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リアクション
第5章 冥府への案内人ケレス
「ケレスー!どこにいるんだー?」
ベアは大声でナラカへの案内人ケレスの名前を呼びながら探し歩いている。
「ねぇ、あの人じゃないの」
灯りの点いたランタンを片手に、1階の手術室付近を歩く黒いローブを着た女の姿をマナが見つけた。
まず真っ先に鈴木 周(すずき・しゅう)が駆け寄り話しかけた。
「―・・・ひょっとしてケレス・・・ていうナラカへの案内人なのか?(予想通り美人だな・・・)」
「えぇ・・・そうですわ」
ケレスは被っているフードを取り、10代後半くらいの美しい顔を見せる。
「美人さんが困っているって聞いたから、駆けつけてきたんだ」
周はケレスに向かって、爽やかに笑いかける。
「周くん・・・分かっていると思うけど、くれぐれも真面目にやってね。そうじゃないと・・・・・・どうなるか分かっているよね?」
レミ・フラットパイン(れみ・ふらっとぱいん)が周の傍らで、ナンパしないようにすかさず釘を刺す。
「ま・・・まさかそんなわけないじゃないか」
ケレスの姿を見てナンパしようと思った、周はレミに釘を刺され直視できないのか目を泳がせる。
「さぁ〜どうだか」
周の思考を読み取ったかのように、レミは彼をじっと目で睨みつける
「と・・・とにかく、俺たちは哀れな死者たちを成仏させてあげたくってここに来たんだ」
鋭い視線を感じながらも、周はここに来た目的をケレスに話す。
「話す前にまずは自己紹介をしないとな。自分はベア・ヘルロット、こっちはマナ・ファクトリだ」
「ベアさんにマナさん・・・ですわね」
「えぇ、よろしくね。私たちケレスにいくつか聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」
「―・・・どうぞ」
「だいぶ若く見えるが・・・いくつなんだ?」
「私の年ですか・・・数えたことがないんですけど、1000は超えているかもしれませんわ・・・」
はっきりした年齢が分からない様子で、ケレスは思い出すように言う。
「それじゃあ次は私が質問するわね。いつからこんな異変が起きたの?」
「何時からか・・・はっきりした時期は分かりませんが・・・。この町がトンネルの外と別離されてしまう少し前から起こり始めましたわ。死に迷った亡者に失った身体の部分を奪われてしまった方は、命を落としてしまうのですけど・・・自分の身体じゃないと分かった死者はまた別の生者を探し彷徨うのですわ」
「それじゃあ永遠に成仏できそうにないわね・・・、質問を変えるわ。死者の一部を奪う者たちの行動についてどう思う?」
「ほとんどの死者たちは生前の理性がかけてしまっているから、同じように理不尽な死に方させるのは良いと思いませんわ」
「たしかにそうよね。自分たちがされたことを他の相手にも同じことをするなんて、永遠に終わりがないわ。それじゃあ次の質問、何でパーツがある場所を知っているの?」
「病棟で働いていた看護師の女の霊をナラカへ連れて行こうと、後を追ったのですが・・・彼女の後をついていったらラボに入って行くところを見ましたわ。中に入ってみるとそこに死者たちの身体の一部があったのですわ」
「女の霊ね・・・この異変を知っているかもしれないわね。私からの質問はこれだけよ」
マナはケレスへの質問を終えた。
「俺もケレスさんに1つ質問がある。死者たちの身体の一部を戻したら本当に成仏できるのか?」
失った身体が戻れば成仏できるという点に、疑問を抱いたウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)が質問を投げる。
「どうしたら死者たちの成仏のさせることができるか、私も知りたいですね」
エメ・シェンノート(えめ・しぇんのーと)もウェイルと同じような質問をする。
「死に迷っている理由が、自分の身体の一部を探しているだけですから・・・それを本体と一緒に火葬してあげることができれば成仏できた霊たちをナラカへ連れていけますわ。本当は1人ずつパーツを見つけて本人に渡せるのが一番いい方法ですわね」
「たしかにそうかもしれないけど、大変な作業よね」
気の遠くなりそうな作業を想像したフェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)はため息をつく。
「それを渡してあげれば成仏させてあげることができるんですね」
武士は納得したように頷く。
「えーと・・・俺も質問があるんだけど、最初に死者たちの身体の一部を奪い始めたのは誰なんだ?」
「分かりませんわ・・・もしかしたら、ラボに出入りしている看護師の霊なら知っているかもしれませんわ」
「そうなのか・・・」
周は事件の疑問に、さらに疑問を重ねた。
「あっ!私たちケレスの助手になって、この町の事件を解決したいのだけどいいかしら?」
「ごめんなさい・・・助手はちょっと・・・。生きている方をこの町に留めておくことはできませんわ」
生命の危機があるかもしれない生者をこの町に留められないと思いケレスは、マナとベヤの助手志願を断った。
「そう・・・」
マナは残念そうにしょんぼりした顔をする。
「よし成仏させてやる方法が分かったことだし行こうぜ。危険なゴーストたちがいるし、俺たちと一緒に行かないか?」
ケレスの色白の手を握り、レミに釘を刺されたはずの周はナンパ的な行動をとる。
「周くん〜あれほど真面目にやらないと・・・どうなるかって言ったわよね?」
ニコッと微笑んだレミは、周の脇腹にドスッと肘鉄をくらわせた。
「ぐぁっ!いってぇえ・・・」
「それじゃあ行こうか」
周の方耳を掴み、レミはケレスの傍から引き離す。
「(あぁ〜・・・美人さんから引き離されていく・・・)」
無理やりケレスと引き離され、周はトボトボとラボに向かった。
ライラはいくつもの研究機材が置かれているラボ2-1の中に入ると、アルコリアたちは別の場所に移動していて誰もいないかった。
怯えながら調べていると何かにつまづいて転んでしまう。
何につまづいてしまったのかと見ると、人間の右腕が1本そこにあった。
「きゃぁああー!」
逃げ出そうと悲鳴を上げてドアの傍に行くが、突然足を止めた。
1階で最初に戦った右腕のないゴーストの姿を思い出したからだった。
恐る恐るその腕を床から拾い、ライラはそのゴーストがいた1階へ向かう。
「あれ・・・ライラさん?」
2階に向かう途中で武士は、ライラとはぐれてしまっていた。
キョロキョロと辺りを見回して探していると、ペチャッペチャッと生肉を引きずるような音が近づいてくる。
そーっと振りかけると腹部を裂かれ、胃腸のない死者が3メートル先まで迫っていた。
「う・・・うぁあああー!」
運悪くゴーストに遭遇してしまった武士は、叫び声を上げて病棟内を逃げ回る。
武士の叫び声がライラの所まで聞こえてきたが、彼女は無視してゴーストの所へ行く。
驚くことにその亡者は無理やり身体を動かそうとしている。
ラボで拾った右腕をそっとゴーストの近くに置くと、死者は急に動かなくなった。
「まず1人目ですわね」
やっと成仏できた死者のところへケレスがやってきた。
ランタンの中にその者の魂を吸い込む。
礼の意味を込めて軽く頭を下げ、彼女は再び病棟内を歩きだす。
「あぁやって魂を回収していくのね・・・。あっ!そうだ、仕方ないわね・・・そろそろ助けに行こうかしら」
病棟内で悲鳴を上げた武士の存在を思い出し、ライラは彼を探しに行くことにした。
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