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リアクション
第4章
休憩が終わり、夜の部が始まる頃には日はすっかり落ちていて冬の済んだ空気が寒さを余計に増していた。
■ふたりは魔法少女マジカルシスターズR■
学校が終わり、下校している小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)とホイップ。
制服は前回のヒーローショーでベアトリーチェが作ったものと同じだ。
そう、この話しは前回のヒーローショーで演じられた『ふたりは魔法少女マジカルシスターズ』の続きなのだ。
お客さんも前回来てくれていた人達を何人も見かける。
「もう! 嫌んなっちゃう! あの先生、私ばっかり当てるんだもん。数学苦手なのに……」
「まあまあ」
ぷりぷりしている美羽をホイップが宥める。
「子供達からプレゼントを全て奪いつくすのです!」
そんな日常は直ぐに壊され、目の前ではなにやら悪事を働いている輩がいた。
トゲトゲが沢山付いた赤地に白のファーを大量に使用した衣装を着たサタンクロスを演じているベアトリーチェだ。
ベアトリーチェはエキストラ雑魚敵を使い命令を実行させている。
子供達がもらったプレゼントを奪っている。
「なんて事を! 許せない!」
「美羽さん!」
「うん!」
2人が頷き合うと舞台の袖から大量のスモークが出て来て2人の姿を隠す。
スモークがなくなると変身が完了していた。
フリルとレースをふんだんに使用したミニスカドレスだ。
変身の姿が現れると観客の大きなお友達から歓声が上がった。
「そこまでよっ! 魔法少女マジカル美羽が相手するわ!」
「これ以上子供達を泣かすのは許せないんだからっ! 魔法少女マジカルホイップもお相手よ!」
美羽とホイップはベアトリーチェへと叫んだ。
「きゃーっ! もう見つかっちゃいました。あとは任せましたよっ!」
なんとベアトリーチェは集めたプレゼントを全て雑魚敵に任せて逃走してしまった。
残った雑魚敵は全部で20体。
任された事を遂行しようと魔法少女達に近寄って来る。
「なんて卑怯なの! でも、プレゼントをこいつらに渡したんだから、こいつらを片付ければ返してあげることが出来るよね」
「うん! 頑張っちゃおう!」
2人は笑い合うと戦闘を開始した。
「マジカルバスター!」
美羽の必殺技が発動した。
手近の敵を掴むと担いでジャンプ。
そのまま、他の敵がいるところへと落下して被害を大きくする。
「マジカルドライバー!」
ホイップの必殺技は敵を掴んでジャンプすると、一番高いところで敵をぶん投げた。
投げた場所は勿論、雑魚敵が固まっているところ。
「いくよっ! マジカルホイップ!」
「うん!」
2人は呼吸を合わせる。
「マジカルドッキングーーー!」
2人で敵を掴むと空中で互いの技を合体させ、敵を叩きつけた。
雑魚敵など相手ではなかったのだ。
「プレゼントは子供達に返しもらうから」
「もう悪い事しちゃダメだからね?」
美羽はプレゼントの入った袋を担ぎ、ホイップは敵へと釘を刺した。
「これから子供達のところへ行くよー! 今日も応援してくれて有難うーー!」
美羽は客席へと叫んだ。
「マジカル美羽ーーー!」
「マジカルホイップーーー!」
お互いのファンから声援をもらい2人はお辞儀をしてお礼をしたのだった。
■月光蝶仮面■
辺りは暗く、満月が出ている。
「きゃーっ!」
舞台からはホイップの悲鳴が聞こえてきた。
「大人しくしろっ! オレの恋人にしてやるって言ってるんだ! 光栄だろう!?」
そんなホイップを無理矢理手篭めにしようとしているのは、最近この辺り一帯を占領している上澤 菊茶(かみざわ・きっさ)だ。
「むっ? あれは……探していた相手が見つかったようですね」
その様子を遠くから見つけた鬼崎 朔(きざき・さく)はそっと闇へとまぎれた。
「やめて下さい! 私には心に決めた人がいるんです」
「そんな奴より絶対オレの方が良いって。満足もさせてやるからさぁ!」
「嫌ですーっ! 誰かーー!」
「へっへっへっ……叫んだって誰も来るわけがない。オレにここで逆らえる奴なんかいないからな」
悪役面でニヤッと笑い、ホイップを見た。
とうとう地面に押し倒されてしまったホイップ。
ぎゅっと目をつむり誰かの助けを待つしかない状況だ。
すると後ろのほうでドサリと何かが崩れ落ちた音がした。
「何だ!?」
不審に思い、菊茶は立ちあがり確認しようと動いた。
すると、次々お付きの者が倒れて行く。
「一体何が……!?」
じっと、何が起こっているのか見極めようと目をこらす。
「貴様をずっと探していた」
突然、菊茶の喉元にトミーガンの冷たい感触が伝わった。
菊茶の背後に居たのは朔だ。
「言えっ! あの子をどこに封印した!」
「くっ……くっくっく……それを簡単に教えるほどオレは馬鹿じゃないよ。そうだなぁ……まずはこの銃を下ろせよ。そしたら考えてやるかもしれないぜ、月光蝶仮面よぉ」
「そう言って教えるつもりなどないのだろう? さあ、吐け! 喉に花を挿せる素敵な穴を開けてやろうか? そしたら汚いお前も少しは綺麗に見えるかもな」
「オレを殺せば永遠に封印場所が解らないぜ? それでも良いのならどうぞ? オレってばカッコイイ花瓶になるだろうなぁ」
どうぞ? と腕を広げて見せる菊茶に朔は苦虫を噛み潰したような顔をした。
突き付けていた銃をゆっくりと下ろす。
菊茶は下ろされたのを確認するとクルリと体を反転させ朔から離れ、向き合う形を取った。
がくりとうなだれる朔を見つつ、菊茶はカルスノウトを構えた。
「そのままお前も死んじゃえよ」
そう言うとカルスノウトで切り付けてきた。
「くっ!」
間一髪のところをトミーガンで受け止めた。
金属のぶつかりあう音が闇に溶け込んでいく。
「良い表情だよなぁ! ここで果てるには惜しいぜ! オレの腕の中で果ててみる気はないか!?」
菊茶の攻撃が重くなる。
「冗談!」
それをなんとか跳ね返し、後ろへと飛び間合いを取った。
「やはり……あの子がいないと……」
そう朔が呟いた時だった。
「月光蝶仮面様〜! 封印の場所を突き止めて解いてきたであります〜!」
なんとも嬉しげな声が響いた。
月光蝶仮面のファンスカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)だ。
その声に顔を上げると、泣きだしそうな顔をした。
その後ろには月光蝶仮面の懐刀、封印されてしまった十字紋のカリンブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)が居たのだ。
「ちっ! 余計な事を!」
「月光蝶仮面、受け取ってーー!」
ブラッドクロスは取り出した十字紋入り短剣を朔へと投げた。
それをしっかりと受け取ると、その感触を確かめるようにしっかりと握った。
「今までの分までたっぷりとお礼をしなきゃな……」
朔は菊茶へとにじり寄る。
覚悟を決め、菊茶もカルスノウトを構え直した。
2人の剣がぶつかり合い、火花が散る。
つばぜり合いを制したのは――朔だ。
体勢が崩れた菊茶を切りつけた。
「ぐっ……オレの方がおまえの腕の中で果てることになるとはな……ぐはっ」
言い残すと菊茶は地面に、どうと倒れ込んだ。
「貴様を果てさせることが出来て、本望だ」
近寄ってきたブラッドクロスから鞘を受け取り、復讐の刃を収めたのだった。
「さて……可愛いお嬢さん、大丈夫ですか?」
朔は襲われていたホイップに手を伸ばす。
そのおびえた顔へと触れぬくもりを確かめさせる。
「ありがとうございました。これでこの地域ももっとマシな領主が現れるでしょう」
本当に嬉しそうな笑顔を朔へと向けた。
「じゃ、行きましょうか」
「へっ? いったいどこへ……?」
「可愛いのでお持ち帰りを――」
「何してるのーーーっ!」
ホイップを本気でお持ち帰りしようとする朔をブラッドクロスがウォーハンマーで殴りつけお星様へと変えてしまった。
「月光蝶仮面様ーーー! 待って下さいでありますーーー!」
スカサハはそれを追いかけて行ってしまった。
「えと……あの……?」
「もう大丈夫だからね! ボクも追いかけなきゃ! バイバイッ!!」
手を振りブラッドクロスも走り去ってしまった。
「ふふ……ばいばい」
ホイップは後ろ姿を見つめながら手を振り返したのだった。
■サキュバス三姉妹■
狼に乗った三姉妹がホイップを探しまわっている。
「ふふ……前回は散々だったらしいじゃない、エンプレスお姉さま?」
末の妹ブラック・リリス役の崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が長女クリムゾン・エンプレス役宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)に話しかけた。
亜璃珠は極限まで露出度を高めたドレスに胸や局部を毒蛇で隠している。
「前回は不覚をとっただけよ。今回はホイップに負けないわよ」
祥子は深紅のビキニアーマーにハイヒールを履き、鞭を装備していた。
「エンプレスがやられたのはホイップじゃなかった気がしますけど……そんな細かい事はどうでもいいのですわー!」
生地のかなり少ない黒革のビスチェ風レオタードを着て、楽しそうにしているのは次女のリリウム・リリム役ロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)だ。
暫く走っているとホイップを発見した。
「魔法少女ホイップ! 今日こそ倒してあげるわ!」
祥子は狼から降りるとホイップの足元へと鞭を振るった。
「きゃっ!」
続いて亜璃珠とロザリィヌも狼から降り、ホイップへと対峙した。
「この子がホイップですわね……可愛くていじめたくなっちゃうわ」
亜璃珠がホイップを上から下まで視線を這わせる。
「本当……可愛くて食べてしまいたいですわ〜」
ロザリィヌも賛同の意を表す。
「あなた方が悪名高いサキュバス三姉妹ね!」
ホイップは杖を構える。
「あらあら……攻撃しても宜しいの?」
そう言った亜璃珠の傍らには、客席から狼によって連れてこられた久世 沙幸(くぜ・さゆき)が居た。
「人質だなんて……」
「ひゃぁっ!」
沙幸は狼に顔をペロリと舐められると変な声を出した。
「動いちゃ……だ・め・よ」
亜璃珠は動くことの出来ないホイップへと近付くと自分に巻き付いている毒蛇をホイップへとけしかけた。
胸や局部を隠していたので、かなり際どい事になっている。
蛇は太もも、股下、ウエスト、胸の谷間を通り、ホイップの顔の前で舌をチロチロさせた。
「うぅっ」
そして、腕へと頭を持っていくとゆっくりと牙を食いこませた。
「あぅっ」
苦痛に顔をゆがませる。
「うふふ……体の自由はもうないわよ? さあ、会場の皆様も見たいでしょう……いたいけな魔法少女が、蹂躙され! ○○され! ×××される様を!」
「うぉぉぉぉぉーーーーっ!!」
亜璃珠が客席へと問いかけると物凄い反応が返ってきた。
会場がびりびり揺れる。
「今度は、わたくしの出番ですわね」
亜璃珠は蛇を退かせると後ろへ下がった。
代わりにロザリィヌが妖艶な笑みを浮かべて、脱力しているホイップの元へとやってきた。
退かせた蛇は今度は沙幸へと巻き付いていた。
「わっわっ! そ、そこはダメなんだからねっ!」
太ももへと差し掛かった時、抵抗を見せたが無駄に終わったようだ。
「その状態は辛いでしょう? 今、わたくしが毒を吸い出してさしあげますわ」
真っ赤なルージュが引かれた唇を自分の指で軽く触れると、その触れた指をホイップの唇へと押し当てた。
力の入らないホイップは地面へとへたり込んでいる状態だ。
その後ろへ回り込み、ホイップの体へと手を這わせていく。
客席からは唾を飲み込む音が聞こえてくるようだ。
ロザリィヌの右手は太ももを上下に撫で上げ、左手はウエストをしっかりと抱きよせている。
そして、唇は首筋に幾つもの赤い花を咲かせ、だんだん蛇の噛んだ腕へと降りて行く。
「ぁ……やぁっ」
ホイップの頬は赤く上気し、甘い吐息が漏れた。
太ももをさすっていた右手は上へと移動し、今度は胸をまさぐり始めた。
「うふふふ……楽しんでもらえてるかしら?」
ロザリィヌは一度ホイップの肌からくちびるを離し、耳を甘噛みした。
「ひゃうっ」
一通り反応を楽しんだあと、ロザリィヌは自分の言葉通り毒の場所へと口を持っていき、毒を少し吸い出してやったのだった。
「最後は私の鞭をヒールを味わわせてあげる」
名残惜しそうにロザリィヌはホイップの元を去った。
未だに動けずにいるホイップを祥子は見下ろし、鞭を一舐めする。
「楽しくなりそうね」
祥子は客席に向かって鞭を振り下ろし、その音で観客達をビクリと震わせた。
「良い音……。ところで、このヒールを受けたい者はいるのかしら?」
祥子が言うと一斉に手が上がった。
勿論、声も半端ではない。
「お黙り!」
鞭を振るい、黙らせる。
「私のヒールをそう易々と受けられると思っているの?」
「思っていません! エンプレス様!」
声が怖いほど揃っている。
「そう……良い子ね。では、今からする事を自分に置き換えて夢を見るのは許してあげる」
「ありがたき幸せですっ!」
またしても、声が綺麗に揃っている。
その様子を確認し、祥子はホイップへと向き直った。
「きゃっ!」
「鞭とヒールの味はいかがかしら?」
「やめ……て……」
ヒールの底でホイップを押しつけ、鞭によって体に赤いミミズを作りだした。
客席の興奮は絶頂にきている。
「……もう……やめ……て……って、言ってるのよーーーっ!」
いきなりホイップが立ちあがった為、祥子をすっ転んでしまった。
「なっ! もう動けるの!?」
「よくも……恥ずかしかったんだからーーーっ!」
ホイップは叫ぶと完全復活したようで、魔法の呪文を唱え始めていた。
「こ、こっちにはまだ人質が……って、妹達が居ない!?」
ホイップに自分がやりたい事をやって満足したのかとっくに姿がなくなっていた。
人質も解放してある。
「あ、あら?」
「えーーーいっ!」
結局ホイップの魔法によって、祥子は吹っ飛ばされてしまった。
ホイップが赤面しつつお辞儀をすると無事に幕を閉じたのだった。
客席は興奮冷めやらぬ状態ではあったが、全ての演目が終了となりバラバラと帰っていったのだった。
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