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【重層世界のフェアリーテイル】オベリスクを奪取せよ!(後編)

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【重層世界のフェアリーテイル】オベリスクを奪取せよ!(後編)

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バトルフィールド外の攻防

 戦っているのは、決して兵士たちだけではない。
 機兵戦争とは整備士たちの戦いでもある。殊、拠点防衛において彼らの役目は外で戦う兵士たちよりも大きい。

 防衛軍は危うい局面を迎えていた。ドールズの数の多さから、防衛線が徐々に後退している。このままではオリュンズに進行を許してしまう。
 問題はドールズを倒しても、新たなドールズがテレポートで送られてくることだ。まるで無尽蔵だ。
 それに対抗するにはミネルヴァ軍は兵士とバーデュナミスを増やすしか無い。しかし兵士を増やす事はできない。ならば、破損した機体を回収して整備と修理によって再利用しないといけない。兵士の最大数はそのままに。

“戦線交代! 一斉掃射開始せよ! 交代した部隊は弾薬の補充を済ませろ! 破損機はドッグに戻れ! 衛生兵! 負傷者を機体から回収しろ!
 司令室から怒涛のように命令が下される。
 アルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)は自分たちの出番が回ってこなければいいと思っていたが無理なようだ。
「回収機体位置を把握しましたわ」
 シーパンツァーソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)と稼働停止機体を回収する。整備ドッグへのシュートに回収機体ごと入る。
 回収されたフィーニクスがずしりと、ドッグに横たわる。
「パイロットに生命反応があります。梓殿手当を!」
「わかりましたわ!」
 高嶋 梓(たかしま・あずさ)が負傷者の救護に対応する。
 外部開閉でキャンピーがこじ開けられ、負傷したパイロットが出てくる。墜落の衝撃で頭と腕を殴打している。上腕に骨折の予兆、血混じりの紫色の腫れがあった。
 一方、その兵士が乗っていた機体は、動力炉たる機晶回路部分を破損しており、回路の取替と潰れた装甲の取替が必要だった。
「こいつは大破だ」
 湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)は【R&D】で作った診断プログラムで破損状況を解析し、赤タグ、大破のマグネットを機体に取り付けた。だが、大破機体としては比較的修復は可能だ。
「アルバート、こいつを奥に運んでくれ。朝野さん達の所に」
“了解です”
 機晶エンジンは専門知識と、それをストックする未沙に任せられる。機晶エンジンは完全復元が出来ないため、内部を取り出して取り替え作業となる。
「大丈夫、必ず勝てますよ。だから安心して下さい」
 骨折箇所に添え木がわりの金属を巻いて、《ヒール》、兵士を励ます梓。
 負傷者の頭の出血は派手だが大したことはない。ただ、脳震盪を起こしているのか意識がうつろだ。衛生兵に医務室へと搬送させた。
「フェル! そっちの工具を取ってきて!」
 黄色:中破タグのフィーニクスの修復を十七夜 リオ(かなき・りお)が担当する。
 肩接合内部の配線が切れており、これでは再配備時に武器の使用が出来ない。切れた配線を繋ぎ直す必要がある。
「リオこれでいいの?」
 リオはフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)の持ってきた工具箱を受け取る。
「ありがとう。ここ抑えててくれる?」
「武器の配給準備完了です!」
 シャルロット・ルレーブ(しゃるろっと・るれーぶ)試作型改造機晶姫 ルレーブ(しさくがたかいぞうきしょうき・るれーぶ)が司令室に防衛部隊に新たな武器を送る準備が整ったことを伝える。
 彼女はボディーのメンテナンス中であるため、武器配給の手伝いをしていた。
“よし、補給ポイントに防壁展開! 射出を開始しろ!”
 ライフル、マシンガン、グレネードなどが、エレベーターで射出されていく。弾切れを起こした武器を捨てて、防衛部隊のフィーニクスが新しい武器に取り替える。
 そして、次着の武器を配備すべく戻ってきた弾薬のない使用済みの武器の冷却と装填作業へと移る。
 ガコンッッ! と破壊音が響く。
「何なの!?」
 整備の手を止めてリオが振り返る。
“サポートアンドロイドが修理機体を勝手に動かしている!”
“B-11機のアンドロイドを強制終了させろ!”
“停止信号を受け付けないぞ!?”
 暴走するフィーニクス。が、リオが整備中のフィーニクスへと襲い来る。
「させないわ!」 
 フェルクレールトが立ちはだかる。最大威力の《真空波》でコックピット部分をアンドロイドごと破壊する。
 操縦者を失い、暴走したフィーニクスが倒れる。こいつが暴れたせいで機体発進口の一つが瓦礫で潰れた。
“直ぐに瓦礫を撤去しろ! 別の昇降機に修理した機体を回せ!”
“防衛にも行動がおかしな機体がいるらしいぞ! なんてことだ!”
 アンドロイドが暴走しているのか? まさか、RAR.の仕業か!? と思うものも出る。
 だが、全てのアンドロイドが違反行動をしているわけではない。それでも自体は悪化へと向かっていた。