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【借金返済への道】帰ってきたヒーロー!

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【借金返済への道】帰ってきたヒーロー!

リアクション


■パラミタヒーロー大集合SP! 敵か味方か! 影のヒーロー達!■

 警報音が鳴り響く研究室。
「……おやおや、被検体102と104が逃げ出しましたか。別に幾らでも代わりは居るのですが……“あの御方”に怒られてしまいますね」
 研究室で左半分だけのピエロのお面と白衣を着た道化博士シルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)が呟いた。
「道化博士様、道化博士様! 被検体2体が研究員を殺して逃走! 捜査可能範囲を抜けちゃったんだよっ!!」
 そこへ道化博士の従者、笑顔のお面を付けメイド服を身に纏っている微笑侍女ルイン・ティルナノーグ(るいん・てぃるなのーぐ)が慌てて駆けこんできた。
 シルヴァは顎に手にやって少し考えると言葉を発した。
「まあ、所詮は失敗作。せいぜい潰し合って貰いましょう」
 そして、舞台の照明は暗くなり、場面が変わっていくのだった。

「くっ……敵が多すぎです!」
 蒼空学園のエキストラ雑魚敵20体に囲まれ、窮地に陥っているのは黄色いマントを身に付けたヒーロー結城 望(ゆうき・のぞむ)だ。
「ひょほーっ!」
 雑魚敵が叫びながら襲いかかって来る。
「それがし1人の力ではどうにも出来ないということですか……畜生ーーーっ!」
 一斉攻撃になすすべもなく、倒されてしまった。
 そこへバイク形態になっているイビー・ニューロ(いびー・にゅーろ)に乗った改造人間パラミアント五条 武(ごじょう・たける)が到着した。
「チッ……間に合わなかったか……くっそ!」
 イビーの上でうなだれる武。
「申し訳ありません、私がもう少し早く走れれば……」
 2人とも無言になってしまう。
「瞬着! パラミタ刑事シャンバラン!」
 そこへ走ってきた神代 正義(かみしろ・まさよし)も到着した。
 お面をつけ、ポーズをとるが暗くなっている2人を見つけ、状況を把握した。
「そんな……」
 愕然とする正義。
「気付かれました! 来ますよ!」
 イビーがそう言うと、こちらに気がついた雑魚敵が向かってきた。
「お前らぜってぇ……許さねぇ!」
「俺らの相手が務まると思うなよっ!」
 武も正義も怒りの拳をぶつけるように、雑魚敵を一掃していく。
 バッタバッタと投げ、気がつけばもう敵はいなくなっていた。
 敵の残骸の向こうには助けられなかった望が横たわっている。
「――見つけた!」
 3人は望へと近付こうとした、その時背後から声が聞こえ、振り向く。
 後ろにはパラミアントに良く似たイリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)と右目に大きな爪の痕がある黒いシャンバランレオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)が居たのだ。
「改造科……何考えてやがるッ!」
 驚きを隠せない武が声を震わせた。
「貴様……何者だ!」
 正義もやっとのことで声を出す。
「シャンバランは私1人で良い……このシャンバランシャドウのみ、な!」
 レオンハルトは正義へと向かっていく。
「お前を倒さないと……私は私を取り戻せないのよ! シャインパラミアントではない私自身を取り戻したいの!」
「シャインパラミアント……? ハッ、じゃあ俺はダークって事かよ、上等ォ!」
 イリーナの方は武へと向かって行った。
 何がどうなっているのか混乱はしていたが、ヒーロー達は戦闘態勢に入った。

「さぁ……。紅の隼などと呼ばれた時代もありましたが、今はただの一振りの剣にして馬にしか過ぎません。参ります」
 イビーがそう言い、武はイビーのバイク形態に乗ったまま戦闘を開始した。
 身1つで向かってくるイリーナを武はチェインスマイトの牽制を交えながら拳と蹴りで応戦する。
 しかし、イリーナの攻撃も拳と蹴り、そしてチェインスマイトでの牽制となっている。
 両者は互角のように見えた。
「チッ……」
 しかし、圧倒的なパワーの差が存在した。
 イリーナの放つ攻撃は確かに武と同じ……だが、それゆえパワーの差が顕著になってしまった。
 そう、体のあちこちに攻撃を食らってしまったのは武のほうだった。
「お前は闇の存在。闇の存在を倒せば……光を取り戻せる」
 言うと、イリーナはイビーの上に居た武を拳でふっ飛ばし、舞台の上から消してしまった。
「……これで、私は自分を……光を取り戻せるのね。あなたは彼の最後を見届けに行かなくて良いの?」
「タケルがあの程度でやられるわけががありませんね。心配する時間をあなたと相手をする時間に充てたほうが効率的です」
「そう……手加減はしないわっ!」
 イビーはバイク形態を解くと加速ブースターを下へ向けて使用し、高く飛び上がりイリーナへと切りかかった。
 その大技をイリーナはさらりとかわしたのだった。

 正義はソニックブレードで先手を取った。
 が、攻撃をじっくりと見てかわされてしまった。
 次の攻撃も、その次の攻撃も同じようにかわされてしまう。
「こちらからもいくぞ!」
 今まで正義の攻撃を見ているだけだったレオンハルトはいきなり攻勢へと移った。
 軽身功を発動させ、背景の壁を走り正義の背後を簡単にとってしまった。
 そのまま背中を切りつける。
「ぐっ……こいつ強い! 俺より遥かに……!」
 切り付けられた背中に手を当て呟く。
「しかし……!!」
 不屈の闘志でしっかりと立つと正義も攻撃を仕掛けた。
「シャンバランダイナミィィィック!!!! 悪は滅びろ!!」
 そう叫ぶと爆炎波を発動させた。
「シャドウブレード! 敵は滅びろ!!」
 レオンハルトの方は光条剣を抜き、それに対応しようとした。
 お互いの技がぶつかり合う。
 最後に立っていたのは……正義だった。
「何故だ……何故俺は勝てん!?」
 悔しそうに拳を地面へと叩きつける。
「……お前と俺は似ているが違う……何故ならお前は何処かの誰かの為に戦えるヒーローではないからな……!」
 その言葉を聞き、レオンハルトは肩を落とした。

「俺はまだ……やられてないぜっ!」
 突如、客席の後方から声がした。
 観客が振り向くとそこにはやられて、舞台から消えていた武の姿があった。
「遅いですよ」
 イリーナと戦闘していたイビーが少しほっとしたように呟く。
「まさか……あれを食らってまだ生きていたというの!?」
 武はニーベルングリングとベルトを輝かせると光に包まれた。
 演出は黒子の和子が担当している。
 光が薄れるとそこにはフォームチェンジしたパラミアント バーストフォルム(ぱらみあんと・ばーすとふぉるむ)が居た。
 変身が済むとバーストダッシュを使用し、観客の上を一気に通過。
 舞台の上へと戻ってきたのだ。
「そんな……」
 今度はイリーナが攻撃を食らう番だった。
 スピードが格段に上がった武の攻撃を食らい続け、ついには膝をついた。
 イリーナを倒すと活動限界になり、光輝いてから通常のパラミアントへと戻った。
「この姿になった私に、ある人が言ったの。パラミアントを倒せば、体が元に戻ると……そう、あの人は……うっ」
 呆然と座り込んでしまったイリーナはぽつりと呟きだしたと思ったら頭を抱えうめきだした。
「そこまでよぉ」
 どこからともなく声が響いた。
 4人が辺りを見回すと舞台の左袖から探偵帽と探偵マントをつけたフィルテシア・フレズベルク(ふぃるてしあ・ふれずべるく)が登場した。
「話は聞かせてもらったわぁ。私の名は謎の美少女探偵・フィルちゃん17さいって呼んでねぇ。私の独自調査によって今回の真犯人がわかったわぁ……」
 皆の視線が一点に集中する。
「実はこの事件……ホイップちゃんって子の仕業だったのよぉ! いつも借金シナリオでは迷惑行為ばっかりしているヒーローMC達……そんな彼らに彼女は心底うんざりしていたわぁ。そこでホイップちゃんは考えたのよぉ。今回のヒーローショーを口実に、ヒーロー共を抹殺しようって! そこで抹殺する刺客として生み出されたのがシャンバランシャドウとパラミアントシャインってわけねぇ……。ちなみに、最初にやられちゃったヒーローはとばっちりみたいねぇ」
 うんうん、と自分の説明に納得している。
 説明に皆が混乱していると突然、拍手が聞こえ出した。
「いや、ばれちゃいましたかお見事お見事。でもこれは退けられますか?』
 出てきたのはなんと、その黒幕、女帝ホイップとシルヴァ、ルインの3人だった。
 さらに背後からわらわらと無数の雑魚敵が出てきた。
「これ以上、私の借金返済の邪魔をするのは許せないの。ここで死んでね?」
 ホイップは悪役っぽい微笑を浮かべ、攻撃開始の合図を出した。
 襲いかかる雑魚敵、しかし共通の敵を見つけ一致団結したヒーローとダークヒーローの敵ではなかった。
 あっという間に蹴散らされていく。
「なんでやられてくれないのー!? 私を破産させる気!?」
 形勢不利と見たホイップは道化博士の方を見たが、そこにあったのは1枚のカードだけだった。
『用事を思い出しました 道化博士』
 一瞬固まる、ホイップとルイン。
「用事を……って、はわっ!? 道化博士様、置いてかないでだよー!」
 ルインは走り去ってしまった。
 残されたのはホイップとヒーロー達4人。
「え、え〜っと……また借金返済に協力してくれる? うふっ?」
「誤魔化されるかーーーーっ!」
 ホイップの上目づかいも無駄に終わり、4人のヒーロー最初で最後(?)の合体技で舞台の上から吹っ飛ばされてお星様となってしまった。
「いやぁ、めでたし、めでたしだねぇ」
 楽しげな美少女探偵の言葉が最後となり、舞台は完結した。

―――――――――――


「いくら演技でも……私あんな事微塵も思ってないからね!?」
 無事に楽屋へと戻ってきたホイップは皆に必死に告げるのだった。
 皆解ってはいるのだが、その慌てる姿が面白いらしく暫くからかわれる羽目になったのだった。