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黒羊郷探訪(第3回/全3回)

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黒羊郷探訪(第3回/全3回)

リアクション


もう一つの修学旅行 黒羊郷探訪。そして次回へ……

 少し出発が遅くなってしまったけど。
 教導団の遠征軍も、援軍も出発した旧オークスバレーを、ひとりの(元)お嬢様が出発する。
 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は、お友達の宇都宮 祥子から、異端と呼ばれる者たちの住まう土地があると、宇都宮自身もそこに向かうということを聞き、行ってみたい、と思っていたのだった。
 教導団の事情は知らないけど……
 ゆるゆると準備を済まし、百合園からのんびり歩いてきた。
 なので、旧オークスバレーに着くだけでもちょっとした(以上の)遠足であるが。
 旧オークスバレーの景色も壮観であるが、ここはすでに第四師団の統治下にあるので、かつてここを闊歩したオークや魔物の姿はないし、このあたりに見られるのは主にシャンバラ人だった。それでも、東や西の集落では、空京では見られないような物品を見ることなどはできる。西へ進めば、ハーフオークたちが住まうという里があるという。だけど今は、街道を東へ。
 七瀬は、離れた異国の人とも交流したいな。という思いを胸に、街道を抜け、草原地方へ。
 草原地方では、他の者たちがここを通っていったときと同じように、風が草を揺らし、開けた空いっぱいに、ちぎれた雲が流れてくる。北の方から……。だけど、少しずつ空気が変わり始めているのかも知れない……。
「ああ。気持ちいいところだよね!」
 七瀬は風を頬に受け、しばらくそこに立っていたが、ふっと目を開けると、この草原一帯を、黒い甲冑を纏った兵隊が埋め尽くし、こちらへ続々と向かってくる……いや。そんなことはなく、一瞬のことで、すぐに辺りはただ風が吹くばかりの草原に立ち戻ったが。
 戦いを好まない七瀬は、ぞっとしたが、もちろんただの錯覚だと思い、すぐ明るく元気ないつもの七瀬に戻ると、また歩き出した。
 まったく、他に道行く旅人もなく、静かな草原だ。
「そうだねぇ。もう、復活祭も終わってる頃かねぇ。寒くなると、その間はここを通る旅人ってのはめっきり減るねぇ。
 お嬢ちゃん、あったかい団子だよ」
 ぽつんとあった草原亭にも、七瀬以外に客の姿もなく。おやじがお茶と団子を出してくれた。
「この先の土地に住む人たちが異端って言われるのは、女王様以外の神様を祀ってたから? かな?」
「ふむ。おやじにはちょっとなぁ。せっかくの旅だ。その目で見てくるのがいい。
 でも、異端と言われるのは、昔から、戦いを落ち延びた戦士や、確かに異教とされた信者などが多くこの地へ逃げ込んだからと……シャンバラにもそれだけ様々の争いや出来事があったのだろうな。それには、宗教なり何なりの理由があるのだろうし……
 彼らは皆それぞれに理由があり、皆自分たちを守るために、隠れて暮らしておったりするのだろうから、難しいものも多いだろうなぁ。
 まぁ、草原地方を抜けるまでは……もし草原狼に襲われそうになったら、おやじ(わし)のことを言ってみな。そしたら逃がしてくれよう。
 旅先で、親切なものに出会えるといいな」
 七瀬はお礼を言って代金を払うと、再び旅立った。
 七瀬は、シャンバラ以外の地方のことも、考えていた。
 生徒らが各校に入学して、もうあらかたシャンバラ地方を冒険し尽くしただろうか? これから向かう異端の地とされているところが、シャンバラ地方と一風変わったところなら、それは未だ見ぬシャンバラ以外の地方と近いということになるのかも? 違う宗教、違う文化…… 黒羊郷を含む、ヒラニプラ南部の異郷。もちろん、そこはヒラニプラの山奥にある辺境の一地方に過ぎないのだが、それもまたもっと別の広い世界の縮図であるということも言えるかも知れない。
 やがて日が暮れ、谷間の宿場といわれるところに到着する。
 だけど……随分真っ暗だ。
 これも、幾らか前にあった谷間の勢力・山鬼と教導団との戦いで起こった火によって、すでにここに住んでいた多くのマニュアルにも載っていない謎めいた住人たちは、どこへともなく去っていってしまっていた。戦や、またこの谷間も今後発展することになるのかも知れないが文明の開発などは、世界の様相を変え、そこにいた者をどこかもっと隅の方へ追いやってしまう、ときに消し去ってしまうということもある。
 七瀬は幾分歩き回ったあと、ようやく民家らしい明かりを見つけ、戸を叩く。
 マニュアルの種族にも載っていないような、頭が双つあるねこみたいないぬみたいな生きものが出てきた。
「……」
「マ、モガ?」
「あ、あの、こんばんはっ。あたし、旅をしてきて……もしできたら、一日家事のお手伝いをするので泊めてくださいっ」
「モ、メマガ?」
「知らない土地の人とも交流したいなって、思って……あの、えっと……」
「マーーー……モマガ。ガ」
 生きものはよくわからない表情をして、戸を閉めてしまいそうに。
「あのっ」
 七瀬は、やる気を見せるため、せっせと戸口の前を掃除してみせた(ハウスキーパー使用)。
「マ、モガ。メマガ」
 生きものは、七瀬に戸口を開けてくれる。
「あ、よかった。泊めてくれるんだね。ありがとう!」
 そこには、辺境の生きものなりの生活というものがあった。七瀬は、生きものが作る料理(餌?)を見て覚えたり、同じように頭が双つあるいぬかねこかわからない顔をした生きものの赤ん坊に子守唄を歌って寝かしつけたりした。
 早起きの七瀬。樹のあったかいベッドで、疲れは取れていた。生きものは、元来そういう生きものなのか、朝になっても起きず、すやすやと気持ち良さそうに眠っているので、七瀬は朝ご飯を作って、言葉は違うからわからないのだろうけど……でもお礼の手紙を残して、出発することにした。
「うーん、いい天気! 今日もいっぱい歩くぞー!」
 ガッツポーズを決めて。
 さて、七瀬はこのあと、黒羊郷にまで旅を続けるのか……それはまた、別のお話となる。
 三日月湖に向かえば、教導団に合流することになるだろうし、その先は、今から戦争区域となるだろう。幾つかに分かれる山道を行けば、この谷間の宿場のような、あるいはもっと人知れぬ集落や隠れ里にたどり着くかも知れない。しかしそういった土地も、この谷間の宿場にしても、人の手が入ることで姿を変えていくだろう。

 今回のシリーズ・黒羊郷探訪。
 黒羊郷までの旅は、おのおのの事件に巻き込まれてそこに至る道を行った幾名かの生徒らによって達成され、彼らはその地とそこで起こったことを目にすることとなった。
 もともとは、(修学旅行とは名ばかりのバトルだった)「教導団修学旅行2019」の、もう一つの修学旅行としての意味を帯びて開始された本シナリオであった。その意味においては、黒羊郷にたどり着けるかどうかではなく、各々の旅中を楽しんで頂く……ことになっただろうか。もちろん、教導団の生徒も教導団でない生徒も。

 一方、最初から黒羊旗という不穏な影が示唆していたように、軍事シナリオの色彩も帯び、第二回から姿を現した謎の女性=十二星華・牡羊座(シェルタン)のジャレイラであったということもこの最終回で明らかとなり、教導団との戦いにも発展することとなった。
 これに、女王器も絡んでくる。

 次回シリーズは、教導団と十二星華を擁する黒羊郷とのバトルパートと、女王器を巡る、今シリーズにおけるような異郷の旅を通しての冒険パートの絡み合う内容が考えられている。

 また、バトルパートにおいては、もちろん個々の武が生かされる戦闘もありつつ、部隊による戦略・戦術を生かした戦いも考えているため、最後に、現在の教導団第四師団において正規の部隊とされている各部隊状況を報告しておくこととする。



各部隊

*あくまで第四師団(とくに今回の「黒羊郷探訪」)における部隊としての描写をソースとしています。
 もちろん、その後の部隊編成や変動などについては、次回シリーズでのアクションで変更可能です。

【騎狼部隊(イレブン・デゼル)】兵50(シャンバラ騎狼兵、*NPC*浪人三人衆)/黒羊郷付近・本拠地不明
・ 黒羊郷付近まで騎狼で移動し、各自が騎狼とも一時離れ、潜伏。その後、黒羊郷付近の各所で、黒羊軍の砦が謎の部隊による襲撃を受けるという噂が聞かれるようになる。

【騎狼部隊(一条アリーセ・林田・メイベルら)】兵100(シャンバラ騎狼兵、*NPC*ユハラ)/三日月湖
・ 一条は、騎狼部隊の残りを、観光事業などに役立てようと考えていたが、騎狼部隊は第四師団の対黒羊軍の要としてもその力が必要とされるので、戦闘部隊や一方での復興支援部隊などの再編が必要と思われる。

【獅子小隊】兵100(レーゼセイバーズ)/三日月湖
・ 東の谷の小寺院で療養状態にあった隊長レオンハルトを、副官イリーナらが救助、三日月湖に帰還。レーゼマンの率いたレーゼセイバーズ(元レーヂエ部隊)が獅子小隊の兵力として加わることとなり、改めて、対黒羊軍の主力として前線で戦うことを、パルボン亡きあとの臨時総指揮官ロンデハイネより任命された。

【ノイエ・シュテルン】兵100(ソフソ・ゾルバルゲラ兵)/三日月湖
・ 黒羊郷より隊長クレーメックが帰還。クレーメックらの行動については、事件に巻き込まれ黒羊郷に至ることとなったため咎は無し。香取の率いたソフソ・ゾルバルゲラ隊がノイエ・シュテルンの兵力としてこの地に残されることとなり、改めて、対黒羊軍の主力として前線で戦うことを、パルボン亡きあとの臨時総指揮官ロンデハイネより任命された。

【龍雷連隊】兵100(浪人勢)/三日月湖北・グレタナシァ国境付近の出城
・ 戦後処理の諸々から、浪人の中でも腕の立つ浪人勢もしくは志願者が龍雷連隊の正式兵力とされ、対黒羊郷の最前線に部隊ごと送られることとなった。

【黒豹小隊】兵50(ねこ(ニャオリ兵)、*NPC*ドリヒテガ)/三日月湖
・ にゃんこ小隊長でもある黒乃のもとに、対黒羊軍の兵力としてオークスバレーから送られてきたニャオリ兵が、結成された黒豹小隊の兵力として加わり最も新しい部隊となる。位置付けは未定の部隊となる。

 兵力は、上記を基本とし、これに本国から送られてきた援軍が加わる。(援軍兵の個々の戦力については基本の兵より劣る。)
 三日月湖においては、【みずねこ】(ミューレリア)、【黄金の鷲】(エル)が戦闘時、教導団以外の遊撃や防衛の任にあたるなどの意見も交わされている。

ヴァレナセレダ、黒羊郷方面
【ぶちぬこ隊】兵50(ぶちねこ、*NPC*れおにゃ)/ヴァレナセレダ
・ 教導団=ヴァレナセレダ同盟軍における、ヴァレナセレダ方面からの対黒羊軍の主力部隊となる。他、ヴァルキリー勢が兵力となる予定。


その他の勢力*わかっているもののみ
【湖賊】兵500?(湖賊、*NPC*テバルク×2)/三日月湖
・ 頭はシェルダメルダ。すでに教導団=湖賊同盟は成っている。

中立勢力?
ヒラニプラ南部勢力の幾国か。詳細は現時点では不明

敵勢力
【黒羊郷】【ドストーワ】【ブトレバ】【ハヴジァ】【グレタナシァ】

滅びた勢力
【撲殺寺院】/旧オークスバレー北部山麓
・ 黒羊郷によって滅ぼされた。
【山鬼】/谷間の宿場
・ 教導団(香取隊)によって滅ぼされた。

担当マスターより

▼担当マスター

今唯ケンタロウ

▼マスターコメント

 ご参加頂いた皆様。大変お待たせ致しました。
 またお詫びからマスターコメントを述べなければならないこと不甲斐無く思うばかりで、今回わたしにとってとても筆の重くのしかかる局面もありまして、とうとう執筆遅延中……まで表示させることとなってしまいました。
 今はお待ち頂いた皆様にただ深くお詫びを申し上げたく思います。

 *

 「黒羊郷探訪」としては、今回が最終回であり、タイトル通りの意味においては、黒羊郷入りした数名の方々によって果たされることとなり、何が起ころうとしているかも明らかになりました。もちろんそれだけが物語の目的であったわけではありませんので、それぞれの旅の過程における冒険で得られたものがあったならシナリオは成功だったと言えます。それが何かは様々だと思いますが。中には苦い思いやシビアな体験であったりを味わうことになった方もいるかも知れませんが……第四師団シナリオではそういった経験を今後の物語の豊かさにつなげていければなどと思う次第です。
 黒羊郷以外にも、戦いの場となった三日月湖、谷間や、その周辺地域や何処とも知れない空間まで様々な場所も出てきました。そういった場所も含め、それぞれの見てきたものや位置付けは、このまま次回シリーズとして明らかになった【十二の星の華】に引き継がれることになります。

 以下は、章ごとに簡単な補足やあれば後書などを付け加えておくことに致します。(それを超える範囲のものは落ち着いたらブログにでも……)

 ・ プロローグ プロローグII「しるしの女」として十二星華NPC・ジャレイラのエピソードを書きたかったのですが、カットで……。全く時間が足りませんでした。次回は本格的に十二星華編に入るので、これに触れたいと思います。
 ・ 第2章 街が滅茶苦茶になったのは、他ならぬ今唯マスターのせいというのがいちばん大きいかと思います。どうかお許しください。
 それから、流れとして片付けやすい・わかりやすいに過ぎるという気もしますが、ここでは最終的にバンダロハム貴族をこの地方における悪・倒されるべき存在として描くことになりました。このあたりは第4章での課題に引き継がれる部分に含まれるかも知れませんが、実際にはもっと複雑であるべきところだったとは思います。
 ・ 第4章 このシリーズには、「バトル&冒険」というキャッチを掲げてはいたのですが、加えて、軍事や政治がわりと本格的に絡んできたように思います。もともと、教導団シナリオですし、わたしのシナリオにもそういった性格・色彩があるだろうからと思うのですが、(戦争ではなくバトルGMとして出発しているということもありますし)半ば以上試行しつつの部分になっています。この第4章などは(「三日月湖畔経済共同体」「開発事業案」あたりはとりわけ)、より直截に提案者各氏のアクションに拠るところが大きくなっています。今後、どういった判定をして展開させていこうかというのが他のパートよりまだ試行錯誤段階にあります。(たとえば……戦闘のアクションをかける場合、剣で敵と戦うというアクションをかけるなら、それは数分の範疇のアクションであるということが言えると思います。これに対して、こういった復興事業を行う、というアクションの場合、それは実際には数ヶ月から数年に及ぶことになるものであり、一回のリアクションの中では、その復興事業の提案をする、といったことになるかと思います。ですので、アクションの採用率は高い(そのまま案を発言として述べるといったふうに)とも言えますが、成功かどうか(それが実現するか(たとえばそれで実際に街がどのように変わっていくかなど))の判定は二回目以降になってくるといったことが発生すると思います。一回目の誰かの提案を最初の叩き台として二回目に議論に発展する場合もあるでしょうし、もちろん一回目に幾つかの案が出てぶつかり合って反応するということもあると思います。わたし自身も貴族や住民といったNPCになって加わります(どこまで行けるかわかりませんが)。というわけで、わたしのシナリオとしては他パート(バトル、冒険)より試行錯誤を含むと思うのですが、引き続きこれにおいて活動してくださるのももちろん歓迎いたします。皆様のご意見もありましたら、お聞かせいただきたく思います。
 ・ 第5章 人質交換に関しては、マスターとしては描いてみたかったシーンで、派手になるかと思いきやこちらメインでアクションをかけてくださった方は何と三名のみでした。それぞれに活躍して頂きました。円形劇場跡というのも何か理由があったというよりは勘で選んだ場所でした。
 ・ 第6章 まず訂正なのですが、第一回時点では、黒羊郷における「神の名は?」という問いに対し、「ラス・アル・ハマル」と書いたのですが、黒羊郷における教祖の名ということに致しました。これは第三回に至るまではっきり決まっていなかった点ですので、紛らわしいことになり申し訳御座いません。
 あと毎度、物語終盤の策の嵌り具合や展開が、かなり大ぶり過ぎるきらいはあるのですが……
 全体的には、教導団まさかの大勝利。だったことになりそうです。
 一回目時点では、教導団側が三日月湖からも敗退する、という展開になるかとも思っていたのですが……
 それでも、おそらくオークよりは強かった黒羊軍。(あるいは、「黒羊郷探訪」はやはり、ジャンル゛冒険゛でしたので、前回゛バトル゛のオーク戦よりも、戦闘や戦略ものより読み物として物語が進行する部分が大きかったなとも思うと、戦いも全局においてはオーク戦よりむしろ甘めだったかも知れません。ボス級の敵キャラについては全体的にはかなり強くなっているのですが。次回シリーズは、再び、そしてより、戦術や戦略を重視したパートを含むことになります。)徐々に、戦いも厳しくなる、筈。
 宴会、温泉はまた敵を打ち倒した後に……。

 *

 また今回、このマスターよりを個別コメントに代えさせてください。色々書きたいのですが、申し訳ございません。各部隊に今回からご参加された方には、称号をお送りしておりますので、ご確認ください。特殊な称号、特殊な状況下にある方、あと若干の補足のある方中心にメッセージお送りしています。次回シリーズ参加にあたっては、基本的には今回までのリアクションにおける位置、また次回のガイドから(スタート位置や設定を)ご判断ください。
 今回は、かなり難しい位置からアクションを取って頂いた方幾名か、お疲れ様です、それにもちろんすべてのアクションを送ってくださった方ありがとうございました。
 また、今回までの位置を次回シリーズに引き継ぎますが、招待枠については一旦なしとさせて頂こうと思ったのですが……次回物語に移る上で、あえて教導団と敵側もしくはそれに近い複雑な位置にある5名にのみ絞って送らせて頂きました。次回も数回に渡るシリーズとなりますので、また皆様にその何処かで、お会いできればと思っています。また、いつの日にか…………(今唯)

 追記2/10*文字化けを修正致しました。キャラ名が一部入れ替わってしまっていた箇所を修正致しました、申し訳御座いません。