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リアクション
ピノから抜け出したピノとLINが、まだ何か話している。何を言われているかは分からないが、LINは「そうね、ごめんなさい……」としゅんとして自分の否を認めるような発言をしていた。もしかしたら、叱られているのかもしれない。やがて2人は、フロアから溶けるように姿を消した。ナラカへ帰ったのだろう。
「丸く収まったみたいですね」
緊張感が消えたところで、大地がラスと覚に話しかけてきた。薄青 諒(うすあお・まこと)は憑依されていたピノに駆け寄って「ピノちゃん、大丈夫!? どこか痛い所とか……」と慌て気味に彼女の体調を気遣っていた。シーラ・カンス(しーら・かんす)も「頑張りましたね〜」と労いの声を掛けている。
「……ああ、ありがとう。迷惑かけたね」
「俺達は殆ど見てただけだけどな。ピノが頑張ってくれたから……って、ピノ、本当に大丈夫だろうな。また倒れたりとか……」
はた、とラスはその可能性に気付いてピノに近付こうとする。ルカルカとダリルが歩み寄ってきたのはその時だった。
「誰かが死ぬような結果にならなくて良かったわ」
「サトリが拘束されているのを見た時は何があったのかと思ったがな」
「……色々心配を掛けてしまったね。……でもきっと、もう安心していい」
そう言った覚は、普段の笑顔を取り戻していた。隣に寄り添ってきたリンと、手を繋ぐ。
「サトリ達はこれからどうするの? パラミタに住むなら、歓迎するわよ」
「そうね。私はすぐにでもこっちに移住できるけど……サトリはどう?」
ルカルカの問いに、早くも新生活を想像しているらしいリンは即答した。一方で、覚は少し困り顔になる。
「そうしたいのは山々だが……仕事をほっぽって来てるからな。俺は一度沖縄に帰って、弟に畑の管理や運営を頼んでくるよ。移住するとしても、それからだな」
「おい……うちのマンション、5人で住むほど広くないんだけど……転がり込んでくる気か?」
「まあいいじゃないか。狭ければ新しくどこか探せばいい。金は俺が出すから心配するな」
「仕事引き継いで来るんだろ!? その瞬間にあんた、無職じゃねーか!」
「おにいちゃん!」
楽観的な覚にラスがツッコんでいると、ピノがやってきた。まだ笑顔が戻らない彼女は、彼を見上げて神妙に言う。
「これから、もう、あたし達が急いでやる事ないんだよね。だったら、あたし……もう一回リュー・リュウ・ラウンに行きたいんだけど……いいかな?」
◇◇◇◇◇◇
「ええっ!? どういう事だよそれ!」
「そういう事です。このタイムマシンは教導団で証拠品として差し押さえさせて頂きます」
「差し押さえって……意味が分かんないよ。何でお前らに奪われなきゃなんないんだよ!」
その頃、戻って来たタイムマシンの点検をしていたブリュケはルーク・カーマイン(るーく・かーまいん)の言葉に噛みついていた。対立していた時ならまだしも、協力関係となった今、何故取り上げる必要があるというのか。
「当事者間である程度の和解が済んでいるとはいえ、やはり犯罪は犯罪です。逃亡の手段となりうる物を見過ごすわけにはいきません」
「逃亡!? まだ何も解決してないのにするわけないだろ!」
「それにこれは、盗品の塊です」
「! う……」
他はともかく、盗品と言われたら反論出来ない。持っていかれない為の理屈付けをブリュケが考えていると、ルークは更にとんでもない事を口にする。
「本当は、ここであなたも逮捕するべきなんですよね……俺はそれでもいいですよ。未来の事については放置できませんし、俺達が継続して調査しますから安心してください」
「…………」
ブリュケは不利を感じながらも、抵抗を示そうとルークを睨みつける。
「彼の身柄に関してだが……」
レン・オズワルド(れん・おずわるど)が話に加わってきたのはその時で、レンはルークにこう続ける。ルークは、本気で彼を連行しようとは思っていなさそうだ。だが、何の理由も無く見逃すのも難しいだろう。
「俺がブリュケの身元引受人になろう。教導団にそう伝えておいてくれ」
「レンさんが……ですか?」
「犯罪行為をしたのは事実で、無罪放免とはいかないだろう。俺が後見人になるから、彼を連れて行くのは待ってくれないか」
「それならば構いませんよ。ただし、タイムマシンはこちらで引き取らせて頂きます」
「……必要になったら返してくれるんだろうな?」
2人の話を聞いていたブリュケが、これ以上無い程の渋い顔で確認する。
「……そうですね、勿論です。事態の解決に必要だと判断した時はお返ししますよ」
「……………………」
そしてタイムマシンは、恨めしそうな顔のブリュケに見送られてパークスから旅立っていった。安置されたそれが教導団で使われるのは――
3月も、半ばに入ってからだった。
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