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【借金返済への道】帰ってきたヒーロー!

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【借金返済への道】帰ってきたヒーロー!

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第5章


 全てが終了し、片付けも終わるとかなり遅い時間になってしまった。
 会場では打ち上げの準備が完了し、全員がグラスを持っていた。
 学校の敷地内ということもあり中身は全員お茶かジュースだ。
「ヒーローショー、お疲れ様でした。乾杯!」
 御神楽 環菜(みかぐら・かんな)がグラスを高く上げると皆が乾杯を口にし、グラスを高く上げたのだった。
「なかなか楽しめたわ。生徒達も満足しているみたいだし」
「そうですか、それは企画した者としては嬉しい限りです」
 環菜の言葉をタノベさんが嬉しそうに受ける。
「そうね……例のボーナスを出しても良いと思っているわ」
「有難うございます」
 タノベさんはホイップの方をちらりと見遣った。
 楽しそうに談笑しているホイップの姿がある。
 満足そうにうなずいてから環菜との会話を楽しむのだった。

 打ち上げの料理や飲み物はレイが手配しておいてくれたものらしい。
 特に料理は疲れているだろうからとお手製のスタミナ料理となっている。
 そんな素敵な料理を味わいつつ、ホイップは打ち上げを楽しんでいた。
「あのね、ホイップちゃん!」
「うん、なに? どうかした?」
 蒼の突然の呼びかけに驚きながらも嬉しそうに答える。
「あの……その……この前、エルくんの女癖について言っちゃったけど、でもでも良い人なんだよ?」
「ほへっ!? ……う、うん。知ってるよ?」
「そ、そっか……うん」
 2人とも、へらっと笑い合うがなんだか微妙にきまずい雰囲気になってしまった。
「あ、ワタシあっちの料理食べてくるね〜」
 そう言うと蒼はレイの元へと駆けより、背後から抱きついたのだった。
「おや? どうかされましたか?」
「あのね……ホイップちゃんとエルくんがうまくいってほしいのは本当なの」
「はい」
「でもね、エルくんのパートナーともお友達だから……なんだかちょっと複雑な気持ちになっちゃって……」
 顔は見えないが、しょんぼりとした様子がよく解る。
「そうですね……私達は結局、第三者なのですよ。恋に関しては当人同士でないとどうしようも出来ない事もありますから……。そうですね、ホイップ様やエル様に相談された時、力になって差し上げるのが一番ではないでしょうか?」
「うん……そうなんだけど、やっぱり気になるよ〜」
 蒼は少しむくれているようだ。
 レイはそんな様子の蒼を優しく受け止めてやるのだった。

「こんな素敵な写真を撮らせていただきました。ホイップにプレゼントです」
 カメラを首から下げたシロがホイップへ一枚の写真を渡した。
「写真? ありがとう!」
 ホイップがそれを見ると、写っていたのは自分自身と金ぴかのプレゼントになっているエルとの2ショットだった。
 エルの格好が格好だけに少し微妙な感じだ。
「こ、これって!?」
 食い入るように見つめるホイップ。
「ふっふっふ……良い仕事でしょ? あ、それとこれはホイップの写真の売上です。自分の写真の売上なんですから貰って置いて下さいね」
 シロは茶封筒をホイップへと渡し、去ってしまった。
「ど、どうしよう……この写真」
 お金の事はそっちのけで写真を大事そうにしまったのだった。

「よっ! ホイップ!」
 話しかけられたのはショウだ。
「ショウさん! お疲れさま!」
「お疲れ! で、はい!」
 ショウに手渡されたのは金色の袋にホイップとエルの決めポーズが描かれた綿菓子だった。
「え!? う、え!?」
「エルと良い感じなんだって? 記念だから受け取っとけよ〜。じゃあな」
 言うだけ言うとショウは他の人達と会話をしにいってしまった。
「あぅ……」
 ホイップは描かれた2人を見つめた。

「なんだか、変な役だったが楽しかったぜ! また宜しくなっ!」
 菊茶は楽しげに朔に話しかけた。
「……こちらこそ、楽しめました」
 朔も少しだけ微笑んで返す。
 どちらも舞台とは少し違う印象だ。
 なので、打ち上げで会話し少し仲良くなれたようだ。

「これで美少女戦士部の良い宣伝になると良いですよね!」
 ファイリアは桜へと笑顔を向けた。
「そうだね! 新しい部員が来たら嬉しいよね」
 桜とファイリア、そしてウィノナ、ウィルヘルミーナも同様にこれからの事に胸を膨らませている。
「やれやれ」
 アルフはそんな彼女達を優しく見守るのだった。

「ホイップ、これは今日の皆のバイト代だ。受け取ってくれ。少しでも借金の足しになればと皆が言っていたが私も同感だ」
 エリオットは皆のバイト代を白い封筒に入れ、ホイップへと差し出していた。
「で、でもそれは受け取れないよ? 今日は皆に沢山出番を貰えただけで嬉しかったよ」
 ホイップはその申し入れをやんわりと断る。
「しかし、せっかくの皆の好意だ。素直に受け取ったらどうだ?」
「う〜ん……やっぱり、私は受け取れない……かな」
 少し考えてから出した結論。
「そうか。ならばせいぜい増やさぬように頑張れよ」
「うん!」
 こうしてエリオットは料理を確保してくれているメリエルの元へと戻っていった。
 あとで皆にバイト代を渡しながらさきほどの事を話さねばならない。

「サインちょうだい!」
 ミーナは絡まれた悪役の武尊へと色紙を突きだした。
「珍しい奴だな。普通、あんだけやったらサインなんてもらいにこねぇだろ。まっ、良いけどな」
 ぶっきらぼうに言うと色紙へとサインを書いた。
「有難う。悪役のサインってやっぱり面白いじゃない! 葉月に見せてこよ〜っと」
 ミーナは飲み物を取りに行った葉月の元へと走って行った。

「お疲れ様! 受付でずっと踊ってたんでしょ?」
「まあな……。楽しかったんだが……流石にちょっと疲れた」
 和子は疲れ切っているボビンを自分のポケットへと入れ、休ませたのだった。


―――――――――――


 夜もだいぶ更け、そろそろ打ち上げも解散の時間となった。
「ホイップちゃん!」
「は、はいっ!」
 後ろから声を掛けられたが、すぐにその声の主が誰なのかが解ったようだ。
 緊張しながら振り返った。
 そこにはホイップの予想通り、エルの姿があった。
「もう夜も遅いし、宿屋まで送るよ」
「えっ!? い、良い……の?」
「勿論! さ、行こうか」
「う、うん!」
 ホイップは少し嬉しそうにエルと並んで歩く。
「ふふ……私の出番はないみたいですわね」
 2人の事を少し遠くから見ていたルディが呟いた。
「そうだな、あの様子なら問題なさそうだ」
 呼雪も頷いた。
「でも、続きが気になりますわ」
 そう言うとルディは他にもいるデバガメ達と一緒に後を付けて行くのだった。

 ゆっくりと歩いていき、少し会話をしては沈黙が入る。
 そんな状態が続き、2人は宿屋の前へと着いてしまった。
「それじゃあ、今日は送ってくれてありがとう!」
「ちょっと待って!」
 宿屋へ入ろうとするホイップをエルが腕を掴んで止めた。
「な、何?」
 掴まれた腕から伝わるエルの体温にどぎまぎしながらエルを見つめる。
「これ、渡そうと思ってたんだ」
 そう言い、差し出したのは手作りのブレスレットだ。
 細めの金で出来たもので、ピンクの石が付いている。
「綺麗……もらっちゃっていいの?」
「勿論! その為に作ったんだから!」
 エルは掴んでいたホイップの細い手首に付けてあげた。
「似合う……かな?」
 恥ずかしそうに質問をする。
「うん、とっても。それとねホイップちゃんの事は本気で好き! これからも力になりたいと思ってる!」
 それにエルは極上のスマイルで返答した。

「甘甘ですね〜」
 ついてきていたデバガメ幸が言うと、一緒にいた陣とルディも同意した。

「あの……ね?」
「うん、何?」
 今度はホイップからエルに話しかけた。
「ぷ、プロポーズしたり、他の女性にもナンパしてるのって……本当?」
 ずっと気にしていた事を口に出した。
「ごめん! 本当なんだ!」
 エルは土下座をしてホイップへと平謝りし始めてしまった。
「ちょ、エルさん! 土下座なんてしないで? ねっ?」
 ホイップはなんとかエルを立たせる。
「エルさんが女性に優しいのは知ってるし、そういうところは嫌いじゃないんだよ?」
「へっ?」
 エルは素っ頓狂な声を上げた。
「でも……でもね? やっぱり不安になっちゃう……よ?」
「ごめん」
「……うん」
 しばしの沈黙が流れる。
「あの……さっきの答え……なんだけど……」
「へっ!? う、うん!」
 さっきと言われてすぐにはピンときていなかったが、“好き”に対する答えだと解った。
 ドキドキしながら答えを待つ。
 ホイップが口を開きかけた瞬間――。
「ラブラブだなんて俺が許さないぜ!」
 どこから来たのかウィルネストが飛びこんできた。
 突然の出来事に2人は固まってしまう。
「やっと役目を果たせる!」
 すっと陣が出て来て、持っていた野球のバットでお星様へと変えた。
 そして、仕事が終わると何事も無かったように元の場所へと帰って行った。
 ホイップとエルは気恥しくなってしまい、言葉を発せずにいる。
「ホイップちゃん? ああ、なんだ遅いから心配して……お邪魔でした?」
 宿屋の外から声がする、と宿屋の主人の青年が出て来てさらに答えを出せる状況ではなくなってしまった。
「だ、大丈夫だよっ! 邪魔じゃないよ!」
「そうそう!」
 2人は必死に繕う。
「そう? あ、そうだホイップちゃん宛てに手紙が来てましたよ。はい」
「ありがとう! えっと……えっ?」
 ホイップが封筒を開けるとそこには請求書が入っていた。
 前回の焼き芋に使った最高級のサツマイモの代金だ。
 びっくりしたホイップはそのまま、エルとの挨拶もそこそこに部屋へと戻ってしまった。
 出てきた幸、陣、ルディに肩を優しく叩かれ、エルは帰路についたのだった。

―――――――――――


「はい、準備は整いました。あとは決行するのみです。あなた様の元へと届けられるのも近いです」
 何かを報告した者は、相手の声がもう聞こえないのを実に残念そうにしたのだった。


■今回の返済■
借金
 −43,500G
報酬
 14回×800G
  11,200G
校長からの手当て
   5,000G
販売していた人達からのホイップグッズの収入(ショウ、シロ、亮司)
   7,800G
高級芋代金
−100,000G
今回の合計
−119,500G

担当マスターより

▼担当マスター

えりか

▼マスターコメント

 シナリオ参加有難うございました!

 今回はいつもより長くなっておりますね……。
 最後ということで奮発しすぎてしまいました……。
 少しでも楽しんで頂けたらと思います!

 なんだか悪役をやって下さっている方が少なく、振り分けるのがちょっと大変でした。
 いや、もしかしたら気のせいかもですが。
 思っていたのと役が違ったら、すみません!
 一応、役に合うように振り分けたつもりなのですが……ちょっと自信がないです。

 夜の部、最後の演目は……はい、どこまで書いていいものか悩んでしまいました。

 今回も称号を付けさせていただいていますが、元々ヒーローの方にはそのまま、そうでない方には前回同様『舞台用』を付けさせて頂きました。

 裏話や次回予告が気になる方は『蒼い予告編』で検索してみてくださいね。
 ではでは!