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リアクション
「ここに来て、一気に怪我人が増えている! 外で何があったんだ!?」
新風 燕馬(にいかぜ・えんま)が負傷者の治療に追われながら、訝しがる。数の劣勢はわかるが、幾ら何でもいきなりパイロットの負傷者が増えるのはおかしい。それどころか非戦闘員の整備班までも担ぎ込まれている。
「燕馬君。軽傷者は僕とサツキ君で診る。重傷者の手当に専念してくれ」
ザーフィア・ノイヴィント(ざーふぃあ・のいぶぃんと)の言葉に燕馬は頷く。裂傷骨折など、軽手術が必要な人もいる。
「サツキ、麻酔替わりに《ヒプノシス》を頼む!」
「分かりました」
サツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)が痛みに呻く兵士を眠らせる。単に麻酔を使ってもいいが、このほうが手術を受ける側の精神的負担が軽い。
レーザーメスで腕を切開。折れた骨同士が綺麗に繋がるよう、細かく砕けた骨の破片を取り除き、組織再現剤で接合。切開部分を縫合。寝ている患者を開いているベッドへと送り、次の患者へ――。
そして、どうしようもない患者が運ばれてきた。
何をどうしたらそうなるのだろうか、体中が虫食いのように穴を開けて、体の半分以上が消失してなお生きている。そんなパイロットが来た。
消失する箇所の傷の進行は止っていない。
「いけない、ナノマシンの影響だ! 彼を隔離するんだ!」
燕馬がとっさに判断する。《氷術》で彼をナノマシンごと固めた。
「燕馬、どうするの?」
サツキが尋ねると燕馬は答えた。
「前さ、アセトがえげつない冗談言ったろう? 『どうしようもない患者には止めを』って」
現時点ではこのパイロットを助けるすべはない。脳の一部も消失している。解凍すれば侵食ナノマシンでこの場の全員が危ない。死ぬまで見守るか、止めを刺すかしかなかった。
「こう言う時、医者は見殺しにするんだよ、――たとえ息があってもな」
医療班数名の判断も一緒だった。
その患者は別室に移動した。その部屋から一発の銃声が聞こえた。
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