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リアクション
【1】激突
アイシャ女王、アルティメットクイーンの両名を護衛する本隊も戦場の渦中を移動し始める。
前線部隊が奮戦するも網の目を潜り抜けるように魔物たちは動き回る。
それを迎撃するのはアイシャ及びクイーンの護衛につく者たちだ。
「翔子大尉から、必ず守り抜いてくれと言われている。見事完遂させてみせよう」
クイーン護衛の指揮をとるのはクレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)。
「教導団兵士、傭兵団諸君。我等の目的は目の前の敵を蹴散らし、アルティメットクイーンを守ることだ。その力、十分に発揮してもらいたい」
総勢五十名以上の兵士と傭兵たちが気合を入れて叫ぶ。
「では、任務開始だ!」
最後にクレーメックが檄を飛ばすと、兵士と傭兵たちがオオー!と掛け声を発しながら押し寄せてくる魔物に応戦する。
「そちらはどうだ?」
「……」
クレーメックの視線の先にはアルティメットクイーンが……ではなくクイーンに変装した三田 麗子(みた・れいこ)の姿があった。
「いかがでしょう?」
「問題ない。瓜二つだ」
「これで私がクイーンの横に立ち、問題が回避できればよいのですが……」
麗子が言う問題とは。
この部隊内にクイーンに反感を覚える者がいて、内部から襲撃される可能性があること。
そうなれば光条世界による、より強力な“機晶エネルギーダウン”がもたらされる危険性が高まる。それは回避せなばらない。
そのためにクイーンが二人いると見せつけることで闇討ちを阻止し、襲撃を諦めさせようと麗子がクイーンに変装したというわけだ。
「やれることはやった。できなくば私が振り払おう。……命令は絶対だからな」
クレーメックとて快くクイーン護衛をしているわけではない。だが、軍人として断ることもできない。
歯がゆさを感じながらも、彼は任務遂行に尽力するしかなかった。
この作戦に参加し、クイーンの護衛を務めているアルフレート・ブッセ(あるふれーと・ぶっせ)、アフィーナ・エリノス(あふぃーな・えりのす)も同じ事を考えていた。
「信用のおけない者の最悪の事態に陥った時に備えるとは。滑稽ですわね」
アフィーナは目を細めながらそう吐露した。
「軍人にとって命令は絶対だ……どんなに気に入らないものだろうと、な」
「そんなものでございましょうか」
「そんなものさ。だから君だってここにいるんだろう」
アルフレートの言葉にアフィーナは返す言葉を持ち合わせていなかった。
「プロフィラクセスも使っておいたし、後退するほど押されてもいない、か」
「このまま押し切れるといいのですが……」
確かに今は押し勝っている。しかし、魔物のまだ多くいる上、業魔は姿を現していない。攻勢が引っくり返ることは大いに考えられる。
そのためにここで油断してはならない。
「元より油断などはしないがな」
「最悪にならないよう、最悪に備えるのは必要なこと、ですわね」
気を引き締めなおしてクイーンの護衛を続ける二人。
一方、クイーンの側ではオットー・ツェーンリック(おっとー・つぇーんりっく)が失礼のないように努めていた。
「先ほど、魔物からの攻撃を許してしまう失態、お詫び申し上げます」
オットーとクイーンの近くではヘンリッタ・ツェーンリック(へんりった・つぇーんりっく)が目を光らせている。
先ほどのように、魔物の襲撃がクイーンの眼前にまで迫ることがないように。
「全て私を護ろうと尽力した結果のこと。時には運の及ばぬこともありましょう。お気になさらず」
「さすがは次期シャンパラ女王陛下。そのお心遣いに感謝の言葉もございません」
「……オットー! 正面から飛空する魔物が接近中!」
やはりこの乱戦、混戦の中では全てに対応しきるのは難しいのか、またも前線を抜けてくる魔物が襲い掛かる。
「申し訳ございません。すぐに静かにさせますので」
そう言ってクイーンから離れ迎撃態勢を取るオットー。
「はあ!」
ヘンリッタが愛武器を素早く二回突き出し、魔物を黙らせる。
がしかし、片方の魔物には致命傷にはならずヘンリッタを突破。しかしこれも計算のうち。
「お静かにお願い致します」
クイーンの前に立ちはだかり培った護衛技術にて突撃してくる魔物をいなす。
魔物の推進力をそのままに地面へと叩きつけ、戦闘不能にしたオットー。
「……お騒がせ致しました。引き続き護衛と、僭越ながら話し相手を務めさせて頂きます」
戦闘の後でも、丁寧な物腰が崩れることはなかった。
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