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リアクション
第10章 生命の実験体
-PM22:30-
美羽たちが実験場に辿り着くと丸い金網の床の周りに並べられた、溶液が入ったシリンダーの中に死体が入っていた。
天井を見上げると、床との間は7mほど差があった。
「行方不明になった人たちも、この中にいるのかしら?どこにも外傷がないから、これから使おうとしていたのかもしれないわ」
シリンダーに入った死体を見ながらも、美羽は辺りに資料がないか探す。
「うぅ・・・死体だらけで怖いんですけど・・・」
おぞましい光景に震えているベアトリーチェは美羽の傍から離れない。
「何ですかここは・・・」
地獄絵図に義純は、思わず顔を顰める。
「(どうして実験場だけ隔離されているんだ?患者を使って何か人体実験でもしていたのだろうか・・・)」
眉を潜め速人は疑問符を浮かべる。
「(ただの死体ばっかりで金目の物はなさそうね)」
目ぼしい物が見つからず、メニエスは嘆息する。
「この辺の扉は全て閉まっていますね・・・」
錆ついた扉を幸が手で無理やり開けようとするが開かなかった。
「(この死体たちを使い、何かの実験をしようとしていたのであろうか?)」
風次郎は心中で考え込む。
「こうやって俺たちが行動している所を、犯人が見ているかもしれないよな」
「そうかもしれないであろうな・・・」
「あぁ・・・どこかにカメラが仕掛けられているかもしれないぜ」
睨むように雷蔵が広い実験場を眺める。
「―・・・やっぱりちゃんと弔ってやったほうがいいわよね」
リネンはシリンダーによじ登って蓋を外し、中から死体を出してやる。
「遺体は中庭で燃やしてあげましょうか」
「そうね・・・」
死者を火葬してやろうという義純の提案に、リネンはコクリと頷く。
「エレベーターで運んであげましょう」
死者を火葬してやるために、葉月はエレベーターの方へ引きずっていった。
葉月がエレベーターの前へ行くとゴゴゴッと地鳴りがし始めた。
「何・・・地震!?」
揺れに耐え切れずミーナは床へ尻餅をついてしまう。
ドォンッドォンッと床を突き上げる音が響く。
「下から何か来ます・・・皆さん下って!」
大地は叫ぶように言い、生徒たちを壁際へ行かせる。
金網状の床を突き破り、体長4mの女型のゴーストが現れた。
エレベーターでラルクたちを襲撃してきたあのゴーストがまた襲ってきたのだった。
髪の毛はなく目は白く濁ったような色をしている。
「予想通りゴーストが現れましたね・・・」
巨大な化け物を見上げて、葉月は睨むよう見据えた。
ギェエエエッと金切り声を上げ、ミーナ向かって手を振り下ろす。
紙一重でなんとか避けたが、まともにくらったらただではすまい。
なぎこがハンマーで殴りかかろうとすると、腹部からもう一つの半身を現し彼女を捕まえようとする。
「危ないー!」
とっさに真がなぎこを庇おうとするが、彼女の代わりに捕まってしまう。
「ぐっ・・・あぁああー!」
ゴーストは真の身体を腹部の半身の腕で両手で掴み、ミシミシッと締めつける。
真を助けようとカガチはハンマーを握り、彼を拘束している手へ殴りつけ、後方へ飛び退き再び捕まえようとしている手から逃れた。
「それなら動きを止めるまでだ!」
龍壱は六尺程の大太刀状の光条兵器で、ゴーストの足を狙い床を蹴って斬りかかる。
「ちっ・・・浅かったか」
避けられてしまい掠った程度だった。
「これが実験体でしょうか・・・なかなかの悪趣味ですね。患者や死者を使って作ったのでしょう。・・・・・・大丈夫ですか?」
異様な光景に苦笑いをした真人は鉄パイプを握り締め、怖がっていないかセルファを気にかける。
「べ・・・別に怖いわけじゃないわよ」
「落ち着きなさい。気持ちを制御すれば恐怖心なんてどうとでもなるでしょ」
「そんなことできるのあんたぐらいよ!」
セルファはムッとした表情をする。
「そうですか・・・ではいきますよ!」
鉄パイプを片手に真人は、標的へ突っ込んでいく。
足元を狙って殴りかかる。
女型のゴーストはバランスを崩し、ドスンッと床へ倒れる。
「やぁああっ!」
巨大な光の剣の形状をした光条兵器で、美羽はダンッと床を蹴って右袈裟斬りを繰り出す。
ザバッと斬られたターゲットの背から、赤黒い血がブシュァアアッと出た。
「けっこうなダメージを与えられたかしら・・・きゃぁああ!」
立ち上がった化け物から振り降ろされる。
「美羽さん避けてー!」
ベアトリーチェの声に危機を察知して起き上がろうとするが、ゴーストがブンッと振るう2本の左腕にぶつかり、壁際に身体を飛ばされる。
「―・・・うぐっ・・・げほっ」
叩きつけられた衝撃で咳き込む。
「今ヒールで治してあげます!」
駆けつけたベアトリーチェは、美羽にヒールをかける。
再びギェエエエッと声を上げて、今度はリネンに襲いかかった。
「(あの体格とスピードに加えて恐ろしい力・・・、なかなか致命傷を狙えないわね。さて・・・どうしたらいいかしら)」
大剣状の光条兵器を構え、リネンは攻撃の隙を窺う。
「(・・・やっぱり狙うなら足よね!)」
左足を狙いリネンが斬りかかる。
「リネン危ないー!」
半身の右腕がリネンを捕らえようとしていたその時、ヘイリーがリネンの身体を抱えて床へ転がる。
ゴーストはドスンドスンッと足音を立てて、彼女たちに襲いかかろうとする。
「こっちです・・・こっちへ来なさい!」
真人と葉月がゴーストへ鉄パイプを投げつけ、ヘイリーたちから引き離す。
鉄パイプをターゲット目掛けて、速人は力いっぱい投げつけた。
「ラルクさん、それを踏み台にしてくれ!」
床に突き刺さった鉄パイプを踏み台にし、アーミーショットガンのトリガーを引き、ターゲットの背骨へスプレーショットを放つ。
ゴーストの身体はドォオンッと床へ倒れた。
カガチが亡者の心臓を取り出し、握り潰すと動かなくなった。
「これで絶命するっていうことは、他のヤツと違ってコイツには全てのパーツがあったようだな・・・」
研究体の身体は蕩け腐り落ち、ドロドロに朽ちていく。
「力を使い果たした末路・・・ということでしょうか」
葉月は眉を潜めて言う。
「早く死者たちを中庭に運んで火葬してあげましょう」
「あぁ・・・そうだな」
真人の言葉に頷いた速人たちは、死者たちをエレベーターで病棟の中庭へ運んでいく。
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