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リアクション
牙竜からの連絡が届いて直ぐ、船を追跡していた重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)は、機晶姫用レールガンを放った。
続いて、2つの六連ミサイルポッドを一斉に発射する。
「うおっと!」
着弾直前に牙竜はバーストダッシュで船から飛び、リュウライザーの背へと下りる。
「マスターご無事でなによりです」
「ああ、皆のところに行ってくれ」
爆発音を立てて、船の一部が破壊される。
リュウライザーは加速ブースターで加速し、船から離れると河原で迎撃の準備をしている仲間の下へと飛んだ。
「出てきた出てきた、お願いね!」
リリィ・シャーロック(りりぃ・しゃーろっく)が毛利 元就(もうり・もとなり)を背に庇いながら、ヴァイシャリー軍へ協力に向った静麻に電話をかけてこちらの状況を伝える。
軍の配備は始まったばかりで、まだ配置につけてはいないとういうことだった。
「しばらくの間、ここに引きつけておく必要がありそうよ」
リリィは通話を終えた後、遠距離攻撃班に軍側の状況について説明をする。
「先制攻撃、行きます」
頷いた後真理奈・スターチス(まりな・すたーちす)がスナイパーライフルでスプレーショット。
船から飛び出すキメラ達が奇声を上げ、暴れ始める。
船員達は救命具を使って川へ飛び込んでいく。キメラを統率するつもりはないようだった。
「数十匹はいる。全部俺らだけで抑えるのは無理だが、やるだけのことはやるぞ!」
「了解です」
牙竜はマシンピストル、リュウライザーは機晶姫用レールガンで後方からの援護に回る。
「最初に上陸したキメラに挑みます。援護お願いします」
志方 綾乃(しかた・あやの)がさざれ石の短刀を持ち、岸へと下りたキメラに向っていく。
走りこみながら、アルティマ・トゥーレでダメージを与えて、一旦横へと飛ぶ。
「右の頭からじゃ!」
袁紹 本初(えんしょう・ほんしょ)が綾乃の攻撃で動きの鈍ったキメラに、ライトニングウェポンで帯電させた弾を撃ち込んで、キメラの頭部を破壊する。
「次から次に下りてきますね……っ!」
頭を1つ撃ち抜かれ、狂ったように暴れだすキメラへ踏み込んで、綾乃はさざれ石の短刀で、振り上げた前足を切り裂いた。そして、後方に跳ぶ。
「次は左じゃ……あたれ!」
途端、本初の次の一撃が、キメラのもう1つの頭部を半分撃ち抜く。
「凄い生命力ですけれど……これでっ!」
綾乃は再びキメラへ飛びかかり、背を切り裂いて離れる。
「任せろ」
牙竜の声が飛び、銃弾がキメラの最後の頭を撃ちぬいた。
「全体攻撃いきます」
高性能 こたつ(こうせいのう・こたつ)がそう声をあげ、綾乃が離れる。
上陸していくキメラに、離れた位置からこたつがライトニングウェポンで帯電させつつ、弾幕援護。
「数が多いです。でも時間稼ぎはできます!」
続いて、密集して上陸しかかるキメラに、六連ミサイルポッドでミサイルを発射する。
「次のキメラ、行きます!」
綾乃が声を上げて、次に近いキメラへと走りこむ。
仲間の銃撃が止まり、綾乃の刃がキメラの喉を切り裂いた。
「銃撃いきます」
「はい!」
即、綾乃はまた後方へと飛び、真理奈の機関銃による攻撃がキメラに浴びせられる。
「このワタシが相手だ!」
キメラ十数匹が上陸したところで、レイオール・フォン・ゾート(れいおーる・ふぉんぞーと)がそのキメラの中へと飛び込んでいく。
「おおおおっ!」
派手に暴れて、キメラを撃ち飛ばし、蹴り飛ばす。
高周波ブレードを振り、轟雷閃、爆炎波と周囲のキメラに放っていく。
「ギジャ!」
「ギュィ!」
キメラは奇声を上げながら暴れ、レイオールの足に鋭い爪を突き立てていく。ヒョウのような身体を持つキメラはレイオールの肩へと駆け上がり、首に牙を突き立てる。
「ふぬっ!」
レイオールは拳でキメラを殴り飛ばし、巨体ながらも素早く動き回ってキメラをかき乱していく。
「また船が来たぜ、牙竜!」
言いながら、篠宮 悠(しのみや・ゆう)も光条兵器を手にキメラの中へと飛び込んでいく。
刀身2mを越す剣を振り回しながら、レイオールと共に、悠は派手に立ち回る。
「こちらには行かせません」
彼らから逃れ、端へと飛び出たキメラには綾乃が挑んだ。
全て抑えることが出来なくても、軍人が向ってくる場所へ向わせられれば、そちらで対処できるだろう……出来る範囲ならば。
「あんまり無茶するなよ!」
言いながら、牙竜は援護をする手を休めて、リュウライザーと共にこちらに近づく船への潜入をまた試みる。
何隻も来るようだと身が持たない。
「検問にも軍の人が向われるはずなのですが、まだのようです」
戦う皆を見ながら、元就がそう呟く。
「敵側もそんなに何隻も船持ってないと思うし、白百合団の敵研究所襲撃も行われたみたいだからキメラが乗っている船はそう多くないはず! メティスに状況の連絡お願い」
リリィは元就にそう言いながら、諸葛弩で仲間援護していく。
「わかりました」
元就はこれまでの戦況、数、特徴を仮本部にいるメティス・ボルト(めてぃす・ぼると)に連絡を入れる。
そして、こう言葉を続ける。
「こちらでは抑え切れない数ですわ。船に乗っているキメラは統率されていないようです。ただ、暴れ回っておりますわ。出来る限り、軍人が配備される方へ誘導しますが、住民の避難についてくれぐれもお願いします」
「止めよりも、弱らせることを優先します」
全て倒す時間はないと判断した綾乃はそう言い、キメラの攻撃力、移動力を殺ぐよう攻撃を仕掛ける。
万全な状態のキメラを街中に向わせるわけにはいかない。
「あまり近づきすぎないようにの」
綾乃にそう声をかけて、本初は後方からキメラに銃弾を浴びせていく。
「弾が尽きるまで援護します」
こたつは機関銃で援護を続ける。
銃撃で負傷したキメラが、暴れまわっていく。
「永久に眠れ!」
レイオールが重い一撃を上空から放ち、キメラを地に沈める。
「街の方へ一匹抜けそうです!」
真理奈が声を上げながら、走り抜けようとするキメラをシャープシューターで狙う。
「そっちにお前の道はない!」
悠が走りこみ、光条兵器で身体を深く切り裂く。
「また1匹行きます!」
真理奈が散弾銃型の光条兵器「スターバニッシャー」で、キメラの行く手を阻んでいく。
「助太刀するでござる!」
キメラの前に秦野 菫(はだの・すみれ)が躍り出る。本部から援護に訪れたのだ。
「離宮に下りようと思っていましたが、こちらも放っておけませんから」
パートナーの梅小路 仁美(うめこうじ・ひとみ)も、ライトブレードを手に、キメラの元へと走る。
「いくでござる!」
菫は鉤爪で、飛びかかってきたキメラの胸を切り裂いた。
キメラの爪が菫の頬を切り裂く。
「ここを通すわけにはいかないんです!」
仁美がライトブレードをキメラの身体に叩き込む。
菫は一旦後方に飛び、助走をつけてキメラへ走りこみ、背を鉤爪で引き裂いていく。
「頼むでござる」
「お願いします」
「はい、撃ちます!」
2人が飛び退いた途端、真理奈が光条兵器でキメラに攻撃をする。
身体を撃ちぬかれて激しく暴れるキメラに、菫と仁美は走りこんで、傷を負いながらもキメラの首を落とし、急所を突いていく。
幸い、続く船にはキメラは乗っていなかったようだ。
河原にはまだ息のあるキメラが数十匹いる。
少しでも長く、引き留めるために、契約者達は攻撃を続けていく。
「クリスさん、ドウシタノ!」
光学迷彩で姿を見えにくくして尾行していたキャンディスが、路地裏へと下りたクリスに駆け寄った。
「あ……なたは」
クリスは苦しげな顔でキャンディスを見る。
「助けを呼ぼうネ」
キャンディスは箒と一緒に手に入れた携帯電話で適当に電話をかける。
「クリスさんが、気分悪いみたいヨ! 助けに来てネ! 場所は……」
クリスは必死にキャンディスの腕を掴む。
「お願い、やめて……すぐ、治るから」
「大丈夫だヨ。何かあったみたいだけど、ミーも一緒に謝るからネ。なんならミーのせいにしてもいいネ」
その言葉に、クリスは目を瞬かせた。
「パラ実送りになる前に一緒に謝ロウ」
「わかった、わかったから……ほら、キメラ騒ぎで大変でしょ? 助け、呼んできて。私は病院に行くから」
「ミーも一緒にいくヨ! クリスさん苦しそうだから付き添いが必要ネ」
「要らない、大丈夫」
言って、クリスはキャンディスを振りほどいて走り出すが……途中で倒れてしまう。
「クリス!」
キャンディスは急いで駆けつける。
「行かなきゃ、行かなきゃ……。はる、み……」
苦しげな息で、うわごとのように彼女は言葉を発していた。
「クリスとやらの事だそうだぞ、誰か電話の用件が分る者がいるか?」
本部の消火活動後、復旧作業を手伝っていた司が、携帯電話を持って新たな本部となった隣室に顔を出す。
仮本部で会議を行っていた者達のうち、指揮や連絡係を担っているレンや真菜華達もその部屋に移っていた。
「俺が代わろう」
レンが手を伸ばして司から携帯電話を受け取り、キャンディスからの連絡を受ける。
本部ではレンがパートナーのメティスと共に、ヴァイシャリーに飛来するキメラ関係。
エレンが住民避難を主に指揮し、時に同行していた。
春佳は統括として真菜華と共に、ラズィーヤや百合園生への指示を行っている。
「ヴァイシャリー軍の部隊はそれぞれ出発し、配置に着き始めています」
ヴァイシャリー家の一室にて、エミール・キャステン(えみーる・きゃすてん)は多方面から集まってくる情報をメモボードや地図に記し、纏めつつ、ラズィーヤに報告していく。
重要度を判断してもらい、ラズィーヤの指示の必要のない優先度の低いものに関しては、エミールが処理していた。
また、イルマ・レスト(いるま・れすと)が作成した地図が多方面で非常に役に立っている。
「飛来するキメラは南西で討伐に当たっている契約者がおり奮闘しているようですが、キメラの数に対してかなり人数が少ないため、一部を抑えるので精一杯のようです。ヴァイシャリー家西の河原で獣系のキメラ討伐に当たっているグループに関しましては、現在ほぼ河原に留めたまま交戦状態です。長くは留めていられないため、西塔位置にいる隊が討伐に加勢することになると思われます」
「分かりました。引き続きよろしくお願いします」
それだけ言って、ラズィーヤは鳴り続けている電話をとった。
エミールの電話も鳴り響き、彼もまた電話に出ながら資料まとめを続ける。
そんな2人をハーフフェアリーのティアニー・ロイス(てぃあにー・ろいす)はおろおろと見つめていた。
マリザが戦いに出るという話を耳にして、いてもたってもいられなくなり、エミールを頼って尋ねてきたのだ。
入れてはもらえたけれど、2人に話しかける余裕すらない。
だけど、ティアニーはそっと側に寄って、妖精のチアリングで2人を癒していく。
「ティア、なんにもできないけど『いたいのいたいのとんでけ〜』くらいはしてあげられるから」
何も出来ないと言いながらも、2人の変わりに来客の対応や、食事や茶の準備の手伝いなど、できることを手伝っていた。
「あー、やっぱ難しいか」
もう1人。タロー・ボヘミヤン(たろー・ぼへみやん)もラズィーヤの側にいた。
パートナーの八ッ橋 優子(やつはし・ゆうこ)と共にいるアン・ボニー(あん・ぼにー)からの連絡の他、多方面の仲介係として連絡を受けている。
アンからは今のところ良い知らせは届いていなかった。避難状況もあまり良くないらしい。
ラズィーヤとしては、搦め手の対策には別の者が動いているため、伝がないのなら正攻法の対策に力を注いでほしいという意見が出ていた。
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