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リアクション
「……おい、ユニ……何なんだこれは……そろそろ説明……っておい! 何処に連れて行く……引っ張るな……わ、分かった! 分かったから離せって! おい!」
クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)は謎のテントに無理やり引きこまれ、困っていた。
しかし、パートナーのユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)はやる気満々だ。
「何を言っているんですか! 占いに行きますよ! 占い! さあ、早く! こっちです!」
妖精のように可愛らしい外見から出てるとは思えない力で、クルードの腕を掴み、引きずっていく。
「……よく分からんが……は? ……何の話だ……恋占い? ……何だそれは……」
本気で意味が分からず、困った顔をするクルードに、ユニは可愛らしい頬を膨らます。
「……ここまで言っても分からないんですか……」
「だから何がだ……。……それに、何で占いなんて……そんな事をする必要が……」
必死に抵抗するクルードに、ユニは盛大な溜息を吐く。
「クルードさんには、はっきり言っても伝わらない気がします……はぁ……」
「くっ……! 分かった! 行けばいいんだろう……ふぅ……」
溜息をつくユニに負け、クルードはあきらめて占いとやらに付き合うことにした。
香鈴がポイポイポイっと石を投げる。
「鈍感な彼に、悩んでいますアルねぇ」
香鈴の言葉に、ユニは我が意を得たりという顔をした。
「そう、そうなんです。本当にそうなんです……」
「しかもライバルが……」
「……はい」
額を突き合わせる女の子2人を見て、クルードは溜息をつく。
何がそんなに恋の占いなど楽しいのか……。
「前よりも関係がユニさんの望むようになっているですアル。でも」
「でも?」
「ライバルばかり気にしてちゃダメ。と出ましたアルヨ?」
「え?」
「彼のことを一番よく知っているのは自分と自信を持ってくださいアル」
「……はい、はい!」
ユニがぱあっと笑顔を見せる。
その後、クルードは今後の女難を占ってもらった。
すると、こんな答えだった。
「増えますアルネ」
「は……?」
「よし多くの女性か注目されると出ましたアル」
香鈴の言葉に、クルードは頭を抱えた。
愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)はとても真剣な顔で、香鈴が石を投げるのを見つめていた。
「あ、あの、気になる人がいるんだけれど、……相性……とか、どうしたらもっと仲良くなれるかとか、占ってもらえないかな?」
ミサは少し恥ずかしそうな顔で、そうお願いし、香鈴の答えを待った。
(良い結果が出ますように!)
真剣に祈りながら、じっと香鈴の様子を見守る。
「お、90%ですアルネ」
「え?」
「とても相性がいいですアル」
「ほ、本当か?」
ミサの顔がパーっと明るくなる。
占いの結果が悪くても、それでも仲良くなりたいから頑張るつもりだったけれど、相性が良いと言われればやっぱりうれしい。
「ありがとう、鈴ちゃん!」
ミサはお礼を言って、ちょっと可愛い包み紙を香鈴に渡した。
「これ、飴なんだけど、良かったら食べて! 簡単なお礼しかできなくてごめんね!」
「いえいえ、そんなことないですアルヨ。お礼を頂けたのは初めてなのでうれしいですアル!」
香鈴は笑顔でお礼を言って、ミサを送り出した。
ミサは少しウキウキした気分で、紅葉と空を見上げた。
俺なんかが気になるなんて迷惑かなと思っていたミサだったが、その気持ちが占いの結果を聞いて、少し軽くなった。
「この紅葉は一緒に見れなかったけれど、綺麗な雪景色を見る機会なら、まだあるもんね」
クリスマス、一緒に遊べたらいいな、と思いながら、ミサは山を降りるのだった。
「きょ、京の事じゃないのよ! ホントだよ!」
九条院 京(くじょういん・みやこ)は一生懸命、香鈴に念を押す。
「わ、わかったアル。わかったアルヨ」
香鈴は京に押されて、うんうんと頷く。
しかし、いつも学校で占いをしている香鈴は分かっていた。
「友達がね……」という相談は高確率で、当人だということを。
「そもそも人間と守護天使の恋って実るのかな……」
香鈴が石をポイポイポイっと投げるのを見ながら、京はそう呟いた。
京だけでなく、パートナーを想う人の多くが、一度は悩む問題が『寿命』だ。
特に守護天使と人間だと寿命が違うのが分かっているので、パートナーの守護天使が好きな京は気になっていた。
「ん〜」
「ど、どうしたのだわ?」
香鈴の難しい顔を見て、京が心配そうにのぞきこむ。
「一度、障害が現れると出てますアル」
「障害……?」
「でも、それを乗り越えたら変化が出ると出てますアルから、がんばりますアル」
「変化……?」
今の唯は、京に兄とか保護者のような態度をしている、
それが変わるということだろうか……?
京は結果を気にしながら、テントを出ていった。
「あれ? クリス、占いに興味があるの?」
全員でお弁当を食べ終え、ゆっくりと紅葉を見ていた時。
パートナーのクリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が香鈴のテントをちらちら見ていることに神和 綺人(かんなぎ・あやと)は気づいた。
「あ、う、うん。恋占いとかいいなあって」
「恋占いかあ。クリス、誰か気になる人がいるの?」
「……」
「……綺人」
黙るクリスを見て、ユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)が何か言いたげな顔をする。
「どうかした?」
2人の雰囲気が何かおかしいと思った綺人だったが理由までは気づけなかったらしい。
「あ。でも、占い自体は興味あるよ。家が家だからやっぱり」
「そうですね。……それではちょっと私は行ってきます」
クリスは2人を置いて占いに行ってしまった。
(……自分でチャンスを潰してどうする)
ユーリは何か言いたげな瞳を向けたが、あきらめたらしく、立ち上がった。
「あ、あれ、ユーリさんは?」
占いから戻ってきたクリスは、一人でポツンと待っていた綺人を見て、不思議そうな顔した。
「一人で紅葉を眺めたいって……」
「アヤは待っててくれたのですか?」
「うん。だってクリスを一人にはできないもの」
クリスはその言葉にうれしそうに微笑みを浮かべる。
ユーリが邪魔だとか、こっそり思っていたことを後で謝ろうと思いつつ、クリスは綺人の隣に並んだ。
「占いの結果はどうだった?」
「うん、良かったですよ」
クリスが楽しそうに答える。
香鈴の占いの結果は『今は停滞気味に見えても、何かのきっかけで一気に進展する関係』というものだったのだ。
そのきっかけがいつ来るか分からないけれど、クリスはその日が来るのを楽しみに待つことにした。