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リアクション
『お好きな地獄へおいでませ? 2』
「では、始め!」
雷のように響く声のもと、訓練兵たちがイコンの整備を始めた。
ここでは、修理中であるイコンを実際に修理させるというイコン整備・修理の訓練が行われていた。
訓練を取り仕切るのはギュンター・ビュッヘル(ぎゅんたー・びゅっへる)、サミュエル・ユンク(さみゅえる・ゆんく)の二名。
「サミュエル」
「ああ、抜き取らせてもらったよ。他のパーツもぶちこんどいた」
「上出来だ」
しかし、ただ直すだけではぬるい。そう判断したギュンターは故障している箇所以外の部分からパーツを抜き取り、別パーツを組み込んでおくようにサミュエルに指示をしていた。
これに気付けるかどうか、という内容を盛り込んでいたのだ。
「えーっと……これがこっちで」
「ここなんかおかしいのだー」
「え? ……ほんとだ。これ適切なパーツじゃない。ありがとう! ポムクルさん」
「まかせろなのだー」
訓練兵とポムクルさんが協力して修理と整備をこなしていく。その甲斐あって、全てのイコンの修理が完了。取りかえていたパーツにも全員気付くことができた。
「……ふむ。突き詰めるところは多いが、とりあえずは及第点か」
「罰ゲームなしとはなぁ。ちと残念だぜ」
その後、ニーベルンゲンを使い訓練兵たちをしごいたのは言うまでもない。
ひろーい浜辺の一角に巨大な戦車型のイコン迦具土(強行型)の姿。
このイコンに乗り込むのは柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)と高天原 那美(たかまがはら・なみ)。プラスでポムクルさんたちがわらわらといた。
「さて、照準補正を切ってと」
「そこまでするで御座るか?」
「オートロックで撃たせても意味ない。自分で距離・タイミング測ってなんぼだろ」
恭也はポムクルさんにイコンの射撃をさせようとしていた。
標的は湖上にある移動式の的。これをイコンに備え付けられている【オリュンポスキャノン】と【レーザーマシンガン】でハチの巣にする、という訓練だ。
「数発外したら罰ゲームだから気を引き締めていけよ」
「きいてないのだー」
「まあまあ……。砲弾の供給は拙者がやるでござるから、ポムクルさんはどんどん発射するで御座る!」
二人に促され、ポムクルさんが砲撃を開始。最初にやったポムクルさんたちは外したものの、それを見ていた後続はコツを掴み、次々と的を撃ち抜いていく。
「その調子その調子」
「と、罰ゲーム対象のポムクルさんはこちらへ。ちゃちゃっと準備をして……それでは、いざ参られい!」
ドーン!
「とばされるのだー」
「ふらいはいなのだー」
パラシュートを装着したポムクルさん特殊砲弾に詰め込みあろうことか射出。
砲弾は軌道の途中で分解しパラシュートを開いたポムクルさんはひらひらと湖へ着水。
「仲間のポムクルさんには当てるなよ」
「……少し楽しそうなのは気のせいで御座ろうか?」
ポムクルさん的には罰ゲームを受ける・受けないでも楽しいようだ。
「射撃訓練、基本中の基本だが故に大切なものであろう」
「私には関係ない気がしますがね」
射撃訓練に参加をしていたのはエドワード・リード(えどわーど・りーど)。
その横では射撃を行わないエドワードのパートナー、エドウィン・サージェント(えどうぃん・さーじぇんと)が佇んでいた。
「参謀科だからと言って射撃ができぬのは言い訳にならないが」
「それよりも有意義なことがあるのですよ。ねえ、ポムクルさん方」
「エドウィンのはなしはおもしろいのだー」
エドウィンによる薬学、戦術などの話を興味深そうに聞くポムクルさんたち。
「まあ、それならば問題は……ん?」
「それはどうやってつかうのだー」
「銃か? そのサイズで銃を使うのは……いや、教えるのは無駄にはなるまい」
確かにポムクルさんたちでは銃器を上手く扱うことは難しいかもしれない。
しかし、銃の知識があればそれに対応することができる可能性が広がる。
そう考えたエドワードは、同じ訓練を受ける仲間として銃の扱い方をポムクルさんに教え、共に訓練を行うのだった。
「さあ、ポムクルさんたちよ! 先ほど配った戦闘員アーマーを着込んだか!」
浜辺によく響く、どこでもよく響く、時々むせ返る声を出すのはドクター・ハデス(どくたー・はです)(水着+白衣姿)。
「これが僕の考えたポムクルさんたち用の特訓メニュー……それと皆さん、その全身黒タイツ戦闘員アーマーがとてもお似合いですよ」
オリュンポス参謀天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)(水着姿)がハデスの言葉に続く。
「くろくてあついのだー」
「やぶきさりたいのだー」
「それを破くなんてとんでもない! 俺が三日三晩寝ずに作った無敵のアーマーなのだぞ? 光栄に思え! フハハハハ!」
不平を漏らすポムクルさんたち一笑するハデス。その目には隈ができていた。
「ぐっ!? なんだこの得体の知れない疲労感は……! それにこの暑さ、水着だというのに尋常では、な、い……」
バタンッ……
「ねっちゅうしょうなのだー」
「この暑い中白衣を着ているからです。ですが、騒いではいけません。戦闘員たるもの、いついかなるときも焦ってはいけないのです」
「み、みず……」
虫の息のハデスを見かねた十六凪はポムクルさんたちに自主訓練を指示して、救護係りのもとへと歩いていく。