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【2021クリスマス】大切な時間を

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第21章 一緒に

 聖夜。
 一組のカップルが、ヴァイシャリー湖の島に在る、コテージに到着をした。
 沢山の荷物を抱えて、楽しそうに会話をしながら2人は部屋へと入り、ヴァイシャリーで買ってきた料理や、ケーキ、ドリンクを飲んで、イブの一時を過ごす。
「はい、俺からはこれを」
 九十九 刃夜(つくも・じんや)は、白いリボンの巻かれた箱を、堂島 結(どうじま・ゆい)へと差し出した。
「私からは、これ」
 結は青色のリボンが結ばれた袋を、刃夜へと渡す。
 交換し合ったプレゼントの箱と袋を、一緒に期待に胸を膨らませながら開けていく。
「これは……神秘的な感じがするね」
 結からのプレゼントを、刃夜は手に取って、それから自分の首に回した。
「白月のお守り」
 結はそうとだけ言う。
 それは、彼女がオパールを用いて、こっそり作っていたお守りだった。
 ネックレスになっている。
「ありがとう。こうしてかけていると、なんだか安らぎを感じる」
 そう微笑む刃夜に、結も笑顔を向けた後で。
 彼からのプレゼントを取り出して、掌の上に乗せた。
「綺麗……これを付けていると、もっと元気になれそう」
 結も早速、贈り物――ルビーが嵌め込まれたバングルを腕につけた。
 互いと調和し、輝きを放つ宝石を見て、2人は嬉しそうに微笑み合う。

 それから、予約していた貸切露天風呂に揃って向かった。
 勿論、脱衣所にも露天風呂にも2人の他に人はいない。
 薄い電気の光と、月の光が露天風呂に射し込んでいる。
 結からもらった、お守りを大切に外して、変色などさせないようしまうと、タオルを持って刃夜が先に浴場へと出た。
 続いて、結もさびたりしないようにと、バングルを外して巾着の中に大事にしまうと、タオルだけ持って……浴場に出た。

 先に湯船に入って刃夜は結を待った。
 彼女は少し恥ずかしげに湯船に近づいて。
 タオルで髪を押さえると、彼の隣に入ってきた。
 並んで、月と景色を見ながら。
 動いて、向かい合って互いを見ながら、二人はゆっくり日常の話を楽しむ。
「クリスマスやお正月料理も美味しいけれど、この前食べたラーメンもすごく美味しかった」
「この時期は特に美味いよな。結には年越しそばより、年越しラーメンをご馳走した方がいいかな?」
「そうかも」
 刃夜は、ご馳走するよと言い、でもそんな物でいいんだろうかとも少しは思う。
 高級レストランで、プロの生演奏を聞きながら、特別メニューを楽しむクリスマスや正月をプレゼントしたい気もないわけじゃないけれど……。
 きっと、こうして2人でゆっくり過ごす時間の方を彼女は喜んでくれるという確信もあった。
「たまには家で一緒にといいたいところだけど、妹の料理が一向に上手くならないんだよね……」
 同じ両親に育てられた妹である、九十九 昴(つくも・すばる)の料理の腕は燦燦たるものであり、間違っても結に食べさせたくはない。
「皆で一緒に作って楽しむのもいいかもね」
 くすくす、結は笑う。
「あ、そういえばいい茶葉が貰えたんだ。今度一緒にどうかな?」
「喜んで! いつにしよう?」
 家族のことや、ペットの事。
 美味しい食べ物や、行きたい場所。
 次のデートのプランなど、他愛もない話を沢山楽しんで。
 身体が十分温まった頃。
「は……、気持ちいいね」
 息をついて、温泉の心地良さに身をゆだねる結にを、優しく愛しむように見つめながら。
「今日みたいな日をまた過ごす為に、精一杯頑張りたい、かな」
 刃夜はゆっくりと語りかける。
「パラミタには、色んな事件が起きてる。時には、危険な事も沢山……ザナドゥの事だってそうだ」
 結はただ、じっと刃夜を見詰めて、彼の言葉を聞いていた。
「でも、大切な人を守って、こうしてまた一緒に過ごす為にも……僕は、もっと強くなるよ」
 目を細めて、刃夜は微笑んだ。
「結の為にも、ね」
 結の顔にも微笑が広がり。
「はい、わたしも一緒に、ですね」
 言って、彼女が身体を近づけ。
 刃夜は腕を開いて、結の肩に回して。
 彼女を抱き寄せて、優しく、抱きしめて。
「一緒に、ね」
「はい……」
 瞳を合わせ、微笑み合い。
 口づけを交わした。

 身も心も芯から温まっていく。
 2人の影は長い間、ひとつだった。