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リアクション
分子大のインベーダー
ドールズは侵攻に加え、アンドロイドの反乱により、数機のフィーニクスがフレンドリーファイヤを起こす。防衛線はメチャクチャだ。
「やっぱり、RAR.が黒幕ってことですか!」
{ICN0003857#厳島三鬼}が見方からの砲撃を回避し、武器を撃ち落とす。
“いいえ、これはRAR.による策略ではありません! 敵側のハッカーがRAR.のアンドロイド制御システムを一部操っているそうです”
睡蓮の疑問に、ヘスティアが答える。
“操作をマニュアルに変えろ! アンドロイドが従わないなら破壊を許可する!”
だが、マニュアルによる操作対策を講じていた為、ある程度の被害で済んだ。だが、アンドロイドのサポートを失ったフィーニクス機は動きのキレを失う。それは扱いにくい戦闘機でしかない。
「何事です中将」
「アンドロイドが反乱を起こしたらしい。お前は大丈夫か」
「あんなのと一緒にしないで下さい。私は至って正常です」
“一旦立て直す! 後ろへ下がれ!”
フィンクスが命ずる。しかし、サポートを失ったフィーニクスの機動は遅く、退くのに遅れる。敵はこれを狙っていたのか、ドールズが遅れた機体に組み付く。
“何をするだ! やめろぉーーーー!”
“どうした! D-07機!
組み付かれたフィーニクスに黒い靄、ナノマシン群が絡みつく。
キャンピー内部の生命反応消失。
ナノマシンは新しい機体を手に入れた。
「はう……っ!」
村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)がまた気分を悪くする。ライネックスの操作中だからまた嘔吐するわけにはいかない。
「怯むな。怖がっていてもどうにもならないぞ」
アール・エンディミオン(あーる・えんでぃみおん)が注意する。
「わ、わかってる! でも、アールだってあの中のことを知ったら――」
前に読み取ったコクピット内の記憶。生きたまま人が爪先から分解されていく映像。分解された組織から漏れる血液。ズルズルと血液の池に沈む肉。残る骨と服。思い出しただけで――
「気持ち悪ぅ!」
「だから吐くなよ」
「吐いてはいないもん!」
ドールズがライネックスに近づく。蛇々は怖がって反応できてなかったが、アールが冷静に組み付きを回避し、ビームサーベルで四肢を切り落とす。
「ひっ……!」
いや、敵機を切っても、ナノマシンに触れるだけで侵食してくる。ライネックスの腕に絡みついている。
ライネックスの腕にめがけて{ICN0003962#吹雪・弐式}の冷凍ビームが放たれる。ビームサーベルで侵食部分を切り落とす。
「――、すまない」
“油断しないで”
“成るべき接近戦は避けるべきです”
菜織と美幸から通信。「わかった」とアールは素直に引いた。近接装備しかないライネックスでは現状不利だ。
戦況は芳しくない。ドールズの数も相当減らしたが、フィーニクスを侵食して数を増やす。これは単に一体落とされるよりもタチが悪い。一機の侵食につき戦力差が2開く計算になる。
特に厄介なのが、フィーニクスという高機動性能機を奪われることだ。
前にも記述したが、フィーニクスは防衛向きではなく、遊撃に向いている。
“離反したフィーニクスが都市へと抜けます!”
「なにしてんだよ!?」
エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)は罵声を吐いて、フィーニクスをウンヴェッタで追尾する。一体でもオリュンズに行き、『雷霆』を破壊されては負けとなる。
“大丈夫だ。オリュンズには守護者の俺がついているからな!”
オリュンズ外周付近で、朝霧 垂(あさぎり・しづり)の光龍が待ち構えていた。
「守るべき所に兵力を配置しないなんてありえねぇだろう。朔、ヤッちまえ!」
「ソニックブラスター充填開始、音響結界発射します」
夜霧 朔(よぎり・さく)がソニックブラスターを発動すると、郊外近くのビルに取り付けられていたスピーカーからそれと同じ振動波の音波が大音量で発生し、共鳴する。超振動、大音量はそれだけで破壊力を持つ。ソニックブームが発生し、ビルのガラスは砕け、ナノマシンを圧し潰す。
フィーニクスがナノマシンのコントロールを失い不時着する。
「まだよ!」
ここで手を抜く訳にはいかないとクレアは判断。不時着時にフィーニクスが激突したビルをガトリングで倒壊させ、ビルの重みでフィーニクスを潰した。
――オリュンズ ジオフロント
ジオフロントは分厚い防壁に守られて入るが、上で起こった戦闘の振動はここにも伝わっていた。
その振動は避難民の不安を揺さぶった。
「私たちどうなるの……」
「こんなコトころいてダイジョブなのかよ!?」
不安はRAR.の感情制御の枠を超えようとしていた。当たり前だ、幾ら感情の制御がなされていたとしても、間近で死の危険を感じれば不安になるのが人間の感情システムだ。
「大丈夫です。落ち着いて下さい!」
アッシュが不安がる避難民を励ます。
「外であなた達のために戦っている人達が居ます。彼らを信じて待ちましょう」
その言葉は、自分にも言い聞かせるようなものだった。
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