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逃げ惑う罪人はテンプルナイツ

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第7章 呪詛

「はあ……はあっ……」
 マリアは頬を赤らめ、息を荒げていた。
 ローズフランは頭に手を当ててみると、高熱もあるようだった。
「マリア様の様態はどうだ?」
「過去に同じような人を見たことがありますわ……おそらく呪いのようね」
 早川 呼雪(はやかわ・こゆき)の問いかけにローズフランは神妙な顔持ちで頷いた。
「……マリア様は理由もなくこんな無茶なことはしないはず……どうしてこんなことに」
 呼雪はローズフランが、本当に信用できるのかどうか確かめるために聞く。
 ローズフランはすぐにそれに答えた。
「そうですわね……グランツ教に何か問題が起きた、あるいはマリア自身、グランツ教が危険なのだと気づいたのですわね」
「……」
 どうやら、言動、動きなどからは嘘では無かった。
 呼雪はひとまずローズフランが危険人物ではないかもしれないと判断する。

「おそらく、呪いを掛けてる人は”遠隔呪法”で遠くにいると思いますが……おそらくそう遠くないですわ」
「それだけじゃあ、呪いを掛けてる奴なんて見つけらないと思うんだけど?」
 ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)が聞くと、ローズフランは首を横に振った。
 そして、呼雪を指さした。
「あなたここまでマリアを感覚だけで探してきましたわよね?」
「ああ、”シックスセンス”で」
「それで同じように、呪詛をかけた人物をさがしますわよ」
 それは一か八かの掛けではあったが、今はそれ以外に呪詛を掛けた人物を探す統べが無かった。
 呼雪とローズフランは、マリアをセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)達に任せ、いったん来た道を戻る。

    §

「異常無し……」
「やっぱりあのローズフランって人、ただ者じゃないわね」
「ええ」
 マリアへ近づいてくるモンスターが居ないか周辺へ警戒を張り巡らしながら、セレンフィリティはセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に話した。
 セレアナ自身、何度かローズフランの身のこなしを見て、ただの賞金稼ぎじゃないことは明白だった。
 というより、戦闘経験が普通より長いのではないだろうかと感じられた。
「え、何!?」
 その時だった、突然通路の奧から轟音が鳴り響く。
 すると何かがこちらへと向かっている気配を”殺気看破”によりセレンフィリティは感じ取った。

    §
 ケロベロスに紐をつけたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)と数人の”海兵隊特殊強襲偵察群【SBS】”が巨大スライムの元へとたどり着いた。
 それはローズフラン達が来た道とは別のところからだった。
 ローザマリア達の狙いはただ一つ、京空の警察を動かすためにわざとボスを暴れさせようと考えて最奧を目指していたのだった。

「しっかし、でかいわね。でもこれくらいでかければ警察も動いてくれるわね」
 ローザマリアはスライム達をスナイプで威嚇射撃を行う。
 すると、モンスター達は一斉にローザマリアへと向かって這いずりだした。
 が、巨大モンスターに至ってはまったく動く気配は無い。

 巨大スライムを動かすためには、もっと強い火力が必要だった。
「……少し、命がけになるが……止むを得ない」
 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は素早くスライム達へ近づくと、床や壁に魔力を込めた符を貼付けて行く。
 その間にローザマリアとSBS達が、雑魚スライム達を誘導、戦う。
「少し、暴れ回って貰うぞ」
 程なくしてグロリアーナは符の設置を終えてつぶやくと、ローザマリアに合図を送った。

「待避!」
 ローザマリアは声を上げると同時に、グロリアーナは”滅焼術『朱雀』”で符に着火した。
 巨大な爆炎が上がり、スライム達を燃やし尽くしていく。
 しかし、巨大スライムにはそれがちょうどよい刺激となったようだった、巨大スライムは窮屈な通路の中をゆっくりと這い始めた。

「さて、ここからだな。ことによると命がけの退避行になるやも知れないが」
「そうね」
 頷くと、ローザマリアはすぐにSBSに伝達を頼んだ。
「巨大モンスターを発見。予定以外の規格であり危険なため、出勤要請を」