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リアクション
殉死のエアフォース
――トロイア基地
ドールズの第一防衛ライン到達予測時間まで後3時間。
整備倉庫、格納庫では急ピッチでバーデュナミスおよび、その武装の点検と搭載が行われていた。
一定期間のテスト運用を終え、フィーニクスはパラミタから輸送された基本フレームと機晶エンジンを使い量産された。
エンジン部分の提供には朝野 未沙(あさの・みさ)率いる、アサノファクトリーが担った。
「十分に機晶石とブラックボックスを運んでおいたからな。エンジンが破損してもなんとかなるはずだ」
飛空艇で物資を運んだアルジャンヌ・クリスタリア(あるじゃんぬ・くりすたりあ)が言う。
「とにかくここからは消耗戦に成るかもだから、十分に予備を揃えておかないとね」
と未沙。
空軍機を殆どフィーニクス量産型に変えて、部隊を構成するとのことだ。敵の数も考えると、事前に多くの準備を有する。フライトオフィサー用のアンドロイドたちにもシステムの点検を整備と平行してやってもらっている。
「出撃前にしっかりと仕上げましょう。整備不良はイコン技術者の名折れですからね」
排気系のチェックをする長谷川 真琴(はせがわ・まこと)。
「初の実戦投入ってのはあたいら整備士にも評価が下されるってことだし、評価をするパイロットたちには一番使いやすくしておかないとね」
乗り手のことを考えて、キャンピー内の点検をするクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)。
「姉さん。前に発注していた【レーザーマシンガン】が届いたですぅ」
朝野 未羅(あさの・みら)が新しい遠距離武装を運搬機で搬入する。
「前に言ってた後方支援兵器なの。後方部隊に配備するの」
AirPADで朝野 未那(あさの・みな)は後方防衛に回る機体を検出する。
「私のにも付けてくれ」
唐突にフィンクスが未那に声を掛けた。
「大将の機体ですか? どれですの?」
未羅の問いに、フィンクスは指して答える。
「『スフィーダ』。君等が鹵獲した機体にだよ。整備は終わっているか?」
「ええ、あたしの見立てでは、十分に終わっているわ。攻撃と機動性が高いから【レーザーマシンガン】との相性はいいだろうけど、防御面が全然だから無茶はできませんよ」
未沙の指摘にフィンクスは「わかっている」と答える。
「指揮官として、落ちるわけにはいかないからな。なに、初期防衛でのフィーニクスの活躍を目の前で見たいだけだ。しっかりと実践での性能を見極めたら、基地の司令室に戻るとする」
「多少壊れてもあたいらが直すから、思いっきり暴れてきてもいいんだよ。大将」
「いうではないか、クリスチーナ。なら、フライトオフィサーとしての仕事を久々にするか」
フィンクスはケージを登り、自らキャンピー内の点検を始めた。
――出撃直前
「何を眺めているのですか、中将」
後方座からアセトが尋ねる。
「ああ、これか?」
マシューはアセトにロケット見せる。ロケットには小さな画像データが嵌めこまれていた。一人の女性と一人の女の子が写っている。
「妻と娘の写真だ。妻が骨董品好きでな、こんな古臭いものに入れて持たせるんだ。画像くらいウィンドウを開けば見られるというのに」
ロケットを閉じて胸元に戻す。
「二人はオリュンズに住んでいると聞きましたが」
「ああそうだ、フィーニクスのパイロット指導で長いこと会えていないがな。前に家に帰ったのは何時だったかな……」
マシューは思い出す限り、パラミタの来訪者をオリュンズに案内した時に家に帰ったのが最後の記憶だった。
「この戦いが終わった後に帰ってはどうでしょうか? お二人も心配しているでしょう」
「そう……だな。だが、勝たなければ、私には帰る場所はなくなる」
「……帰る場所ですか。それがある中将が少し羨ましいです」
二人の乗るフィーニクス試作型がリフトオンし、地上の滑走路へと上昇していく。エンジン指導。武装安全ロック解除。システムオールグリーン。
「なら、アセト。お前の帰る場所はトロイア基地だ。必ずここへと戻れ。お前がここに帰るための最善を尽くせ。勝つことだけを目的とするな。システムは任せる」
アフターバーナー点火。滑走路を駆け抜け、希望の鳥が飛び立つ。
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