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暴走の眠り姫―アリスリモート-

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暴走の眠り姫―アリスリモート-

リアクション

 ――天御柱学院、校長室

「こちらです。どうぞ」
 校長室前、アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)が扉の内へとアリサを回収しに来た2名の極東新大陸研究所の研究者を入れようとする。
 学院の教師として、訪問者の出迎えをアルテッツァ自ら名乗りでた。目的としてはこの研究者からアリサの事を聞き出す機会を得るためだ。生物教諭としてはアリサの解体図に興味をそそられる。
 とは言え、アリサに関しては前回の調査でのレポート以上のことは教えておもらえなかった。最も、調査時に彼は別のことにかまけていたので、それすらも彼には耳新しい話だった。
 前回回収したアリサの資料に関してはヴェルディー作曲 レクイエム(う゛ぇるでぃさっきょく・れくいえむ)に纏めるのを任せている。
「待って下さい!」
 校長室の扉が開くと同時に、廊下の向こうから声がする。
 源 鉄心(みなもと・てっしん)とその連れであるティー・ティー(てぃー・てぃー)イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が走ってきた。
「ああ、“まだ”ご無事だったんですね」
 研究者の安否を確認して、少し皮肉って鉄心は言った。既に、アリサ脱走と、機晶姫の暴走が始まっていた。もしかしたら、アリサを回収しに来た研究者が襲われるのではと思っていたのだが、それは“まだ”のようだ。
「キミは教導団の……」
 皮肉を言われた研究者よりもアルテッツァの方が、顰めっ面になる。
「よければ、俺らにあなたがたの警護をさせて下さい。恐らく、アリサはあなたがたを狙っているでしょうから」
 鉄心が研究者にボディーガードを申し開きする。本当のことを言えば、護衛は二の次なのだが。
「しかし――」と何故かアルテッツァが研究者に代わって反論しようとした。が、それは出来なかった。コリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)の声に遮られた。
(わかった、私が警護を許そう。よろしいかアルテッツァ)
 学院の長に言われては、アルテッツァも反論できない。渋々納得した。
「わかりました。後のことは彼らに任せます。ボクはコレにて」
 と言って、アルテッツァは校長室から離れた。教員としての役目はここで一応終わっている。彼にとって大事なのは研究者の安全よりも、珍しくこの学院に来ているフィアンセの事だ。
 なお、彼の言う『彼ら』とは鉄心たちの事ではなく、校長と研究者の面談に同席を許された榊 孝明(さかき・たかあき)益田 椿(ますだ・つばき)平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)の三人の天学生徒の事を言っている。
「あの先生……なんか怖い」
 去りゆく教員を見てティーがそう呟いた。
(立ち話と行くわけにはいかない、君たちも座るといい)
 ティーやイコナの事を気遣い、ソファーのある席へと彼女たちを誘う。コリマは怖い顔つきのわりに紳士的だった。それでも顔見知りの激しいイコナには彼の顔はインパクトが有り過ぎるため、動きがぎこちない。
(さっそくでワルイが、アリサの事について幾らか詳しい話をしてもらおうか)
 事が急を要すため、すぐに聞き出さなければならない。アリサによって既に学院は被害を被っているのだから。
「いいでしょう。その前に、1つ頼みたいことがあります」
 対し、研究者も要求を突きつけてきた。どうやらこの会合は穏やかに済みそうにない。
「この部屋に《フォースフィールド》を貼らせていただきます。私どもの会話がコリマさんの《精神感応》から漏れては困ります。恐らく、アリサは既にこの学院中のテレパス会話を全て聞いているでしょう。彼女の《精神感応》能力はそれほどまでに強力です」
 研究者たちもアリサが逃げ出したことに感づいているようだ。
(――わかった)
 コリマがそれを承諾する。この場に居る全員が《精神感応》での外部連絡が出来なくなるだろうが、ここでの会話をアリサ知られては、後々彼女に対処出来なく成るかもしれない。
 研究者が立ち上がり、《フォースフィールド》を展開する。彼はサイオニック系の能力者のようだ。
「これでここは、アリサの精神ネットワークからスタンドアローン化しました。では、自己紹介と行きましょう――」
 研究者は名刺を取り出し名を告げる。
「極東新大陸研究所 本部所属 一口A太郎(いもあらい えいたろう)です」