リアクション
* 近くの別室には、獅子小隊が待機していた。 最後の準備を整えたところで、間もなく出発となる。 ここに来ているのは、小隊の皆とは初対面となる風次郎のパートナー、弓月 御法(ゆづき・みのり)である。 温和な雰囲気の彼女、至極丁寧に皆と挨拶を交わしている。親切で家事全般に長け、風次郎は意識しているかどうか知れないが、どことなく、故人である風次郎の母親の面影がある。 すかさずルースがナンパに入ろうとしたが、霧島が止めた。 (……やめい。) (……ですね。さすがに、風次郎の剣の花嫁ですからね。まあ、ナンパしようとするのはお約束ということで。) (しかし、綺麗な女性だ。) (ですね。こう、しっとり大人びた女性というのは、獅子小隊にはいないですかね。) 「皆様、お掃除の邪魔ですよ?」 「……おっと」 「……すみません」 ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)が、出発前にしっかりと部屋の片付けをしているのだった。 「そうか。伐折羅はしばらくの間、修業に出るのか」 「ええ。ドージェとの戦い(グランドシナリオ第二回参照)で負けたことが、よほど悔しかったらしく……」 そこへ、月島が戻ってくる。 「では、皆さん。私はこれで……」 弓月は、月島にも丁寧に挨拶をすると、獅子小隊の間を出て行った。 「さて。それでは我々、獅子小隊も……」 獅子小隊の隊長、レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)の出した指示はこうだった。 「……どうも状況がキナ臭い。ルカもイリーナも砦からの出発が遅れている様だし、先行したレーゼからは連絡が無い。 到着次第状況開始かもしれん、てことで今回は息抜き」 …… が、それで終わりでは詰まらない、といったふうに悪戯っぽく笑うと、 「とは言え、要するに現地集合だ。 上官が居らずとも秩序の守護者たる教導団員として、道中遭遇したトラブルはきっちり解決して来る様に、な?」 そういうわけで、獅子小隊のメンバーはめいめいに、目的地に向け、発つこととなったのである。 月島とナナは、今回共に行く旅の仲間のもとへ。 霧島 玖朔(きりしま・くざく)、ルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)は個々に出発。 (さて教官も居ない、上官も居ない。どうも任務外でもある様だし、今回は現地集合で良いだろう。) レオンハルトは…… 「わー、久々のお休みですねー♪」 シルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)。リュック背負ってすっかりピクニック気分。 お休みではないと……すでに何度レオンハルトが言うても聞く耳無し。 「わーいお休みだよっレオ君偉いんだよっ♪」 ルイン・ティルナノーグ(るいん・てぃるなのーぐ)。バスケット持ってすっかりハイキングムード。 さーて、サンドイッチ作らなきゃー。 ばたばた。二人は別の方向へ行ってしまった。 「あ。レオ君レオ君、おやつは100Gまでかなっ、かなっ」 レオンハルト、「(ぴくぴく)」。 少々出発が遅れ、またそれぞれに旅立った獅子小隊。 一方のノイエ・シュテルンは、今回参加の隊員が揃うや、早朝すでに出立したとのことが伝えられている。 1-02 温泉に浸って 温泉に浸かって語り合う、レーヂエと風次郎。 「レーヂエはレーヂエなりの戦い方を貫けばいいんじゃないか?」 「そ、そおかなあ……」 「確かに戦略は非常に重要なものだが、戦場は理論が全てではないだろう。 まぁ、「兵法」の「へ」の字も知らない俺が言えたものじゃないが……」 レーヂエは、まがりなりにも部隊長として今まで一隊を率い、風次郎も初期の戦いではとくに獅子小隊の主力として戦ってきたが、互いに個の武としての戦いを好む点では、似通う部分があるのかも知れない。 「うーーん……」 風呂にまで持ち込んできた兵法書を、頭に乗せたり、くるくる回したりするレーヂエ。 (……とは言っても、体が癒えるまでは本でも読んで勉強しながら大人しくしててくれ、としか言えないのも確かだけどな。) レーヂエは何れにしてもしばらくの休暇を余儀なくなされたが、風次郎はこれからどういった戦いを選んでいくことになるのか。 ぼちゃん。 「あ、落としてしまった。……兵法書が沈んでいく……」 「兵法に向いていないということかも知れないな」 「……」 「ところで、レーヂエ」 「(がっくり。) ……な、何だ」 「今回は黒羊 アンテロウム(くろひつじの・あんてろうむ)副官の故郷に向かうわけだが、副官のこと、それに故郷のことについてもあんた何か知ってるか?」 「おう。 騎凛殿と黒羊の出会いについてまではわからないが……(騎凛殿は、各校長らほどではないがかなり早くにパラミタに来た組だからな)。 が、黒羊は今でこそあんな老人になり果てているが、昔は気性も荒く、あんなではなかったようだな。 俺からすると、普段はやる気のない老人で、戦闘になると口煩い老人で、信じられんことだがな。 黒羊郷に入ったことはないんだが、俺がもっと若かった頃(?)に、あの近くのハルモニアという地方に遠征し滞在したことがある。黒羊郷の裏手の山にあたる。 あそこの一族には世話になったから……騎凛殿はあそこに寄るかも知れんな……」 もうすぐ、冬になる。 温泉を出れば、冷たい風に吹かれる、旅になるだろう。 一通り話し終えると、風次郎は温泉を後にした。 一人、風呂場に残ったレーヂエ。 「ふあ……しかし温泉はいいものだな。ずっとこうして浸っているのも、わるくないという気がして……、む??」 「レーヂエ! レーヂエ! レェェェェェヂエェェェェェェ!!!」 「何やつ? どこから??」 レーヂエは剣のかわりに、ずぶ濡れになった兵法書をかまえた。 どごーん 温泉の壁をぶち破り、服のままざばざばと入ってきたのは、サミュエル・ハワード(さみゅえる・はわーど)。 レーヂエの両肩をつかんで、 「久しぶリ! 傷大丈夫!? ドコも痛くない!?!?」 「うお?! サ、サミュエル! 肩の傷が痛いぞ!!」 「はッ!!」 サミュエルは赤面し、レーヂエに謝った。 うわぁ……それに服がびしょびしょだぁ……。 「スススイマセン……ち、ちゃんと温泉はいりますネ……!」 そこへ、温泉女将のプリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)が入ってきた。 「失礼しますねー」 「ワッ」 「女将……」 「あの……もう、温泉閉まっちゃいますよ?」 「??」 「えっと……わたくしレーヂエは、シナリオガイドにもあるように温泉で療養中なのだが……」 「だって、あたしも遠征行くんだもん!」 【第四師団温泉開発責任者】として、またプリモ温泉を経営する女将としても活躍するプリモは、ぎりぎりまでお客の世話をしての出発となる。 プリモ温泉は、暫く休業である。 「……」 「わーいわーいレーヂエ、じゃあ谷間の宿場で療養しようヨ? きっと温泉あるヨ」 「(果たして、レーヂエは其処までたどり着けるのか。乞うご期待!)」 1-03 旅の仲間 ぴゅるるるる。吹きすさぶ風が寒い。 プリモ温泉が閉まって、その入り口に屯している(締め出された)のは、この遠征のキーとなるかも知れない? 旅の仲間達。 先程、獅子小隊の指示を聞いて後、こちらへ来た月島、ナナ。 実は、ナナのパートナーの音羽 逢(おとわ・あい)は、姿が見えないのだが…… 「……レイディス様と逢様が買出しから戻られないのです。 まったく、お二人揃うといつにも増して迷われている様ですね」 レイディスの名前も出たように、この二人と共に行くのは、傭兵勢として教導団の力になる予定の蒼空学園、イルミンスール、薔薇の学舎から来ている者達。 蒼空学園の魔法使い、御凪 真人(みなぎ・まこと)は、友人にさそわれ、話に聞いたまだ訪れたことのない三日月湖地方にも興味を持った。 静かに佇む、御凪。 冷静な状況判断のできる彼の存在は、この旅の仲間にとって重要な役割を果たすであろうが、 ……とりあえず今は待つしかない、と判断しているようだ。 「ああ、こんなお外に放り出されてしまいますとは」 日傘を差し、お出かけ(遠征)用に白いロリ服で身を固めているのは…… イルミンスールでプリーストの魔法を学んでいる、シャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)。 「(買出し班が道に迷ったということなんですけれどぉ…… 何で迷子になりそうな方を買出し班にしたんでしょうかっ……!)」 おっとりした彼女がたまに吐く毒は今回の遠征をどう左右することになるのか。ロリ服とリボンに隠れて見えはしないが、彼女は機関銃と保険の教科書数種も所持していると思われる。 「あ。来ました来ました。 レイディスさんこっちですよ、これ以上迷わないで下さいねー」 教導団の戦いには度々参加してきた騎士クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)。第四師団ではすでにレギュラーメンバーと言える戦い振りを毎回披露してくれている。 「……すまない」 レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)は素直に一言詫びた。 まさか、買出しで二日近く(?)迷うことになるとは……。迷って、空京あたりまで行ってしまったのかも知れない。もちろん、レイディスのことだから……そうであっても不思議はなかった。 「拙者としたことが……皆様。申し訳御座いませぬ……!」 皆に頭を下げて回る音羽 逢。でも、無事に合流できてよかった……。 「では……」 「誤字姫さん」 「誤字姫様」 「誤字姫様」 「ななっ、なんじゃ???」 今回、誤字姫として参加することになったセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)。 「ともかく……いちばん出発が遅れてしまったからの、急がぬと! では……」 「誤字姫さん」 「誤字姫様」 「誤字姫様」 「……、いざ出発侵攻ぞえ!」 |
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