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リアクション
第2章 怨念渦巻く病棟
町がゴーストタウン化してしまった理由が、何らかの実験の影響ではないかと考えた赤月 速人(あかつき・はやと)は、見た光景を忘れないようにメモ帳へ軽くスケッチしながら1階の手術室内を探索していた。
「手術台に心電図・・・その他の医療器具もトンネルの外と変わりないようだな」
「どこか変わったところがないか見落とさないようにチェックしていかないといけないわね」
カミュ・フローライト(かみゅ・ふろーらいと)はエンシャントワンドで天井の空調をつっつきカンカンと鳴らす。
「うーん・・・空調のファンを外したら何かみつかるのかしら。―・・・きゃあ!」
ファンの隙間からダラリと垂れ下がってきた灰色の髪に杖を掴まれ、その隙間へ視線を移すと顎のない老婆が恨めしそうな顔でカミュを睨みつけている。
「いやぁあっ、離してよ!」
カミュは力いっぱい杖を引っ張るが、老婆の髪は離そうとしない。
「さっそくゴーストのお出ましってわけか!」
リターニングダガーを投げつけ、杖を掴んでいる髪を速人が斬り裂く。
杖にくっついている髪の毛をカミュはブンブンと振り回し床へ振り落とす。
老婆の亡者はファンを床に落とし、天井から這い出て来た。
床に落ちてカミュに襲いかかるゴーストの背骨を、速人がハンマーで砕いた。
ガンッゴキンッ。
骨を砕く音が手術室に響き渡る。
「よし・・・これでもう動けないだろうぜ」
「もう見るところもないし、他の所に行こうよ」
「そうだな・・・次は電力室へ行ってみよう」
速人たちは手術室から出て、電力室へと向かった。
「あれが噂のゴーストですね・・・倒しましょう!」
伊那 武士(いな・たけし)は光条兵器で、右腕の無いゴーストに攻撃をしかける。
「攻撃しちゃ駄目ー!」
ゴーストを攻撃しようとしている武士を、ライラ・トラヴィス(らいら・とらう゛ぃす)は殴り飛ばす。
「いくら相手がゴーストだからって、いきなり攻撃しちゃだめだよ。成仏できない理由だってあるんだから、まずは聞いてみないと・・・」
「えぇ・・・そうですね・・・」
床に倒れたまま武士は、殴られた頬を片手で押さえながらライラを見上げる。
「よければ成仏できない理由を教えてくだ・・・うぁあ!」
言い終わる前にゴーストに右腕を掴まれ、引き千切られそうなほど引っ張られた。
武士の腕へ鋭く尖った爪をザシュッザシュッと何度も突き立て、奪おうとするがなかなか取れない。
恐ろしい光景にライラは一歩後退り、足音を立ててしまう。
ライラの足音を聞いたゴーストが、彼女の方へ襲いかかった。
彼女の右腕を狙い、爪で裂いた。
「痛いっ!この・・・何するんだよー!」
右腕を傷つけられ、怒った彼女はハンマーでゴーストを叩きつける。
「どうやら完全に倒すことはできないようですね・・・」
ライラのヒールで傷を治してもらった武士は、なんとか床から立ち上がった。
「そうみたいだね」
「攻撃されてしまいましたけど・・・なんとか成仏させてあげたいですよね。誰か方法を知っているかもしれませんから、知っていそうな人に聞いてみましょう」
ゴーストたちを成仏させたい2人はその方法を探しにいった。
「シーマちゃん、おじーちゃん。廃病院をいいことに、なんか面白いもの探しましょう。いえ・・・むしろウフフなモノを探してみましょう!」
病棟の前で牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)はニヤニヤと微笑み、ズビシッと左腕で真っ暗な空へ指す。
帰り時間まで暇を潰そうと、アルコリアはさっくラボ2-1に向かい、医療器具を手に取り観察し始めた。
「おじーちゃんは、その辺りどう思いますっ!?」
ランゴバルト・レーム(らんごばると・れーむ)に話しかけるが、本棚から医療所を取り出して読みふけっているようで返事が返ってこなかった。
「この機具とかなら、あんなこととか・・・こーんなこととかに使えそうですよね。ねぇシーマちゃん、どう思います?」
「―・・・」
「それじゃあ・・・そうですね・・・。試験管とか点滴用の針が沢山あるけど、シーマちゃんはここにあるどの機具を使われたいっ!?」
「―・・・・・・・・・・・・」
「うぅ・・・一言くらい返事してくれても・・・」
「えーと・・・アル、今何と言った?」
アルコリアの問いかけに、シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)は考え込むように間を空けて言葉を返す。
「ここにある機具についてシーマちゃんはどう・・・」
「ノーコメントだ・・・」
ろくでもないことを考えていると察知したシーマは、アルコリアの言葉を遮って言う。
「アルコリア殿、シーマ殿お互い目的の為に頑張りましょうぞ」
「あぁ・・・そうだな」
暴走するアルコリアと読書に夢中でやる気のないランゴバルトに、シーマはこの場から馬鹿笑いしながら走り去りたい気持ちでいっぱいだった。
「電力室の近くにカードキーがあると思って探しに来たんだが・・・ないようだな。扉も閉じているようだし・・・」
閉ざされた扉へ手袋をはめた手で触れ、シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)は戸が開かないことを確認する。
「廊下にも落ちていないようですね」
雨宮 夏希(あまみや・なつき)はカードキーが床に落ちしていないか、足元周辺をチェックしながら歩く。
2人は手袋をはめ、顔にはマスクをつけて電力室のカードキーを探す。
「どうやら2階にはないようだな。他の場所を探すか」
ラボの中を見て回っても見つからなかった。
まだ探しに行っていない場所へ向かい、2人は階段を下りていった。
病棟内の地図を暗記しようと、如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)は1階の掲示板前で、それぞれの場所の位置をブツブツと言葉で言いながら、暗記しようとしていた。
「なんだ・・・この辺り・・・。文字が擦れてよく見えないな。3文字みたいだが・・・実・・・後の2文字が擦れててまったく読めない」
「誰か向こうから来るわよ」
「他の生徒たちか?」
アルマ・アレフ(あるま・あれふ)が指差す方向を見ると、情報収集しようと1人で病棟内を歩くアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)の姿があった。
「こんなところに1人でいるなんて危険だぞ」
佑也はアリアの方へ駆け寄り声をかける。
「ちょっとゴーストタウンについて調べてみようと思って来たのよ」
「そうか・・・じゃあ俺たちも一緒に行こう。1人にしておくのは心配だからな。(1人にしておくと何か嫌な予感もするしな・・・。ここの死霊たちだろうか・・・さっきから誰かに見られている気配も感じる)」
「いいの?」
「えぇ、大勢の方で動いた方が安心だもの」
「それじゃあ・・・お願いしようかしら」
「まずどこへ行こうか?」
「ナースステーションに行こうかと思っているわ。そこなら手帳とかいろいろありそうだから」
「そうだな、そこへ行ってみよう」
佑也たちはナースステーションへと向かった。
「てっきりこの辺りにゴーストのパーツがあると思ったんだが・・・」
ゴーストたちを成仏させてやろうと、イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が手術室の中で、亡者の奪われたパーツを探している。
アルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)はゴーストが室内に入ってこないか、周囲を警戒していた。
「―・・・これは・・・すでに誰かが倒したゴーストか」
手術台の傍で床に横たわる老婆の亡者を見つけ、イーオンは眉を潜めた。
銀のトレイの上を見ても、血まみれのメスやガーゼが放置されているだけだった。
「色からしてだいぶ時が経っているな・・・。普通の病院なら手術後はきちんと片付けてあるはずだが、単に片付けがずさんなだけか?それとも何かの事情で・・・」
イーオンが考えながら歩き回っていると、細く長い白い糸が顔にぶつかる。
手で除けるとそれは糸でなく人の髪の毛だ。
垂れ下がっているところを見上げるとファンの隙間にひっかかっていて、糸だと思ったのは老婆の髪の毛だった。
「そこから出てきたのか・・・。もしかしたらああゆうところにもあるのかもしれないな」
ファンの向こう側にパーツがないか、手術台を踏み台にして覗き見る。
「どうやらないようだな・・・他を探すか」
手術台の上から下りると、アルゲオと共に手術室の外へ出て行った。
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