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【重層世界のフェアリーテイル】オベリスクを奪取せよ!(後編)

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【重層世界のフェアリーテイル】オベリスクを奪取せよ!(後編)

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忘念のワイズマン

 敵本拠地内部へと侵入した部隊は2つにわかれた。
 一つは敵の中枢、おそらく全てのドールズを操っている存在を探す部隊。
 もう一つはドールズのデータを探し出し、敵の弱点、そして全ての侵食ナノマシンを束ねる統括ナノマシンのデータを入手する部隊。
 データの回収によって『ハルパー』は完全なものへ至る。統括ナノマシンを止めれば、全てのドールズは動きを止めて、この戦いに終止符を打てる。逆にそれが見つからなければ、オリュンズが滅ぶ事になる。
「こっちだわ!」
 アルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)が持ち前の《トレジャーセンス》で部隊の行き先を示す。お宝の匂いをかぎわけているわけではないが、そこはアーティフィサーとしての感が働いていた。
 しかし、先刻から邪魔も多い。無論それは人ではなく機械人形――アンドロイドによる妨害だった。
「こうもあっさり見つかるんじゃ、潜入の意味はないじゃないの」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が《ライトニングウェポン》付加の《音波銃】で一体をショートさせる。
「潜入したら必ず見つかって戦闘ってのがお約束じゃない?」
 と言って《シーリングランス》を突き出すセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「それは映画やアニメだけにしてほしいわ」とセレンフィリティと返す。
「どっちにしろここの技術力相手じゃ、隠れきれねぇさ」
 ガガ・ギギ(がが・ぎぎ)が内部を見渡す。ここ基地であり、そのシステムは生きている。
「じゃあ、あたしらの動きは敵に丸見えてわけかい? 荒事はもう一方に任せて取るものとって帰ろうじゃん」
 弁天屋 菊(べんてんや・きく)思う。システムが生きているということは、それを管理するモノがいる筈だ。そいつがこの戦いの元凶だろう。と。
「美羽さん、迷惑かけてないでしょうか……」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は別部隊に行ったパートナーの素行による被害を心配する。
「軍事区画というよりも、ここは研究区画見たいね。三船ちゃんここを開けてくれる?」
 アルメリアが一つ開かない自動扉を発見する。システム側からなのか内部からなのかロックが掛かっていた。
「任せろ」
 敬一はパワードスーツの力を持ってドアを無理矢理こじ開けた。
「研究室……ですね」
 淋が内部の様子をカメラに収める。精密機器と数台のパソコンがあり、なかなかに広い空間があった。そしてここに来て漸く人の姿を捉える。だが。
「死体だな……」
 コンスタンティヌスが椅子に座る研究白衣の骸骨を覗き込んだ。
「ロックのかかった部屋に残った研究者の死体か。こりゃアタリかもね」と菊。
「早速調べてみましょう」とセレンフィリティ。
 皆室内の機械やPCを探り始める。
 機械類はオリュンズ製のよりも何世代も古い。どちらかと言うとパラミタ製のモノに近い感じだった。
「あれ、これだけ何にも繋がっていない――」
 ベアトリーチェが見つけたのは、他の機械ともコンセントすらつながっていない一台のノート型PCだった。完全なスタンドアロン。
「電源すらつないでないなんて怪しいわ」とセレアナ。
「他の機械類も室内の蓄電システムにしか繋いでないみたいだし。相当警戒していたようね。ちょっと待って――」
 セレンフィリティは安易にコンセントを繋がないほうがいいと判断し、自前の【機晶爆弾】を取り出した。《機晶技術》と《破壊工作》知識で爆弾を分解、機晶石を連結させてバッテリー替わりにアダプターへ繋げた。
 PCが起動する。しかしいきなり挙動がおかしい事になった。OSが立ち上がるのではなく、プログラムが走り続ける。