天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

五精霊と守護龍~出現、『炎龍レンファス』~

リアクション公開中!

五精霊と守護龍~出現、『炎龍レンファス』~

リアクション

「ぬぅ……! この熱気、そして迸る力。これが炎龍か!」
 吹き付ける熱風を全身に浴び、流石のグレート・ドラゴハーティオンも後退を強いられる。
『我はワクワクしてきたぞ! あの龍は間違いなく強い、我には分かる!』
 龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)の、おそらく目をキラキラと輝かせながら言っているであろう声が聞こえてくる。
「それは私も理解している。だが何故だろう、かの龍は苦しんでいるように見えるのだ」
 辺りに熱波という力を振りまきながらも、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)の見る炎龍レンファスは、ただ敵意を露わにしているだけには見えなかった。
『判っている判っている、やりすぎてはいかんというのだろう?
 大丈夫だ! アレならきっとどれだけ殴っても『やり過ぎる』と言う事にはならん!』
「いや待てドラゴランダー、どうしてそのような話になる?」
『細かい事は気にするなハーティオン! よぉし、我、楽しんじゃうぞーっ!!』
 既に全力全開で戦う気満々のドラゴランダーを引き止めるのを諦め、コアは地上のベースキャンプで情報の統括を行っているはずの高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)にこれからの方針を確認するべく連絡を取ろうとする。だが通信はうまく繋がらず、しかも今になって気付いたことだが、装着していた地上に映像を送るカメラが先ほどの熱波で消え去っていた。
(くっ、ここからは私が判断しなくてはならないというわけか。
 確か仲間の通信では、炎龍と交流を試みようとする者たちがこちらに向かっているという話だったな)
 炎龍と戦うことに臆したつもりはないが、無用な戦いは避けるべきと判断したコアは、彼らが到着するまで主に炎龍の周りを飛ぶマグマフィーチャーの相手をすることを決める。
「心は定まった! 行くぞ、ドラゴランダー!」
『グオアアアッ!』
 コアの言葉に雄叫びが返り、『グレート・ドラゴハーティオン』は炎龍への道を切り拓かんと進み、現れたマグマフィーチャー、そしてその奥の炎龍へ向けて名乗りを上げる。
『我が名はグレート・ドラゴハーティオン!
 炎龍レンファス! 私の仲間達を守る為、すまんが手荒く行かせてもらうぞ!』

 名乗りを終えた『グレート・ドラゴハーティオン』へ、マグマフィーチャーが炎を纏い突撃してくる。
「フリーズ・ビィィーーームッ!」
 そのマグマフィーチャーに対し、『グレート・ドラゴハーティオン』は胸の辺りから冷凍光線を発射し、その場に氷漬けにしてしまう。
「ドラゴ・クローナックルッ! とあーっ!」
 両手にハサミ状の武器を装着した『グレート・ドラゴハーティオン』の渾身の一撃が、氷塊と化したマグマフィーチャーの眉間を貫き、無数の欠片へ砕け散らせる――。

「ああっ! 映像が途切れたわ! ちょっとハーティオン達、大丈夫なの!?」
「私に聞かれても、判らない、としか言いようがないな。……しかし、これはとんでもないものを掘り当てたな」
 ラブ・リトル(らぶ・りとる)の慌てた声に、まだ冷静を保っている鈿女が返す。
「判らないって――、まぁ、確かに判らないわよね」
 思わず言い返したくなったラブだが、鈿女の横顔がそれまでの茶化したようなものでなく、至極真剣なのを見て言うのを止める。彼女は彼女で、コアやドラゴランダーのことを心配しているのだ。
「情報がほしい所だけど、ハーティオンからは期待薄よね。他の人達はどうしてるかしら。
 後は、脱出のための準備と、もし戦いが長引いた場合の補給や整備の確保ね。今この状況でセカンドラウンド……考えただけで恐ろしいけど、対策はしておくべきね」
 端末のキーボードを叩いて情報の収集に当たる鈿女を見、ラブは自分に出来ることを考える。その結果、自分にはこれが一番だろうと両手にポンポンを装備し、炎龍と対峙するコアや他の者たちへ向けた応援を行う。
「それフレーッ! フレーッ! みーんなー♪
 頑張れがんばれみーんな!」

 チアリーダーのように応援をするラブを見、鈿女は口元に笑みを浮かべつつ作業に当たる――。


(大体の挙動は、先の戦闘で掴めている。あの奥に居るのが炎龍か。
 彼に話を聞くことが出来れば、何が起きたか――うっ!)
 マグマフィーチャーをレーザーバルカンの掃射で退けたシュヴァルツ・zwei、その搭乗者であるグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)がそこまで思いかけた所で激しく咳き込み、口元を抑えた手には自らが吐き出した血が付着していた。
(ぐ……か、体が……。だが、ここで……大人しくなど……!)
 グラキエスの左目に模様が走ると、力が入らなくなっていた全身に再び力が戻り、『シュヴァルツ・zwei』も機動を取り戻す。目前に迫っていたマグマフィーチャーをギリギリの所で避け、追撃に飛んできた溶岩も避け切り、バルカンを頭部に叩き込んで沈黙させる。
(エルデネストと……ツヴァイを巻込んだのは、俺だ……。何も分からないまま、倒れる事も、二人を帰せなくなる事も……絶対に、あってはならない……。
 炎龍……たとえ無理矢理にでも、鎮めさせて貰う……!)
 苦痛に顔を歪ませつつ、グラキエスはモニターに映る炎龍を見つめる。時たま吐き出す溶岩は『マグマフィーチャー』へと変じ、同時に熱波を浴びせかけてくる。いかなイコンの装甲をもってしても、まともに浴びれば無事では済まないだろう。
(決して、見切れない攻撃じゃない……全て、避け切る!)
 全攻撃回避、を念頭に、グラキエスが『シュヴァルツ・zwei』を立ち回らせる――。

(おやおや、私の意志で付いて来たと言うのに……。
 まあ、そこまで気になさると言うのであれば、その分は見返りに上乗せさせていただきましょう。
 今回は戦闘も激しいですから、どれ程頂きましょうか……ふふ、楽しみですね……)
 グラキエスの意思を感じ取ったエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)が口元に笑みを浮かべ、操縦全般のサポートに徹する。どこまで彼の身体が持つか分からないが、おそらく全てが終わるまでは持つまい。その時が自分の出番だ。
(グラキエス様、どうかその時までは自らのご意志で戦いください。私が最大限サポート致しますので)
 後のことを思えば一時の労働も苦ではないと、エルデネストは微笑みを絶やさぬまま戦闘を続ける。


(一時はどうなるかと思ったが、キャロライン機が管制を引き継いでくれたおかげで、連携が回復しつつあるな。
 『サークル炎塊』による炎龍への接触も準備が進められていると聞く。状況は好転しつつあるぞ)
 絶対零度の冷気を放つ氷剣にて、マグマフィーチャーを斬り伏せたゼノガイスト、その搭乗者である柊 真司(ひいらぎ・しんじ)が周囲の状況を確認し、過度に張り詰めていた精神を少しずつ解いていく。崩落の発生と炎龍の出現によりイコン部隊は管制機のロスト、大量のマグマフィーチャーへの対処という事態に遭遇したものの、最大の危機は脱したと見ていいだろう。
「ヴェルリア、機体の状況は?」
「えっと……どの数値もまだ安全領域、です。予想していたより消費が抑えられてますね。
 回復支援もありますし、もうちょっと無茶しちゃっても大丈夫な感じです」
 ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)の報告を受け、真司はこれまで取っていた戦術に一つ追加を試みる。
「シールドを展開。マグマフィーチャーに対し強襲突撃を実行する」
 真司が告げた直後、『ゼノガイスト』の両肩に高出力のビームシールドが展開される。実際の羽のように揺らぐそのシールドをなびかせ、真司は他のイコンへの攻撃で気が逸れているマグマフィーチャーをターゲットに指定すると、ブースターを噴かして高速接近、振り向いたマグマフィーチャーの頭部をシールドで切り裂く。
「敵機沈黙。お見事です、真司」
「シールドにはこんな使い方も出来る、覚えておけ。……その経験が生かされることは、二度とないと思うがな」
 溶岩の海に落ちていくマグマフィーチャーだったものへ手向けの言葉を放ち、真司は次のターゲットを指定する。『ゼノガイスト』は速度を維持したまま数体のマグマフィーチャーに強襲突撃を見舞い、短時間で効率的に沈黙させていった。


(ふむ、マグマフィーチャーの数が減った今が頃合いか。そろそろ炎龍に目覚めの一発でも見舞ってやらないとな。
 いつまでもマグマフィーチャーを量産されてもこちらが疲弊するばかりだ)
 氷の刃でマグマフィーチャーを退けた絶影、搭乗する紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が状況の変化を察し、活火山を思わせる『炎龍レンファス』、その全貌をを見つめる。長い首を振り向け熱波を放ち、胴体からは絶えずマグマフィーチャーが出現する。と、唯斗はマグマフィーチャーの出現位置が固定されていることに気付いた。その出現位置に『目覚めの一発』を叩き込んでやれば、こちらの負担を大きく減らすことが出来るだろう。
「エクス、あの技を使う。『九重』の制御を任せる」
「うむ、任された。存分に行け!」
 同じく搭乗するエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)に背部のブースターでありウェポンバインダーである『九重』の制御を託し、唯斗はちょうどマグマフィーチャーを沈めたカヤノの元へ向かう。
『なぁカヤノ、そろそろあの炎龍に『目覚めの一発』を食らわせてやるべきだと思わないか?』
「……それもそうね。で? あなたがそう言うからには、何か手段を考えてあるんでしょ?」
 話に乗って来たカヤノへ、唯斗が作戦の概要を話す。
「お前が今創り出せる限界サイズの氷塊を頼む。撃ち出せなくて良い、それは俺がやる」
「とにかくおっきなの作ればいいのね? 分かったわ! 言ったからにはちゃんと受け取りなさいよ!」
 カヤノが両手を掲げ、その間に氷塊を生み出していく。膨れ上がる力を察知したか、随分と数を減らしたマグマフィーチャーが阻止するように接近を試みるも、その前に文字通り『忍び寄った』『絶影』の必殺の一撃で溶岩に葬られる。
「あの技のためにも、感触を掴んでおかねばな。どうだ唯斗、わらわは上手くやれているか?」
「あぁ、上出来だエクス。……さて、カヤノの方も準備が出来たようだ。総仕上げ、行くぞ」
 マグマフィーチャーの眉間に刃を突き立て、唯斗は『絶影』を氷塊……イコンの全長以上に成長したそれに取り付かせる。
「いいぞ、エクス。『補陀落山おろし』だ!!」
「『九重』、全門最大出力! 今の絶影に投げられぬものなどない!」
 両腕でしっかりと氷塊をロックした状態で、『絶影』は背中のブースターを噴かして自身をその位置で回転させる。ハンマー投げの要領で回転を加え、そして投げ込む方向――人間にとってどの位置に当たるのかは謎だが、活火山の姿をした炎龍の、噴火口――と身体を垂直に持っていく。
「これで、頭を冷やしてこい!」
 『絶影』の手を離れた氷塊は、炎龍の噴火口目掛けて飛ぶ。何としても阻止しようと残り全てのマグマフィーチャーが体当たりを行うが、全てを凍りつかせる冷気で出来た氷塊は、体当たりをかましてきたマグマフィーチャーすらもその場で固め、自らの一部に変えてしまう。
 ……そして見事、氷塊は炎龍のマグマフィーチャー出現位置に飛び込み、多数のマグマフィーチャーを押し潰して口を完全に塞いでしまう。