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リアクション
「ふう、まじめにたたかってしまったな。ほうしゅうはコレデヨイ」
また幼女の姿に戻ったアルコリアが、すっかり力を失ってダレてしまったカヤノをお持ち帰りしようとして、駆けつけた葵とレイナに止められる。カヤノは『雪だるま王国』と縁深いこともあり、二人がやって来たのであった。
「勝手に連れて行かないでよ!」
たちまち、カヤノを巡って取り合いになる。争いはいつ終わるとも知れなかったが、シーマが間に入って(というかアルコリアの前に立って)とりなす。
「アル、そろそろ帰るぞ」
「だいじょうぶだもんだいない!」
何が大丈夫なのか分からないが、ともかくそのような発言を繰り返しつつも最終的には興味を失くして駆け去る。
「カヤノちゃん、大丈夫?」
「んぁ……もう暑い所はカンベンだわ……」
命に別状は無さそうだがかなり消耗しているカヤノを、葵とレイナ、ウルフィオナが交代で背負いながら、ひとまず『雪だるま王国』への帰還を試みる――。
「……そうか。レンファスはあの地で、俺たちを護ってくれるんだな」
『煉獄の牢』から帰って来たサラ、ティティナから報告を受けたケイオースが、理解したように頷く。その後サラとセイランは部屋を後にし、その場にはティティナとケイオースだけが残る。
「あの……ケイオース様。わたくしがレンファス様を鎮めになる時に、もしかして歌ってくださいました?」
あの時届いた光には、ケイオースの力が篭っていたような気がしたティティナが尋ねれば、苦笑してケイオースが答える。
「分かってしまったか。君の声が聞こえたような気がして、セイランに頼んで届けてもらった。君の力になれればと思ったのだが……」
気恥ずかしそうな仕草を見せるケイオースへ、ティティナが花のような笑みを浮かべる。
「ケイオース様がわたくしの歌を聞いて、そして一緒に歌ってくださったこと、とても嬉しく思いますわ。ありがとうございます」
「……そうか。そう言ってくれると、俺も嬉しい。無事に帰って来たことと合わせてな」
「……はい。ただ今戻りました、ケイオース様」
「こ、これは……ケイオースを巡る三つ巴の戦い、勃発?」
二人の様子を覗き見していた月夜が呟き、白花を見る。当の本人は「?」と頭に疑問符を浮かべていた。
「何を見ていらっしゃいますの?」
と、そこにセイランが現れる。今この瞬間を見られてはマズイと誤魔化そうとするが、結局セイランに見られてしまう。
「……ああ、これでしたの。前から知っていましたわよ、お兄様があの方と親しくしていらっしゃるのは」
「そ、そうだったの? ……何とも思わないの、セイランは」
尋ねる月夜に、セイランは少しだけ笑って、そして答える。
「……少しは、妬む気持ちもありますわ。けれどもあの方に邪なものをわたくしは感じませんし、お兄様も楽しそうにしていらっしゃいます。
『妹』としてわたくしは『兄』の幸せを願いますわ」
そう言ったセイランは、光のように輝いていた。
「フィル君。もし良かったらでいいんだけど、私があの時預かった指輪、フィル君にとってどのような物だったのかな?」
『ミスティルテイン騎士団イナテミス支部』にて今回の事件の報告書をまとめたフレデリカは、イナテミスを訪れたフィリップと束の間の休息を楽しんでいた。
「……あの指輪は、母からの贈り物です。母はよくお守り代わりに、僕に指輪を送ってくれました。
もう今では入らなくなってるものもあるんですけど、全部大切に取ってあるんですよ」
遠くを見るような視線、おそらくきっと母のことを思い出しているのだろう、フレデリカは想像する。その視線に、多分聞いてはいけないことがあるような気がして、フレデリカはその話題には触れずに別の話を振る。
「……そんな大切な物、私に預けてよかったの?」
「そう……かもしれませんね。
でも……僕にとって、フリッカさんは大切な方ですから。僕を守ってくれた指輪が、フリッカさんを守ってくれればと思って」
「え……そ、それって……」
突然の言葉に慌てふためくフレデリカ、フィリップが真剣な顔つきになって、言葉を紡ぐ。
「……あれから、ずっと考えていたんです。フリッカさんは僕にとってどんな存在なんだろう、って。
そして気付いたんです、フリッカさんは僕が守りたい存在なんだ、って。……守られることの方が多いかもしれないけれど、それでも守っていきたいんだって。
多分、フリッカさんに告白されるまでは、考えていたつもりでよく考えていなかった。だからあの時、戸惑ってしまった。結果としてフリッカを不安にさせたし、待たせるような真似をしてしまいました。そのことについては謝ります、ごめんなさい」
ぺこり、フィリップが頭を下げる。フレデリカはというと、言葉の意味を咀嚼するのに必死だった。
「……今なら、僕はハッキリと自分の想いを言うことが出来ます。
フリッカさん。僕は、フリッカさんのことが、好きです」
「……!」
『好きです』その意味をいち早く理解した直後、フレデリカの顔が火がついたように紅くなる。と同時に、例えようのない感情が溢れ返り、何て言っていいのか分からなくなる。
「あぅ、うあ……」
言葉にならない声を上げていると、フィリップが手をフレデリカへ向けてかざす。するとひんやりとした冷気が生じ、その冷気に当てられたフレデリカは少しずつ、落ち着きを取り戻していく。
「……フィル君……」
「よかった。フリッカさんのお役に立てました」
笑顔を見せるフィリップを見て、フレデリカは自分の中に沸き起こった気持ちが、嬉しさからくるものだと理解した。
――そうだ。私は嬉しいんだ。フィル君が私の事を、好きって言ってくれたことが。お互いの気持ちが、通じ合ったことが――。
「……フィル君!」
次の瞬間、フレデリカはフィリップの胸に飛び込んでいた。男性にしては華奢な身体つき、けれどどこか頼もしくもある感触を、全身で享受する。
「これから色々あると思います、けれど、一緒に頑張っていきましょう」
「うん……うん!」
嬉しさのあまり涙を零すフレデリカ、その涙を拭い、フィリップが眼鏡を外す。
そして、二人の顔が近付き、唇が重なる――。
「そうですか。私たちのようにはならなくとも、レンファスもまたこの地で暮らすことに決めたのですね」
栗から報告を受けたヴァズデルが頷く。溶岩も揺蕩うもの、その気になればどこへでも行ってしまえるだろうに、レンファスはこの地に留まることを決めた。それはきっと彼の中にも、契約者と交流をしたいという想いがあったからだろう。そのきっかけを作ったのは、栗を始めとした契約者たちだ。
「いつかヴァズデルと同じような姿で、そして話が出来るといいですね」
「ああ、そうだな。それはとても楽しみだ」
いつかそんな時が来ることを、二人は楽しみに思う――。
「ふー、やっぱり我が家が一番ですね。……はて? そういえば何か忘れていることがあったような……?」
自宅に到着したルイが、首を傾げる。
「おぉ、いかんいかん。ガジェットを放置したままじゃった。
ま、どうせあやつの事、放置されて「我輩興奮してきたであるよ」などとのたまっておるのじゃろう」
帰り道、大量の酒をルイに奢ってもらった(そしてルイの財布は空になった)桜華が上機嫌のまま答える。その発言で、皆ノール・ガジェット(のーる・がじぇっと)の存在を思い出した。
「ガジェットさん、ただ今戻りました――」
扉を開けたルイ、セラ、桜華が見たのは、長い縄で自らを縛った挙句吊り下がっていたノールの哀れな姿だった。
「……あぁ、世界が見える……新たな扉が今ここにっ!」
どうやらミーナとコロンがこことは違う世界に案内してくれる前に、さっさとあっちの世界に飛び込んでしまったらしいノールに等しく冷たい視線を送って(ルイのはそれでも暑かったが)、そっと扉を閉める。
「……ん? 今何か、我輩を超興奮☆ させる視線を感じた気が……。
まぁいいのである。しかしこれはヤミツキになるであるな……」
それからほぼ3日ほど、ノールは『我流緊縛吊るしプレイ』を楽しんだのであった。
「博季くん。私ね、今回のことで自分の力不足を実感した。
力の使い所は難しい、それは私にも分かってるつもり。……でも、今のままじゃ博季くんに守られてばっかりになっちゃう。それは、私が苦しいから」
イルミンスールへの帰り道、リンネが心情を博季に吐露する。レンファスと交流を交わすことは出来たものの、調査の時に出くわした怪物に全く及ばなかったのを、気にしているようだった。
「僕に出来る事があるなら、何でも行ってくださいね。
リンネさんの思うこと、望むものを叶える、それが僕のするべきことだと思いますから」
「うん、ありがとう、博季くん。そうだな……まずは特訓に付き合ってほしいかな」
これから何が起きるか分からない。『未来からやって来た世界樹』、ミーナとコロンは、契約者をどの世界へ連れて行くのだろうか。
「……それでも、不安は感じないんだ。私たちならきっと出来る、そんな気がするから」
地平線から昇る太陽を見つめ、リンネが口にする。そうですね、と博季が同意の声を漏らす。
それでも彼らは、契約者は、『戦いを終わらせるための戦い』を、為していくことになるだろう――。
『五精霊と守護龍〜出現、『炎龍レンファス』〜』 完
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担当マスターより
▼担当マスター
猫宮烈
▼マスターコメント
猫宮です。
『五精霊と守護龍〜出現、『炎龍レンファス』〜』リアクションをお届けします。
・『煉獄の牢』にて契約者は無事、『炎龍レンファス』を鎮めることが出来ました。
レンファスはヴァズデルやメイルーンのように、人の姿を取ることは出来ません。ですが『煉獄の牢』に行けば、話をすることは出来ます。
・閉じ込められた契約者は無事、助け出されました。
情報も、少年(後に『ミーナ』と名付けられた)を通じて参加した契約者、及び世界樹イルミンスールの生徒たちは知らされています。
・怪我をされた方も、リアクションで特別な描写をされている方を除いて、重傷化することなく完治しました。
・今回の事件を引き起こしたのは、彼ら曰く『未来から来た世界樹』でした。
彼らは自分たちの世界のこと、世界樹イルミンスールのこと、コーラルネットワークのことなどを話し、『世界樹が最終的に解決した事件を代わりに解決してほしい』とお願いをしてきました。
今後、イルミンスールのシナリオは『ミーナ』と『コロン』が開く『こことは違う世界』での事件や戦いを『代わりに終わらせるため』に奮闘する……という展開になっていくものと思われます。
お付き合いいただけますと幸いです。
それでは、次の機会もまた、どうぞよろしくお願いいたします。