First |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
プロローグ
「すぐ蒼空学園を通じて、空京に対処法を呼びかけてもらうわ!
とにかく、早く連絡しなくっちゃ!」
熾月 瑛菜(しづき・えいな)は叫んで立ち上がった。
「そうよ! 一大事だわっ!」
やはり叫んで立ち上がった小谷 愛美(こたに・まなみ)とともに瑛菜は蒼空学園目指して駆け出してゆく。
「あ、ちょっと待ってよ〜〜! 私も行くから!
とはいえ、警戒のしようがないっていうのがなぁ……」
走っていく2人に声をかけ、加能 シズル(かのう・しずる)は眼を見張る泉 美緒(いずみ・みお)に向き直ると、片手で拝むような仕草をしてみせた。
「ごめん、みんなの分、お金払っておいて。あとで払うよう言っておくから」
「あ……はい」
美緒はこっくりと頷いた。
「おサエちゃん、ありがとうね!」
長い黒髪がさっと翻り、シズルもまた風のように駆けていった。
「大事無いといいのだけど……。
あたしも上空から少し様子を見てきますね。美緒さん、そこにいらしてください」
おサエは不安げに晴れた空を見上げながら美緒にそう言うと、ふわりと空中に舞い上がった。
そのころ、氷の花をばら撒いた魔女が、空中に静止させた箒に横座りして空京の町を見下ろしていた。
「ふふ〜ん。そろそろだわね。さて、どうなることやら」
豊満な体に淡い水色のローブをまとった彼女は、ボブカットの金髪をさっと振り、緑と青のオッドアイをいたずらっぽくきらめかせた。見た目は30歳ほどに見えるが、実際は相当な時間を生きている彼女にとって、今回の悪戯はどういう意味を持つのだろう。退屈しのぎなのか、はたまたなにか訳があるのか。ただの気まぐれなのか。
「あっ! 見つけたわ! 今回の騒動を起こしたのは貴女ね?!
どうしてこんなことをしたの?」
空中に舞い上がってきたおサエが、魔女を見つけて叫ぶ。
「あ〜らいけない、見つかっちゃった〜。 ふふ、捕まえてごらん。
追いかけっこしましょ」
「あ、ちょっと、待ってよっ!!!」
「あはははは! 待てって言われても待てませーん!」
魔女は屈託のない笑い声を上げると、冷たい空気の中をおサエをからかうようにビルの間隙を縫って飛行してゆく。おサエは必死にそのあとを追いかけていった。
そのしばらくの後、各メディアを通じて空京に氷の花の情報と、対処法が報じられた。ほぼ時を同じくして、まだ寒い2月上旬の青い空から、雪片のようなものがわずかに舞い落ちてきた。
「ああ、あれが氷の……花……」
氷の花を見つめて呟くおサエ。空京の繁華街のビルの上に差し掛かったときだった。追いかけっこで力尽き、よろめいて落下しかけたおサエを魔女は笑って抱き上げ、自分の箒の後ろに乗せてやった。
「どうなっているか、そこでしばらく静観してごらん。
お前が思っているほど、悪いことにはならないはずだよ」
「……?」
首を傾げるおサエに、魔女はふっと笑って再び飛行を始めた。
First |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last