Illustrator:乃希/渡辺悟志
契約者の存在を認識した日本政府は、2012年に契約者とそのパートナーを集め、天御柱学院を設立しました。
ここで教育を受けた日本人とそのパートナーの多くは後にパラミタに渡り、蒼空学園の生徒や教員となりました。
蒼空学園の創設者である御神楽環菜や、
その幼なじみ山葉涼司もこの学院の出身です。
しかし2015年に蒼空学園が創設されてから、天御柱学院の役割は大きく変わりました。
実際にパラミタに渡る生徒は蒼空学園に入学するようになり、日本に残りながらパラミタ問題について取り組む若者が天御柱学院の生徒となったのです。
さらに2018年には、ロシアのウラジオストクにある『極東新大陸研究所』と提携するようになり、ロシアで独自の発展を遂げた技術が導入されました。
2020年、天御柱学院はパラミタ直下に作られた海上都市、海京(かいきょう)に移転しました。
本格的にイコンの訓練が開始されたのも、この年からです。
天御柱学院の校長は、古代シベリアのシャーマンで前女王アムリアナの友人であるコリマ・ユカギールです。
天御柱学院では機動兵器『イコン』の運用を行うための人材を養成しているため、一般的な日本の学校に比べ厳格に風紀が守られています。
2021年9月以降、学院の運営は生徒主導で行われるようになりました。
その中核を担っているのは、生徒会執行部・監査委員会・風紀委員会です。
また、学院の敷地内には精神的に不安定になりがちな強化人間のために、カウンセリングセンターが設置されています。
入学試験を受けて入った者は「本科生」、イコン技術を学ぶために留学してきた生徒は「予科生」と明確に区別され、待遇も異なります。
「予科生」は、希望すれば編入試験を受けることが可能です。
また、2021年9月から普通科が復活し、契約者以外の生徒はそこに通えるようになりました。
しかし、入学には厳しい審査と試験を通らなければなりません。
特に高等部からの入学は一般的な高等学校卒業レベルの学力が求められるため、非常に難しくなっています。
パラミタ直下に存在する海上都市、海京に置かれています。
海京とパラミタは巨大エレベーター『天沼矛』で繋がれており、地球でもっともパラミタに近い都市となっています。
また、海京には地球の最先端技術が集まっており、以下のような区画分けがなされています。
東地区:学生寮、社員寮などが存在する居住区域。
西地区:極東新大陸研究所海京分所・各種研究関連施設や世界各国の大企業のオフィス。
中央地区:天沼矛。
南地区:天御柱学院一帯。校舎、旧イコンデッキ等が存在。
北地区:天沼矛を通じて運搬する物資の搬入、搬出エリア。倉庫や貨物コンテナ、飛行場・港もここにある海京の窓口。
かつては日本政府の影響力が非常に大きかったのですが、2021年のクーデター解決後に海京・天御柱学院の体制が一新され、現在は『行政特区「海京」』として、地球とシャンバラの境界に位置する都市となっています。
中等部3年間、高等部3年間となっています。
中等部は基礎教養課程、高等部は専門課程というカリキュラムが組まれています。
イコンのパイロットを育成するパイロット科、整備を行う整備科のほか、強化人間やその志願者を受け入れ、能力開発を図る超能力科が置かれています。
また、パートナーを持たない地球人・パラミタ人は普通科に入学可能となっています。
学院ではパートナー契約の斡旋も行っており、契約者となれば他の三科に転科することが出来るようになります。
かつては強化人間のための「強化人間管理課」が存在しましたが、現在は解体し、管理棟だった施設はカウンセリングセンターとして使われています。
Illustrator:FBC/ -->渡辺悟志
日本の高校で一般的な部活動の多くが存在していますが、海京は人工の海上都市であるため、広い土地を必要とするスポーツは避けられています。
また海に面しているため、水泳、スキューバダイビング、釣り、ヨットなどが盛んです。
現在、部活動は監査委員会による審査と生徒会執行部による承認をもって認可されたものが正式な活動を認められています。
部活以外では、空京に遊びに行くのが好まれます。
海京と空京をつなぐ巨大エレベーターです。
このエレベーターと海京の建設により、新幹線に頼らずに地球・パラミタ間で物資を運ぶことが可能になりました。
天御柱学院のイコンベースもこの中にあります。
天御柱学院は2021年7月に、イタリアにある契約者養成学校である『聖カテリーナアカデミーと姉妹校協定』を結びました。
アカデミーは、独立武装勢力対策軍F.R.A.G.と提携し、イコンのパイロットの育成を行っている「欧州版天御柱学院」と言える学校です。
交換留学制度があり、また技術交流も行っています。
なお、アカデミーのバックには『教会』がついています。
以前はパラミタに渡り蒼空学園に進学するのが主流でしたが、現在では空京大学を目指したり、日本に残って公務員や大企業を目指すケースが増えています。
また、学院に留まり教官として後輩の指導を行ったり、研究者を目指す者も出てくるようになりました。
天御柱学院で運用されているイコンは、一万年前に造られた最初期のものがベースとなっています。
イコンのモデルとなったのはパラミタの古代種族であり、ヴァルキリーや守護天使の祖であると言われている『熾天使』です。
『龍神族』や『鬼』同様、非常に強力な力を持っていましたが、太古のニルヴァーナとの戦いで滅んだとされています。
イコンが造られた時代は、ちょうど地球とパラミタが今のように繋がった頃であり、
『契約(コントラクト)』によって両者が大きな力を得ることが判明したのも、この時です。
その力を生かすための『器』として、当時の地球とパラミタの技術を結集して建造されました。
地球人とパラミタ人が搭乗しないと力を発揮出来ないのは、「契約者」が運用することが前提となっているからです。
最初は兵器としての使用を前提としたものではありませんでしたが、イコンが秘めた強大な力は、次第に争いに利用されるようになっていきました。
そして、パラミタの正史においては「最初から兵器として開発されたもの」とて記録され、様々な戦闘に特化した機体が造られるようになっていったのです。
イコンの動力は機晶エネルギーであり、内側から発せられるそのエネルギーによって機体・パイロット共に守られた状態になっています。
音速以上の速度を出してもパイロットが平気なのは、契約者の身体能力の高さ以上に、それが大きいです。
また、起動中は対イコン用に造られた兵器以外でイコンの装甲を傷つけるのは非常に困難なものとなっています。
この原理はパラミタの『神』が持つ聖霊の加護に近いものと推測されていますが、詳しいことはまだ分かっていません。
機晶石によるエネルギーにはまだ謎が多いためです。
そして、イコンが基本的に使用しているのは、秘められた力の一部に過ぎません。それを完全に解放し、真の力を引き出すことは「覚醒」と呼称されています。
「覚醒」は絶大な力を引き出しますが、機体の稼働時間が大幅に短くなる、パイロットとしての高い技量がなければ扱いこなせないなどのリスクを伴います。
現在「覚醒」は、個人が自由に使用することは出来ず、コリマ校長の承認が必要となっています。
また、古代のイコン開発者達は「調律者」と呼ばれており、その子孫はイコンの真の力を引き出すことが出来るとされています。
ロボット工学の第一人者であるジール・ホワイトスノー博士主導で研究が行われ、2021年現在、
イコンは発掘当初の機体をベースに現代の科学技術によって発展させた「第二世代機」が主流となりつつあります。
第一世代の技術は全世界に向けて公開され、地球・パラミタ双方の発展に寄与しています。