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リアクション
第1章 追いかける者たち
「まだ、見つからないのか!」
地下水道への入り口の前、そこに屋根を張り、テンプルナイツの中でもそこそこ偉い司祭(と聞いている)、アーベント・グロッグは苛立っているようだった。
もちろん原因は、マリアのようだった。
テンプルナイツ達に捜索を急かすように指示し終えると、司祭は苛立つ気持ちを抑えると笑顔で、待たせていた軍服の男性と大柄な男性に振り向いた。
「いや、すまない。待たせた」
「いえ。トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)です。警察の補完としてお手伝いに参りました」
「同じくお手伝い。魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)です」
代表してトマスは握手を求めるように手をグロッグ司祭に差し出すと、司祭はそれに答えた。
握手を終えると、先に喋り始めたのは子敬だった。
「身内から犯罪者とは大変ですねー?」
「いや、まったくお恥ずかしい限りだ」
「ともあれ、マリアがどのような人物なのかなど教えていただけないと、我々は捜索できません。そこのところ詳しくお聞かせ願いますかな?」
「ふむう。そうか? 地下に逃げ込んだ女性ってだけで十分だとおもうがね」
「もしも、他人を捕まえた場合……つまり誤認捕獲した場合の責任はグロッグ司祭、貴方のせいになりますが良いのですね?」
グロッグ司祭は一瞬むっとした表情を浮かべるが、すぐに目を細めて笑顔を取り繕った。
「そうか、なら私の知りうるマリアについての特徴を話そう」
「では――」
トマスが質問を出すと、グロッグ司祭はマリアの外見的特徴、性格、口調について教えてくれた。
それを子敬だったが、突然「ところで」と言葉をはさむ。
というのも、トマスはある物が気になり、子敬に”テレパシー”で「代わりに会話を続けてくれ」と頼んだのだった。
「マリアさんはどうしてグランツ教を裏切ったのでしょうかね」
「目が眩んだかもしれない」
司祭は含み笑みを浮かべながら答える。子敬はその後も、ならばなどと司祭と会話を続ける。
トマスはその隙に司祭の後ろに歩み寄ると、先ほどから気になっていた物に手を当てた。
それは、古い古文書のようだった。読むことは出来ないが、トマスは”サイコメトリ”で記憶を読み取ることは出来た。
運良く司祭が古文書を手に入れたいきさつが読み取れた。が、衝撃的な物だった。
「ありがとうございます。私達もマリアの捜索に全力を注ぎましょう」
子敬はトマスの合図を受け取ると、司祭に軽くお辞儀した。
「君たちには頼りにしているよ」
見送る司祭を背にして、トマスとは小さく、子敬に話をした。
「彼は、グランツ教のためにパラミタを巻き込んで戦争を起こすつもりだ」
「テンプルナイツは世界統一国家神について広めるのが使命と聞いていたはずですが……」
それはマリアが以前、言っていた言葉だった。
しかし、それに応えること無くトマスは言葉をつなげた。
「……そして、司祭はすでに数人殺している」
サイコメトリで読み取れたのは、司祭が人を殺している場面だった。
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