょういん・あつこ)。彼女もまた、賀四郎と同じく相手側に潜入を試みていた。
 篭城側の戦略が漏れていることを一刻も早く伝えなくてはならない。
(でも今動いたら絶対にバレる……好機を窺わないと)
 しかし、好機は訪れぬまま攻城側は進軍してしまう。
 なんとか水軍での移動中に【キャットシー】に伝書を持たせて飛ばせることには成功したものの、果たして間に合うだろうか。

「ん、これは……?」
 篭城の準備をしていたジャンヌのもとに篤子のキャットシーがたどり着く。
 伝書の中身をみたジャンヌは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「情報が、漏れていたでありますか……」
「おい! お相手さんがいらっしゃったぜ!」
「砲台の準備はばっちりでありますよ! ジャンヌ殿!」
 伝書から間もないまま、相手が攻め込んできた。これに対してジャンヌも迅速に対応する。
「待機中の会津に、城後方に近い方の奇襲部隊を後方へと向かわせると伝令を!」
「わ、わかりました!」
 伝令が走る。それを見る間もなくジャンヌが指示を飛ばす。
「パプディストとプーマ1号は変わらず正面からくる相手を迎撃!」
「ほいさ!」
「了解であります!」
「……できるだけのことはしたでありますが、どうでるか」

 ジャンヌの采配は決して間違いではなかった。
「ほう、こちら側の情報も漏れていたか」
 後方から急襲しにきた三郎の軍を奇襲部隊でもって迎撃、後退させることに成功。
 すぐさま部隊を反転させ正面へと急がせた。
 しかし、もともと左右からの攻撃で一気に瓦解させる策を練っていたため、正面の防衛はままならない。
「さあ! 門をあけなって!」
「開けないと無理やり入っちゃいますよ〜!」
 更に虎子、ベルセヴェランテ率いる部隊の奮戦、賀四郎の裏切りもあり、門を抑え切ることができず城への侵入を許してしまう。
 この情勢をみた篤子が単身で音子の首を狙うも多勢に無勢、為す術なく捕らえられる。
 場外での奇襲がメインだったため城内の守りは薄く、進行を止めることはできず、遂に攻城部隊がジャンヌの眼前へとたどり着く。
「まだやれるぜ!」
「ジャンヌ殿は絶対に守るでありますよ!」
 砲台で目覚しい活躍をした二人に守られるジャンヌ。
 しかし、ジャンヌもわかっていた。
「ここまで来られ、この戦力差ではままならないでありますよ。……私たちの負けであります」
 そう言って、静かに負けを認めた。

「やったー! ボクたちの勝利だー!」
「先に情報が漏れたのが痛手でありましたな」
 攻城側の勝利に終わったあと、全部隊が一堂に介す。
「怪我をしている人はこちらへどうぞ」
「お疲れですな」
「まさかナースがいないとは……とほほであります……」
 ベアトリス、ジル、それに小松 帯刀(こまつ・たてわき)が怪我をした訓練兵たちを救護している。
「こっちに日陰があるから、そこで休憩するでいいですな」
 ベアトリスが訓練兵たちを日陰へと移動させると、すかさずベアトリスが塩分・水分補給をうながす。
「塩飴に水です」
「ナースさんはいないですが、仕事はするであります」
 帯刀もまた、肩を落としながらも自身の仕事をしっかりとこなしていた。
 これにて無事に紅白対抗の攻城戦は音子率いる攻城側の勝利で幕を下ろした。