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リアクション
「同士よ、同胞たちよ! 我らはついに、運命の至る場所へと来た。 専守防衛の時は終わった。今より我らは打って出る! 全てに終止符を打つために!
バーデュナミスはフィーニクスが完成した。ここトロイア基地を飛び立ち、我らの導きとなるだろう!
さあ、同胞よ! ミネルヴァの化身たちよ! 今こそ、右手に鉾を持て! 左手に盾を 胸に覚悟を! 腹に怒りを!
戦列に並び、軍靴を揃え、軍歌を歌い、戦火を与え、戦果を奪え! 今こそ宿敵たる傀儡の本拠地を踏襲し、我々の受けた蹂躙を蹂躙しかえそうではないか!
敵は人ではない、人の模倣たる傀儡、人形だ! 残らずガラクタにしてしまえ!
略奪せよ、簒奪せよ、強奪せよ、収奪せよ、剥奪せよ、横奪せよ! 奴らの全てを!
目指すは過去に途したヘリオポリス。そのモニュメントたるオベリスクを奪取せよ!」
疑惑のシステムシティ
――トロイア基地
フィンクス・ロンバート空軍大尉の激励が終わる。檀上から降りる。
「しかし大丈夫なのか? フィーニックスを大量投入して。フレームの耐久性の問題有るであろうに」
和泉 猛(いずみ・たける)がバーデュナミス開発担当のエルメリッヒ・セアヌビスに尋ねる。
フィーニクスの量産に即して、装甲板の軽量化がなされた。しかし、《機晶技術》の知識を持つ猛にしてみれば、それはフレームが機晶エンジン出力に絶えられなく成るように思えた。
「それはなら大丈夫。キョウマのやつが自己修復システムナノマシンを含んだ、特殊装甲版を作ったから、自壊することはないよ。何でも加荷電シリコーンを使った新しいアモルファス金属が生成できたってさ」
「材料力学の分野は疎いが、ソレで大丈夫なのだろうか? 敵の侵食ナノマシンのことも有るだろう? 安易にナノマシンを使って大丈夫なものか」
「逆だよ。使ってでも侵食を抑えるべきなんだ。効果は余り期待できないけど、やらないよりはマシだと思うよ」
納得の行かない猛が唸り、首を捻る。
二人に、フィンクスが近づく。
「フィーニクスの実戦投入化に強力感謝する。これもエルメリッヒ博士とパラミタの技術提供があったからだ」
「一番に言うならば、キョウマに言ってください。一番の強度問題を解決したのはあいつなんですから。『ハルパー』にしろ新型兵器も幾つか開発してるんですから」
敵がナノマシン群であることから、ヒントを得たのか、パラミタとの強力開発の最中に考案されたイコン及びバーデュナミス用武装が作られた。
「ロンバート大将、話があります!」
不意に、ドクター・ハデス(どくたー・はです)が話しかける。大事な要件が有るようだ。
「どうした? 何か問題でもあったか」
「ああ、今まさに話していたフィーニクスが危険だ! RAR.によるアンドロイドの暴走が画策されているに違いない!」
要点が掴めない。と眉をひそめるフィンクスにアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)が詳しく説明する。
「えっとですね・・・。この世界のドールズが『大いなる者』の影響を受けているかもと言いましたよね? 伝承によれば、『大いなる者』と『最終兵器』がヘリオポリスとオリュンズに分けて、封印されている。敵の目的も『最終兵器』の封印であるRAR.。仮に、RAR.が嘘をついていたとしたら――」
「マザーコンピューターが嘘をつく? その根拠はどこにあるんだい?」
エルメリッヒの問いにハデスが答える。
「RAR.は『封印が2つ』と言った。が、『2ヶ所』とは言っていない。これはRAR.にも『大いなる者』の封印が『最終兵器』と同時にされていると仮定できる。封印の依代を分割するのはよくある方法だ」
「だから、もし、RAR.が『大いなる者』の本封印だったとしたら、その封印が解けかかっていてRAR.が『大いなる者』に支配されていたとしたら、フィーニクスに乗せるアンドロイドと量子通信に影響がでるかもしれないとみんな心配しています」
アルテミスとハデスの唐突な話にロンバートは理解を示すものの、困惑の色は拭えていない。
「量子通信は基地内部のコンピューターを使用しているから問題はないかと思うが――エルメリッヒ博士、サポートアンドロイドに関してはどう思う?」
エルメリッヒは険しい表情で答えた。
「仮に、RAR.が僕らを裏切っているとしたら、可能性は“あり”ます。アンドロイドの生産はオリュンズで進めて、RAR.の監視下に置いていました。既存のアンドロイドにアセトの学習した戦術、サポートプログラムを学習させるために。軍備使用許可移譲はさせていますが、RAR.の管理システムは生きています。RAR.がアンドロイドの思考を統制させる鍵ですから――」
「では、RAR.が我々に牙をむけば――」とフィンクスの言葉に「おそらくは」とエルメリッヒが頷く。
「通信が使えなくなることは無いともいますが、基地の戦略戦術コンピューターにハッキングを仕掛けてくる可能性はあります。その場合一番危惧すべきは住民の安全でしょう。電子的な防衛策が必要です」
「この件に関しては我らパラミタの部隊が、解決案と対策を講じている。今パラミタ式の通信機を予備としてフィーニクスに搭載している。以前に通信中継基地、アンテナを配備しておいたから、問題なく使えるはずだ。アンドロイドのフィーニクス乗っ取りの際にはマニュアル操作で乗り切ればなんとかなるだろう!」
自信たっぷりに、ハデスが答えた。
RAR.が黒幕。もし、そうであるならば、これからの戦局が一層厳しくなる。
今まさにヘリオポリスよりドールズが進軍してきている。これを見計らって、敵の戦力を本拠地から分断させるつもりで、防衛部隊と敵地進軍部隊を構成していた。
勿論これは、ミネルヴァ軍の戦力の分断も意味する。更に、RAR.への警戒も考えるとなると、これにも人員を割かなければならない。しかし、正規軍の兵を不確定な事象に割くことは出来ない。
ここは外来の彼らに任せるしか無い。
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