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リアクション
「ついにあなたにも終わりが近づいて来たわね」
地獄の底のような笑みを浮かべて、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)がギフトの右手を踏み潰した。
グシャッ。
最後の右手は、粉々に砕け散る。
――ついに、赫空の儀式は阻止されたのである。
しかしセレンフィリティの憎悪は、留まることを知らなかった。
「やっと捕まえたわ、八紘零……。あたし、ずっとあなたを探していたのよ? 白馬の王子様への恋に焦がれる乙女のように、ただひたすら、あなたを探してた……。探して、探して、探して……やっと、いま、こうしてあなたの目の前に立っている。こんな素敵なことはないわ。うふふふふ……」
「私に、何をする気だ?」
「そんなの決まっているでしょう。……あたしもあなたに素敵なことをしてあげるためよ。あなたがやった以上に、素敵なことをその身体に刻み込んであげる」
深淵を覗く者は、深淵から覗かれる者でもある。
八紘零を睨みつけるセレンフィリティもまた、すべての精神回路を狂わせたように顔を歪ませていた。
「セレンはこんな……こんな子じゃない!」
ふたりの間に、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が飛びかかる。
「こんなどす黒い狂気を全身に纏わせて、それを叩きつけるような……そんな陰惨な子じゃない! 私の知ってるセレンは確かに怠惰でいい加減で気分屋かもしれない、傍から見ればどうしようもないのかもしれないけど……それでも私にとっては大切な人なのよ!」
セレアナは恋人から奪うようにして、八紘零の胸ぐらを掴んだ。
「殺してやる……お前を絶対に殺してやる!!」
「貴様ごときに、私が殺せるかな?」
「殺してやるわ! 永遠に生まれ変わる気だか知らないけれど……その度に私は! 何度だって殺してみせる! 何度も何度も何度も何度も! お前が生まれ変わる度に殺してやるわ!」
セレアナは、八紘零を地面に叩きつけた。頭蓋骨がひしゃげる音がした。眼球が飛び出し、割れた頭部から脳漿が溢れだした。
八紘零は死んでいた。
それでもセレアナは、零の身体を何度も叩きつけた。
セレンフィリティが狂気の怒りを抱くならば。セレアナが抱いているのは、狂気の愛だったのだろう。
「私にとって……セレンは……とっても大切な人なのよ……」
原型がなくなり、もはやそれが人の形をしていたことすら判別できなくなっても、セレアナは零の身体を何度も何度も何度も叩きつけた。
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