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リアクション
第4章 日記に込められた悲しき怨念
コツンコツンとハイヒールの音を響かせて、黒いナース服を着た看護師が幸の方へやってくる。
やっと目を覚ました幸だったが、意識まだはっきりとしていない。
筐子やガートナたちの方を見ると、彼らはまだ眠っていた。
今度はカガチたちへ視線を移すが、看護師の姿が見えていない様子だった。
「(誰・・・女の人・・・?)」
幸の近くに寄ってきた女は、彼女が手にしている日記の方を指差す。
ピッキングでも開かなかった日記帳が独りでに開いたとたん、ようやく意識がはっきりと戻った。
「―・・・寝てしまっていたようだ。幸・・・今まで開かなかった日記をどうやって・・・?」
「それが・・・黒い服ナース服を着た看護師が、これを指さしたとたんに開いたんですよ」
「持ち主の霊の強い念で開けられなかったのかもれませんぞ。そういった念の篭った物は、見せても良い相手・・・もしくは自分たちの死を痛んでくれる者にしか見せないですぞ」
「とういうことは、あの女の霊がこれの持ち主なんですね。開いたってことは、私たちなら見せてもいい・・・ということでしょうか」
ガートナの言葉に、幸は看護師の日記を見つめながら考え込む。
「とにかく中を見てみよう」
幸が手にしている日記を、アリアが傍から覗き込む。
「えーっと・・・じゃあ読み始めますね。今日からこの病院で働くことになった、理想と違って凄く大変そう。て・・・書いてありますね。その後の数ページも普通の内容です」
「そうなの?私にも読ませて」
「えぇどうぞ」
「ここからのページはちょっと内容が変わってきているわね。体の調子が最近おかしい、過労のせいかもしれない。と・・・書いてあるわ。続きを読んでみたけど・・・病状は大腸ガンだったみたいよ」
「持ち主らしきその女が霊となって現れたということは・・・その病で亡くなってしまったということですな」
「どうやらその人には恋人がみたいね。日記の中に書いてあったわ。シャーペンで書かれている名前の部分がぼやけてて読めないけど・・・」
「私もそこの辺りは読みました・・・相手はこの病院で働いていたドクターみたいです。好きな人と死別しただけでなく死に迷っているなんて・・・早く成仏させてあげたいですね」
幸は日記をギュッと抱きしめ、一筋の涙を流し顔を俯かせる。
「そのドクターって・・・まだ生きているのかしら。もし生きているとしたらどこにいるのかな・・・」
日記に書かれていた相手が今どこにいるのか考えながら、アリアは首を傾げる。
「こんなところに紙が落ちていますよ」
シーリルが落としたノートの紙を、義純が拾い幸に手渡す。
「電力室のカードキーがある場所が書かれてしますね。返却場所は受付カウンターになっているようです」
「一定の時間になったら看護師の人が、そこへ回収しに来るみたいね」
「ひょっとしたら向こうで探している人がいるかもしれないから、ここで待ってたほうがいいかもしれないよ」
傍らから筐子が紙を覗き込む。
「無闇に動くよりその方がいいかもしれませんね」
筐子の言葉に、義純はコクリと頷いた。
-PM19:00-
「見つからないわね・・・カードキー」
受付カウンターの中でメニエス・レイン(めにえす・れいん)は、棚や引き出しの中を漁りながら電力室に入るためのカードを探していた。
「こっちにもないよー、おねーちゃん」
ロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)もメニエスと一緒にカードキーを探す。
「君たちも電力室のカードキーを探しているのですか?」
メニエスたちの姿を見つけた菅野 葉月(すがの・はづき)が、カウンターのテーブル越しから声をかける。
「ワタシたちも一緒に探すわ」
ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)はそう言うと、テーブルの上を乗り越えて中に入った。
「ナースステーションの方は結構人がいるみたいだから、僕たちはここを探すか」
「手分けして探した方が早く見つかるかもしれないわよね」
テーブルの上を乗り越えて、高月 芳樹(たかつき・よしき)とアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)もカウンター内に入ってきた。
「あらそう、大勢の方が早く見つかりそうね。(これは好都合だわ・・・エレベーターの電力を復活させて、さっさと3階に行って目ぼしいもの見つけたかったから・・・)」
言葉ではそう言いながらも、メニエスは心中では早く金目の物を見つけたいと呟く。
探し続けること数十分間、目当ての物はなかなか見つからなかった。
「書類の間にもないみたいだな・・・」
芳樹は棚の中に納まっているファイルの中に挟まっていないか探す。
「こんだけ量あると見つけづらいわよね」
ホッチキスで留められた紙の束を取り出し、アメリアはふぅっとため息をつく。
「この中にも挟まってないようね」
紙の束の中にカードキーが挟まっていないか、ミーナが探してみるが見つからなかった。
「簡単に見つからないもんなんだな・・・」
疲れたように葉山 龍壱(はやま・りゅういち)はふぅっとため息をつく。
「専用の保管場所があると思ったんですけどね」
片手で汗を拭い、天領 月詠(てんりょう・つくよみ)も一緒にカードキーを探す。
「ここにもなさそうだな・・・。ナースステーションと手術室にもなかったから、カードキーがありそうな場所はここしかないんだが」
カードキー探しに協力しにきた緋山 政敏(ひやま・まさとし)は、ハンドライトで棚の隙間を照らして隙間に落ちていないか探す。
「置いてある場所が書かれているノートもありませんね」
ノートをペラペラとめくり、置いてある場所が書かれていないかリーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)がチェックする。
「見つからないわね、どこにあるのかしら」
「これだけ探してないなんて・・・別の所にあるのかな」
蒼空寺 路々奈(そうくうじ・ろろな)とヒメナ・コルネット(ひめな・こるねっと)も一緒に、カードキーを見つけようとしていた。
「あれ・・・この引き出し・・・鍵がかかっていて開きませんよ」
葉月が病棟の従業員用の机の引き出しに手をかけ、開けようとするが鍵がかっていた。
「困ったわね・・・誰かピッキングできる人いる?」
鍵のかかった引き出しの傍にやってきたメニエスは、ここにいる生徒たちの中でピッキング出来る人がいるか聞くが、彼らは首を左右に振る。
「カードキー見つかりましたか?ナースステーションの方はなさそうだったんで、こっちに探しに来てみたんですけど・・・」
大地がテーブル越しからひょいっと顔を覗かせ、メニエスたちに声をかける。
「いいえ、まだ見つかっていないわ。この鍵のかかった引き出しの中にありそうなんだけど・・・鍵がかっていて誰も開けられなくて困っているのよ」
「それじゃあ俺が開けてあげましょうか」
テーブルを乗り越え、鍵のかかった引き出しを開けてやる。
そこにはテレホンカードサイズの、電力室のカードキーが入っていた。
「ナースステーションにいる人たちに、見つかったことを携帯電話で知らせるか」
カードキーが見つかったことを知らせるために、芳樹は隆光に電話をかけようとする。
トゥルルルと携帯電話の発信音が響く。
「(これで目的の品が探せそうね・・・。あら・・・あんなところに人が・・・生存者かしら。それにしては様子が・・・)」
メニエスは黒い笑みを浮かべて心中で呟いたその時、受付カウンターの前で凄まじい形相で、メニエスを睨みつける女の看護師の姿が目に映った。
「あっ!もしもし僕だけど、今カードキーが・・・あれ?」
芳樹が看護師の姿を見た瞬間、通話の途中で電話からザザザッとテレビの砂嵐のようなノイズ音が聞こえ、プツンッと突然途絶えてしまった。
「(ゴーストたちが来たわ!)」
ハンドライトの灯りの先に、床を這うゴーストの姿をカチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)が見つけた。
政敏とカチェアの肩をトントンと叩き、ゴーストが来たことを知らせる。
カウンターの外へ出ようとすると、何者かに足を掴まれた。
恐る恐る床を見ると片目のないゴーストが、カチェアの足を灰色の手で掴んでいた。
その手に向かって鉄パイプをブンッと振り下ろし、なんとか逃れるとカウンターの外へ急いで出ていく。
「こんな所に生存者が・・・?」
葉月たちがカウンターから出ようとすると出口に、立ちはだかるようにたたずんでいる看護師の女がいた。
「そこを退いて!私たちはゴーストたちを倒さなきゃいけの」
看護師に向かって退くように言うミーナに対し、彼女は首を左右に振り退こうとしない。
「僕たちはゴーストを酷い目に遭わせようとか・・・そういうことするわけじゃない。ただ、こちらに危害がくわえられないようにするだけだ」
今度は芳樹が言うと、看護師は顔を俯かせてスーッと姿を消し、彼らは驚きのあまり丸くする。
「亡霊・・・だったんですか・・・」
突然の出来事に葉月たちは唖然とした。
「何をボーッとしているの、ゴーストたちが襲ってきているわよ!」
氷術でゴーストの足元を凍らせながら、葉月たちに向かってメニエスが怒鳴る。
テーブルを乗り越えてミーナたちは、鉄パイプを握りゴーストの膝を砕いて動きを止める。
「これでもう動けないわね。ちょっと可哀想な感じもするけど・・・」
身体を動かさなくなったゴーストを見下ろし、カチェアは悲しそうな顔をした。
「今しばらくの辛抱だ。俺たちが必ずお前たちを苦しみから解放してやる」
政敏は成仏できないゴーストたちに向かって誓うように言う。
「―・・・あっ!やっと電話つながったぜ・・・。もしもしー僕だけど、電力室のカードキー見つかったから電力室の前に集合していてくれ。それじゃあ・・・また後でな」
カードキーが見つかったことを、芳樹が隆光に携帯電話で伝えた。
「よし、合流したら電力室へ行こう」
芳樹たちはエレベーターの電力を復活させるため、まずは隆光たちと合流しようとナースステーションへ向かった。
「私たちは先に電力室へ行ってようか」
「そうね」
路々奈の言葉にヒメナが頷き、2人は2階へ向かった。
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