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逃げ惑う罪人はテンプルナイツ

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逃げ惑う罪人はテンプルナイツ

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第6章 スライムの餌食
「ふう……だいぶ奥まできましたわ」
 地下遺跡の通路を小1時間歩き続け、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)はようやく一息ついた。
 ”裏社会”やトレジャーセンス”などを駆使した上に、”ベルフラマント”で気配を消すことで何とか1人でここまで行動できていた。
 とはいえ、モンスター達に少なからず何度か見つかり、逃げ回ったことがあったのも事実だった。
 そのためにエリシアは一度、休みたいために足を一度止めたのだった。

「あっ……やっめ……ああああっ!!」
 突然、通路の奧から女性の声が響き渡った。
 その声に驚いたエリシアは、声の聞こえてきた方向へと走り出した。
 それが見えたときには、思わずエリシアは声を上げそうになる。
「――どっ、どういうことですの!?」
 目の前には50体は超すであろうスライムの大群がうようよとしている。
 加えて、3メートルはあるであろう巨大スライムまでもが奧にどっしりと腰を据えている。
 しかもその巨大スライムの中に声の主はいた。

 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は今、窮地に陥っていた。
 途中までは賞金稼ぎ達と一緒に行動していたのだが、そこをスライムに襲われここまで運ばれたのだった。
「どうしてこんなこと……あん……え、なそんなところまで、だだめえっ!!」
 服の中へと、スライムが這っていく感触に襲われる。
 といっても、すでに体全体はスライムに包み込まれており、気持ち悪い感触がアリアを襲っていた。 このまま行けばどうなってしまうのか……そんな恐怖感に襲われる。

「あなた、大丈夫!?」
「あ、助け……あっ……だめっっ、みっ、みないでっ」
「そうは言われても……」
 なんとかアリアにエリシアは声を掛けるも、変な反応するアリアに戸惑いを隠せなかった。
 そのとき、1人の人影が目に入った。
「えっ……」
 エリシアはスライムの向こう側に人が倒れていることに気がついた。
 しかも、それがマリアだったためにエリシアは、今の状況が分からずつい混乱した。

 その時だった、”アニメイト”により犬を作りマリアの匂いを追わせシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)がやってくる。
 そして、目の前の幾多のスライムにやはり驚いた。
「マリアは居る……って、なんじゃこりゃ!?」
「どうみてもスライムの大群だね……おや、あそこに居るのはマリアだね」
サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)はシリウスの後ろからスライムを眺めると、真っ先にマリアが倒れているのを見つける。
「マリア!!」
 シリウスが呼びかけるもまったく反応は無い。
 気がつけばスライム達がこちらへと向かって這い寄ってきていた。
「これだと近づくことすら難しそうだね」
 サビクはこちらに気がつき近づいてくるスライム達を、”女王の剣”で切り裂いていく。
 幸い、そこまで強いモンスターでは無いらしく、簡単に倒せる。
 が、マリアを助けるためには、数が多すぎた。

(なんとかしてマリアを助けないといけませんわ……やはりあれしかありませんわね)
 エリシアは苦戦するサビク達を見ながら、打開策を思いついていた。
「シリウス・バイナリスタ、お願いがありますわ」
「ん?」
 エリシアは、自身の考えた作戦をシリウスに話すと、それはすぐに実行に移すことになった。

「おーいスライム達こっちを向け!!」
「こっちだよ!!」
 シリウスとサビクがそれぞれ声を上げると、スライム達はぞろぞろとシリウスに注目した。
「行きますわ!」
 エリシアの声に、シリウスとサビクは目を思いっきり瞑った。
 エリシアはすぐに”インフィニティ印の信号弾”をシリウス達の前に発射した。
 信号団は強い照明弾として、光を放つとスライム達は思わず怯んだ。
 そのすきに、エリシア、シリウスはマリアの元へと駆けつける。

「やっぱり反応はないか……一体どうしたんだ」
「今はさっさとここを脱出しますわよ!」
 エリシアとシリウス達はマリアを抱えると、少し下がったところまで一時撤退するのだった。

    §
「あ、ん……いやあ……もうやあっ――」
 1人、アリアは取り残され、絶望に思わず涙を浮かべた。
 アリアはこのまましばしスライムに体中をいじられ続ける。
「やっ……えっ、わ、私飲み込まれ――」
 そして、終いには静かに、スライムの体内に取り込まれていったのだった。