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黒羊郷探訪(第3回/全3回)

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黒羊郷探訪(第3回/全3回)

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第5章 人質交換

「何ィ? 龍雷連隊は来ないだと……」
「はっ。それが奴ら、戦後処理で、自信の所属する教導団の方からそれはもう色々と 尋問を受けたり などしているようで。
 龍雷連隊そのものが、解散させられるのではないかとの声も聞かれております」
「ほう……それならそれでいいことだが。そうなると……」
「おうおう、何だって。せっかくこのグレタナシァの猛者連がここに大勢集ったってのに、お役目なしかい」
「好き放題斬っていいって聞いたから来たのによ、誰も来ないのか?!」
「なら、この鳥とちび竜だけでも叩っ斬っていいんだろ」
「何だと!!!」
「ち、ちびって言うな!」
「ま、待て。それはまずい。まだ、まだだ。それではボテイン将軍との人質交換が成り立たん。
 く、必ず、誰かは来る。来たらそやつを……」
「斬っていいんだな?!」
「う、うむ。但し、必ず、ボテイン将軍の身柄が確保できてからだぞ、いいな!」
「わかってるぜ」
「教導団の者が来ました」
「来たか!」
「ま、待て」
 飛び出していくならず者ども。

 天霊院 華嵐(てんりょういん・からん)は、円形劇場の周囲にずらりと現れたならず者どもを見渡す。
 ごくり。
 やはり、ただではいきそうもなかった……
 緊張に震えながらも、毅然と、進み出でる天霊院。



5-01 囚われの二人(人質)

メニエス・レイン(めにえす・れいん)、俺は貴様を必ずこの手で討つ。忘れるな!!! あくまに魂を売った貴様を絶対に許すわけにはいかないんだ!!!」
 怒りのスイッチが入ったファルコン・ナイト(ふぁるこん・ないと)。松平岩造の機晶姫であり、龍雷連隊の一員だ。
 メニエスの吸血鬼ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)に捕らわれ、黒羊旗のもとへ連れられた。
 その後、三日月湖から撤退した黒羊の軍勢と共に、グレタナシァまで連れられてきた。
 ここは、黒羊の軍に与えられた仮の兵舎。
「そう」
 がっ。メニエスが杖の先でファルコンを小突く。ファルコンは尚も言い続ける。
「空京でいくつかの市民を虐殺、その上で悪事をいくつかやり続けた!!!」
 メニエスは、笑うばかりだ。
「貴様は岩造様が討ってくれる、いずれ必ず罰を受けろ!!!」
「ちょっとうるさいわね」
 がんっ。ぐるぐる巻きにされたまま、その場に倒されるファルコン。
「ほら、起きなさいよ」
 ミストラルが、ファルコンの髪?を引っ張り、無理矢理起こさせる。
「く、岩造様……!!!」
「ど、どらごんだぞ! 本気出せば怖いんだぞ! がおー!」
 同じように捕らわれの身となった、オルキス・アダマース(おるきす・あだまーす)。参謀科・天霊院のドラゴニュートだ。
 黒羊兵らは、そんなオルキスは相手にせず、離れたテーブルで食事をとっている。
「(ぐぅ〜)」
「なんだ?」兵が来た。
「お腹、す……すいてない! すいてないぞ!」
「なんだ、このちび。ああ、そうか昨日から何にもやってなかったなぁ。食うか」
 兵は食べ残しの鶏肉をぽいと投げた。
「おいし〜……はっ?! フン、お前たちの糧食を減らしているのだ!」
「はっはっは。えらいな、ちび。
 おう、そっちのでか鳥は、いいのか」
「いるか!!!」
「……なんだ。かわいげもない。まあいいさ、もうすぐ拷問か処刑だかが待ってるだろうよ」
「えっ!!!」
「こ、怖くない! 怖くないぞ!」涙目のオルキス。
「メニエス殿。申し訳ない、代わろうか」
「いや、ただ面白いからちょっと弄んでただけよ。もうそれも飽きたし……いいでしょう、放っておけば。
 それより……あなたたちの将。ボテイン、だっけ」
「うむ。……まさか、ボテイン将軍が捕らわれるなど、誰も想像できなかったことだ。教導団にそれほどの使い手がいようとは……」
「教導にねぇ……」
 ボテインを打ち合いの末、捕えたのは騎狼部隊を指揮するイレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)だと聞いた。オーク戦の頃からその名は聞こえていたが、オーク隊長を一騎打ちで負かしたケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)やキングを討ち取ったという宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)らのような武に秀でた将としては聞いた覚えはない。ボテインは、力なら黒羊軍では随一と聞こえる将軍だが、頭の程度は……おそらく何か策でも弄されたのだろう、とメニエスは思った。もちろんそんなことは黒羊の兵どもには言わないが。
 メニエスは、壁にもたれる。
 ボテインね……どうでもいいんだけど、あたしには。メニエスは思う。黒羊側にすれば、龍雷連隊などという浪人寄せ集めの隊長と参謀科といえまだ一生徒に過ぎない者らのパートナー二人と、黒羊郷では有名な将軍の交換なんてと思ってはいるかも知れないけれど……あたしにすれば、ボテインは交換材料にならない。将が捕まった時点で死んだも同然。不必要なことを喋られる前に死んでもらった方がましだというもの。
 メニエスは、ファルコンとオルキスを見やる。教導のやつらには義に強く動かされる者もいるという、相手によってはもっと使い道があったかも知れないのに。
「メニエス様?」
 ミストラルが、どうされたのです、と尋ねてくる。
「ううん、何でもないけど」
 教導団。奴らが来なければ、バンダロハムの街もあのようにはならなかったはずだ。
 だから嫌いなのだ、教導団という連中は! 奴らこそが諸悪の根源。どのような犠牲を払ってでもこれ以上好き勝手にはさせらない……
「メニエス殿」
「何か?」
「貴殿がこちらに来てくれたおかげだ。皆、感謝している。これでボテイン将軍をお助けできるのだ」
 ふん、とメニエスは思う。
「我らの主より褒賞がくだされるだろう。いや、とにかくまずは何としてもボテイン将軍を……
 そして、我々の第二波が到着すれば、三日月湖を奪回できる。あそこは、教導団攻略の最もよい拠点となるだろうから」
 結局、黒羊旗にしても教導団にしても、あの街を軍事拠点にすることしか考えていないわけか。
 メニエスは、無言でその場を去る。
「メニエス殿? どこへ」
「ええ、もう休むわ、その日は明後日だったっけ。あたしが、やって来た連中を焼き尽くしてご覧に入れるわよ。相手の出方次第ではね。
 ミストラル。行きましょう」
 その脇では、
「……がおーっ」
 兵らにからかわれ、文句や強がりを言い続けているオルキスだったが、彼はこういった黒羊側のやり取りに注意深く耳を傾けていた。



5-02 メニエスの手紙

 一方こちらは教導団ウルレミラ本営の会議室。
 兵が入ってくる。
「ええっと……クレア殿? いいでしょうか? 黒羊側からまた使者があり、このような手紙を」
「何。私たち教導団に、この地から退けと。そしてこの先一切近付かないこと、だと。
 何で今また、このようなことを。メニエス、レイン、か。
 条件を飲んでも飲まなくても人質は首にして返してやるなどと書いてあるな」
 ここには、参謀科・天霊院華嵐の姿もあった。
「……」
「天霊院。心配はしなくていい、こっちにはボテインがいるんだ。あの女魔法使いのこと、自身の強気でそう書いてきているのだろう」
 クレアが、天霊院を気遣って言う。無論、捕虜交換はする、ということで話は決まっている。
 イレブン、レーゼマン、香取、黒乃ら各部隊をまとめる者らも、報告書等の件でその場にいた。龍雷連隊の岩造は尋問を受けており今はいない。(戦部は道明寺と、拠点とする場合の防衛地点等を調べにいっている。一条は、玉座の間にいる。)
「ええ、大丈夫です。心配はしておりません」
 天霊院は毅然として、応える。クレアは、
「とは言え、これは明らかにこちらの分が悪い取り引きではある。
 私としては、その分の悪さ、を教導団の人命尊重のアピールとして利用するくらいのつもりでいればいいと思う」
 必ず、捕虜は助ける。皆も頷く。
「しかし、敵方にメニエスか。厄介な」
「このような手紙を寄越してくるとはけしからんであろう」
「何か返信でもするか。……黒羊旗の大将一人なら、教導団の仕官候補生二人で釣り合う、と吹かすのもいいかも知れない」
 クレアはそう言って、でもボテインがへそを曲げると面倒だな。と取り下げ、軽く笑ってみせた。
 秘書の業務をしていた御茶ノ水は、「何にせよこちらも、捕虜の身柄を引き渡すまでは責任を持って守ること、ですね。暗殺などされないよう」と言う。
「ええ」天霊院が言う。「相手がどう言ってこようと、いえむしろ、こちらはボテイン卿を厚遇するのがいい、と思います。そこは自分にお任せください」
 場合によっては離間もできるかも知れない。

 各自、退出していく。
「パートナーが捕虜とあっては不安だろうが」
 イレブンが天霊院に語りかける。
「ええ。実は、イレブン殿……」
 天霊院は、イレブンに願い入れたいことがあったようだ。
「……ふむ。いいと思う。騎狼部隊にできる限りのことは協力するよ」



5-03 霧島の復帰

 ウルレミラの館の廊下を歩く。
「……」
 表情は、いくらか険しい。昨夜の戦いの治療を終えたこの男。まだ、少々火傷や傷は残っているが、彼の回復力は脅威的で、一夜明けて休みたいという者も多い中、意気にも満ちている。
 兵らの待機する一室に入ると、険しい表情も少し穏やかになる。
 今回の遠征で、教導団に雇われた傭兵らの待機室だ。
 彼は部屋を見渡し、傭兵……と呼ぶにはらしからぬ女性を見とめると、そこへ歩いていく。
「……ロザリンド」
「あっ、霧島さん」
 男は、霧島 玖朔(きりしま・くざく)だ。声をかけた相手は、百合園のロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)。谷間での戦いが思い出される。霧島は一瞬、目を瞑った、が、ロザリンドをまっすぐに見つめ、
「ありがとう」
 とはっきり述べる。少し照れくさそうである。
 ロザリンドは、優しく微笑む。
「お身体の方は、大丈夫です?」
 ロンデハイネを救うべく、勇敢に戦った彼を、ロザリンドが手当てした。
「ああ、おかげで。すまなかった……ありがとう」
 それを言い終えると、霧島はその場を後にする。ロザリンドは笑顔で見送る。
 霧島は、今度は同じ館の上階の方へ向けて階段を上る。
「はっ。……ノイエ……」
 階段を下りてきたのは、香取、マーゼン、ゴッドリープら、ノイエ・シュテルンのメンバーたち。軽く会釈して、すれ違う。その先に、ロンデハイネの一室があった。彼もひどい火傷を負い、治療を受け休んでいるのだった。一礼して部屋に入ると、彼は起きていた。足を負傷しているので起き上がれないが、意識は問題ないようである。先ほどの香取らとも何か話をしていたのだろう。
「ロンデハイネ殿」
「霧島だな。貴官には、感謝を」
「申し訳ない。あんたを助け損ね……」
 霧島はまだ少しきついままの瞳で、山鬼の家で自分がロンデハイネを助け損ねたことを詫び、次は失敗しない、と誓いを伝えたのだ。(更に心で、……同じことは二度と繰り返さない。負け犬の遠吠えかもしれないがな、と。)
 ロンデハイネは、少々驚いた。しばらく黙っていたが、
「何故だ。どうして、そのように自分を責める。
 最初、私のもとへパラ実生(国頭)と共に駆け付けたのは、貴官のパートナーの九十九であったな。あのとき、霧島、貴官が策を巡らし、山鬼どもを翻弄してくれていたという。貴官らの働きがなければ、私はここにいない。炎の海から私を救い上げたのも貴官だ。
 確かに、山鬼の頭は強かった。とどめを差したのはジェイコブ・バウアーだったと聞いたが、九十九も、霧島そなたも、火に包まれたあの状況の中、襲い来る山鬼をどれほどの数斬ったかという上での戦いだったのだ。無事、戻れたことも奇跡的である激戦であった」
「……」
 誇り高く、自らに厳しい霧島。ロンデハイネの言葉をどう受けとったかはわからないが、彼はまだ強くなり戦い続けねばと心に思う。
「ノイエ・シュテルンは、部隊を率いこのたび山鬼を討ち果たしたが、今回、貴官はひとりで戦ったのだ。
 (霧島、貴官は獅子小隊の所属だと聞いたが、ノイエ・シュテルンと並び、個々独自に優れた者が集っているようであるな。)
 私が回復すれば、戦功は明らかにせねばな。複雑な心境でいたろうがそれを伝えにきてくれたことを嬉しく思うぞ」
 霧島はロンデハイネに一礼し、退室した。
「ひとまずは敵を退けたことだ。傷を癒しゆっくりと休んでは」とロンデハイネは言ったが、霧島は休むつもりなどはなかった。
 次に霧島は、中庭の方に向かう。
 芝生が敷かれ、ちょっとしたグラウンドくらいの大きさのある広い中庭には、騎狼部隊の者らが集まっていた。
「うわっ、は、速い……!」
「振り落とされないようにな」
「まだまだスピードを上げれるぞ」
 イレブンが、天霊院に騎狼の乗り方を教えているのだった(「ようこそ狼の穴へ!」スペシャル特訓コースを実施、というわけである)。そこへ、霧島は近付いていく。
「参謀科、天霊院」
「あっ。霧島さんでありますね。はい、自分が天霊院です。よろしくお願い致します」
「ああ。任せな。グレタナシァ国境の、円形劇場跡……だな」



5-04 円形劇場跡で

 人質交換の当日。
「華嵐!」
 天霊院 豹華(てんりょういん・ひょうか)が戻ってくる。
「豹華……どうだった?」
「ああ。ちゃんと連れて来られている。オルキスも、岩造のファルコンも、な」
「無事であったか。よかった……」
 オルキスがとくに怪我をさせられた様子もなくいたということで、ひとまずは胸をなでおろす。岩造はというと、尚、尋問の真っ最中で、出てこられる状態ではないのだった。
「華嵐……」
 豹華は、先行偵察をしてきたわけだが、そのため、完全な獣変身モードにある。なので彼女は内心……(きゃーこれって露出調教?! ついに念願の華嵐の調教!? あ、いやいや、そんなことは……あ、でもちょっとは……)等等妄想が勝手に進んでいるのであったが、華嵐はさすがに余裕のない表情で、知る由もない。
「あ、華嵐。ごめん」
「ん? 何か……?」
 二人のこの関係については、また後のちに語られることになる、のか?
「さて、……行くか。
 では、ボテイン卿」
「ああ。すまぬな。囚われの俺を、遇してくれるとはな。敵ながら、そこには感謝致すぞ」



 円形劇場跡。
 周囲に聳える観客席。
 真ん中の舞台はすでに崩れ落ち風化している。
 一方の入口から、天霊院が出てくる。騎狼から、ボテインを丁重に降ろす。
「騎狼、か……フン」
 反対側に、メニエス・レインがいる。傍らに、オルキス、ファルコンの姿を見とめた。
 どちらの捕虜も、武器鎧は身に付けていない。
 風の吹きぬける劇場跡。
 ごくり。
 天霊院は、はっきりと言い放った。
「さあ。約束通り、ボテイン卿を連れてきたであろう。
 そちらの二人を、離すのだ!」
 メニエスは無言だ。
「メニエス様……」
「む、わかったわ」
 吸血鬼ミストラルが、その場を離れ、何処かへ去った。
「……?」
「いいだろう。確かに」メニエスが言い放つ。「では、双方味方の側へ歩み寄らせよう」
 ボテイン。ファルコン、オルキス。ゆっくりと歩を踏み出す。
 ほぼ中央で、すれ違う。すれ違った。
 固唾をのむ天霊院。手袋を握り締める。
 メニエス、動かない。
 メニエスのもとへボテイン。天霊院のもとへオルキス、ファルコンが戻った。
「……」
 メニエスの方を見る天霊院。
「……では、これで人質交換は無事、なされた」
 メニエスは静かに言うと、踵を返した。
 浸食された観客席一帯に、幽鬼のようにゆらりと、姿を現した影たち。
 グレタナシァのならず者どもだ。
 天霊院は、急いでオルキス、ファルコンの縄を解き、騎狼を傍へ呼ぶ。
 メニエス、ボテインも周囲を見回している。
「メニエス……ボテイン将軍、こちらへ!」
 片側の入口で、黒羊の兵らが手招く。
 もう片側、天霊院らの向かう入口……黒い影の戦士たちがぞろぞろと出でてきた。



 円形劇場跡の最上部の瓦礫に、身を潜めていた霧島。
 すでに狙撃の準備はできていた。
「そういうことなのだな。ならばこちらも」
 霧島は、銃口を。
 ざっ。
 霧島の背後。ミストラルだ。殺気看破で周囲を警戒していた。ミストラルのカタールが振り翳される。
 霧島は、尚、銃口を下に向け、照準を合わせている。
 ミストラルの鋭い一撃。
 がっ。それを、弾いたのは、
「そうはさせないよ」
 伊吹 九十九(いぶき・つくも)だ。
「くっ」
 ひゅんっ。九十九の剣がミストラルを払い除ける。ミストラルは後ろへ飛び、反撃し九十九と打ち合う。
「霧島」
「……ああ」
 霧島の射撃が、騎狼に乗った天霊院らを引き摺り下ろそうと纏わりつくならず者どもらを、撃ち抜いていく。
 席の上方にいる者らが、こちらに気付く。
 下で、グレタナシァのならず者どもに、狙撃手を殺せ、追え、騎狼を逃がすなと指示を出す、黒羊の兵ら。ファルコンが肩を斬られた。天霊院らはそのまま、入口を脱する。ボテインは、まだ霧島の腕なら射程内だ。
 私たちも、行くよ! ミストラルの容赦ない反撃を、防ぎ、九十九が叫ぶ。
 どうする。ボテインは何かわめき立てている。卿自身が、この卑劣なやり方を気に入らないのかも知れない。だが。ボテインが勇将であれば、彼のもとでこの卑劣な兵どももまた生きながらえ、教導団の敵として何度も襲いかかってくることになるだろう。
「……」
 霧島は、もう一度ただ静かに照準を合わせた。これは戦いである。もう後に引くわけにはいかないわけだ。
 霧島の狙撃が、ボテインの頭を射貫いた。