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リアクション
「はあはあ……誰も追ってこなくな」
「ぎゃああああああああああああああああっ!?」
息を切らしながらマリアは背後を見た瞬間、遠くから断末魔が聞こえてきた。
「さきほどからずっと、あの調子で断末魔が聞こえてますわ。きっと何方かが押さえてくれているのですわ」
ローズフランがジト目で解説してくれた。
しかし、マリアにとっては居てもたっても居られなかった。
自分を助けてくれているなら、自分も助けに行かなければいけない。そんな使命感のようなものに駆られるのだった。
「それなら、助けに行きましょう!」
「余裕ありありだなあ、マリアさん……だが、こんどこそここがお前達の墓場だよ」
通路の奧から1人の痩せこけた男が現れた。
タバコを吸い、ポロシャツ一枚の男性、マリアには見覚えがあった。
数ヶ月前の「グリーンパーク立てこもり事件」で戦ったことのある男だった。
ただ、違うのはあのときは3人いたはずが、今は1人らしかった。
「誰?」
「私もよく知らない……確か軍人だったはずです」
「ほお、覚えてるか。光栄だね」
「……」
ローズフランは目にもとまらぬ速さで拳銃を取り出すと、男に向けて発射した。
同時に鋭い金属音が地下遺跡を鳴り響いた。
「はっ、マリアさんとは違ってそちらの嬢ちゃんは血にうえてるねえ」
いつの間にか男の手には軍剣が握られていた。
しかも銃弾は、床の上に真っ二つに転がっている。
「あなた……何者」
「ふっ、少なくともグランツ教ではねえ。けど、お前達の見方でもねえ。悪いがお前達に死んでほしいらしいからな依頼主は」
タバコを水道に投げ入れると、男は高笑いしながら軍剣を構えた。
ローズフランはこの男の強さに思わず、身震いを覚えた。
恐怖感やそんなものは、かれこれ数年は忘れていた感覚のはずだった。
「そこまでじゃ」
突然、「ガチャ」という銃をスライドさせる音がマリアの背後で鳴った。
ローズフランは前方の男にも気を配りながら背後にも目をやると、マリアは女性に銃口を向けられていた。
しかし、女性は一向に銃を放つ様子は泣く、「ふう」と一息吐くと笑みを浮かべた。
「馬鹿じゃのー。何も見ず、何も聞かず、ただ従っておれば幸せでおれただろうに」
「その声は……」
マリアは慌てて背後に振り返る、そこには銃を直しこむ神凪 深月(かんなぎ・みづき)の姿があった。
「……私はもう、グランツ教にただ従うつもりはありません。自分の意思を貫くつもりです」
「悪いが、時間はねぇんだ」
痩せこけた男は、マリア達の会話を待つこと泣く、軍剣を構えて突進してきた。
慌ててローズフランが対応に出ようとする。
しかし、それよりも先に強い金属音が鳴り響き、男の足は止められた。
「危ないところだったね」
男の足を止めていたのはコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)だった。
男の軍剣を、コハクの女王騎士の盾が防いだのだった。
「マリア!」
「美羽さんまで、来ていたのですね」
背後から、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が切羽詰まったような表情で走ってきた。
「ねえ、どうしてマリアが指名手配犯なんてなってるの!?」
「おそらくこの指輪のせいですね……グランツ教の一部の人達は、この指輪で力を得る上に、パラミタの人達を洗脳してしまおうとしていたのです。それで私が反発して指輪を持ち出してきたらこうなってしまったみたいです」
マリアは少し笑いながら冗談のように言った。
美羽はそこで、納得いったのか「なるほどねー」と頷いた。
「悪いが茶番はそこまでだ」
「ぐうっ、と、突然強くなった!?」
軍剣を押さえていたコハクは、男の強さに負け素早く後ろに下がった。
「ふっ……今まで共に戦ってきたよしみじゃ、楽にしてやるかのぉ」
深月が腕を上げたり下げたりしながらウォーミングアップすると、男に対峙した。
深月はマリアの前に出ると、マリア達の前に壁を作るように”【常闇の帳】地球人用”を展開する。
そして、同時に”インフィニティ印の信号弾”を男に向けて発射した。
「ぐっ、照明弾か!」
暗い地下遺跡をまばゆい光が照らすと、男は目を腕で隠した。
その隙を狙って、深月は”サンダーショットガン”を放った。
男は数秒間痺れ、身動きがとれなくなる。
「今のうちに先に進むのじゃっ!」
深月が声をあげると、美羽とコハクはあまり動けないマリアを抱えて”バーストダッシュ”しその場から遠ざかる。
「ちっ、やるねえ……おい嬢ちゃん、そこどいてくれないと痛い目にあわせるぞ」
「嫌じゃ」
マリア達の逃げる方向に深月が立ちはだかる。
男は「じゃあ、しょうがねえな」と言い、軍剣を高く振り上げた。
その時だった、深月の肩に乗った黒猫が笑う用に喋り始めた。
「さぁてさて……ここから先は通行止め。そろそろ引き取りを。このまま戻らぬなら……ワタシがあなたに不吉を見せてあげるよ……」
その後ろ姿を、痩せこけた男は素早く追いかけようとするが、
が目の前に立ちはだかった。
「なっ、猫がしゃべ――くっ!?」
男は自分の足元で無数の黒い猫(影のようなもの)がうごめいて居るのを見ると、慌てて振り払おうとする。
そこで男はようやく、体が動かせなくなっていることに気がついた。
「ちっ、何をしやがったこの黒猫」
「ふっ、しばらくそうしておると良いのじゃ」
黒猫、深夜・イロウメンド(みや・いろうめんど)の”アボミネーション”を何とかふりほどこうと無理をしてみるもやはりほどける様子は無かった。
深月達はマリア達を追って暗闇へと消えていった。
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