リアクション
* 10分程後。 ちゃららんりーん(何の効果音) 「……」 「おぉーユウ……綺麗じゃないか」「きゃー、ユウさん……ぽ(ルイス)」 「ルゥのメイクは完璧ですから☆」 三厳は、「無力なボクを許してね」と、涙ながらに合掌。 「今回は、メイド服(朝霧さんの?)にしてみました」 ユウ、「……(でもちょっと似合ってるかもと自分でも」 「で、俺の方はというと、既存の服をビキニにしてみた。これで超感覚で耳としっぽを生やして、獣人だ」朝霧も、獣人と契約を結んでいる。「セイカの方は、帽子と服は脱がして、ワンピース仕立てにして、SPルージュで雰囲気変えて、俺の妹ということで。 おっ。このセイカ……可愛い」 「はあ、はあ……」 「垂、騎凛先生苦しそうだよ。それどころじゃないっ」 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)は、ジャタ族の衣装に、ブラックコートを巡礼風に。この時期、黒羊郷に行く巡礼が見られることは村で聞けた話だった。 ライゼは、騎凛にヒールとキュアポイゾンを使う。サクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)も、ナーシングで応急処置を施し、何とか騎凛を、一時的にでも歩ける状態にした。 「騎凛先生。つらいでしょうけど、今しばし……」 サクラは、ルイスとセットで巡礼に付き従う護衛に扮装。「流しの武芸者が傭兵をやってる、といったところでしょうか?」 「僕は、徒手の武僧として振る舞いますよ」ルイスは、顔までよごして気合が入っている。 三厳、ルゥ、カナリー、それもグレゴリアも、ライゼ同様、巡礼の姿。 「わしとて聖職者の端くれよ。生前はトゥールからローマまで歩きに歩いたものだ」しかしグレゴリア・フローレンス(ぐれごりあ・ふろーれんす)は自らの格好を少し見返し、「……ううむ、それにしてもこの黒ローブ、異端っぽい……神よ許し給え」 ともかくこれで、基本的には巡礼の(女の子)一行にその護衛、ビキニとワンピースの獣人姉妹、そしてメイド……という具合になった。……だ、大丈夫か。 ユウ、「…………(もしかしたら自分、けっこういけるかもと」 1-02 ヴァレナセレダへ向かうそれぞれ 騎凛らの居所から、そう遠くはない山の一角。 盗賊の網を逃れた菅野 葉月(すがの・はづき)が、小さく火を焚いている。この辺りの山の夜は、随分冷える。一時は、幾らか雪もちらついていた。あ、それからミーナに言わせると、変なのも一緒に拾ってきてしまったのだけど……。 「すまなかった。俺は行こうと思う(騎凛のもとへ)。では、菅野、ありがとう……」 久多 隆光(くた・たかみつ)だ。 グランドシナリオの後、盗賊のところに身をくらませていた(その後の急展開は本シナリオ第二回参照)。 「あ、そうなんだ。頑張って騎凛先生と一緒になってね、久多さん。じゃあね」ばいばい、という感じでミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)。 「……」 「ミ、ミーナ……! えっと……久多さん。僕はこの先の地理には詳しくないから、盗賊の仲間になっていた久多さんに案内してもらえると、ありがたいのですが?」 「ええー……(葉月と二人がいいよー)」 「……ああ、そうしたいところ、そうするべきだろうが、そっちの魔女さんのこともあるし」 「久多さん。えっと、さっき僕の、む」(前回18頁参照) 「わ、わかった」 「葉月はワタシのもの! 近づく虫は駆除に限るよね!」 「……」ど、どうしろと……。うううっ、最近、苦い思いが多すぎるぞ。これは、俺にとってのいかなる試練なのか。だけど、だけど俺はこれを乗り切って、必ず騎凛に会う! 俺は、決めたんだ。俺は騎凛に……騎凛に…… 「おーい、クターーー!」「おい、火のにおいがしねぇか。こっちだ!」「教導のやつら、まだ、このへんをうろついてやがるか」 「は、葉月」 「ええ、ゆっくりしてられないですね。騎狼でこれだけ駆けてるっていうのに」 菅野はぱぱっと火を消して、立ち上がった。 「……ああ。この辺りの山一帯は、盗賊の庭みたいなもんだから。 案内するぜ。俺も一刻も早く、……騎凛に会いたいし。ともかくこの先に、砦がある。そこをどう抜けるかだ」 * さあ、ここはその黒羊旗の立つ砦。その入り口の前で。 「見てわからないのか? こいつ等はタヌキの獣人だ。争いに巻き込まれて親を失ったから、うちで面倒を見てるんだ」 「はあ、はあ……」 「わかった、わかった、この辺には獣人どもが多いからな。ところでそのタヌキ?の獣人。顔が真っ青だが……」 「ああ。そうなんだ。千年祭に参加するために来たが、俺のこの妹が体調を崩してしまったため、ハルモニアにいる友人のところに寄りたい」 「ハルモニアに友人か。気の毒だが……いや、ともかく、ハルモニアには今は近付かぬ方がよい。千年祭を見に行くなら、黒羊郷にだって数多く寺院があるし、そこに行けば無料で診てくれるさ。それより……」 門兵は、じろりと、こちらを見てくる。 「な、なにか……?」 「いや、おいその妹タヌキ、相当やばいんじゃないのか? 死にそうだぞ」 「はあはあ、はあはあ……」 「むう……。ここにも、砦付きの軍医はいる。幾らかの処置はできるだろ、ここで少し休んでいくといい」 まずいな……朝霧、ルイスは、顔を見合わす。兵は、騎凛を運ぶため、人を呼ばせた。 「どうした?」 「あ、いや……数年ぶりに来たものだから、ハルモニアの最近の様子を……(ルイス、ルイスどうする?)」 「(交渉失敗とあらば仕方ありません。突破を図ります。そのためにロボを……。しかし、今少し待ちましょう)」 ルイスは、携帯を握りしめている。一度鳴らせば、潜入しているロボが動く。 砦から、数名が出てきた。出てくるや…… 「! おい、そいつら」 「む、どうしかしたか。病人がいるのだ。手を貸して……」 「や、ちょっと待て。山の……」出てきた男は、声をひそめ、「……から連絡があったろ。この集団、数が一致しないか?」 「ああ、しかし……」兵らは、じろじろと、こちらを見てくる。 「ど、どうされましたの??」 兵らはこぞって、ユウをじろじろ見ている。 「……ぽ」「ぽ」「ぽ」 「……ユウ……」三厳、再び合掌す。 「ごほん。……失礼、違ったな。男女の数が合わない。 まあいい。教導の奴らの居所は、さっき捕えた弁髪ダリ髭の野郎に拷問くわえて吐かせてやるさ」 「!」「弁髪……」「ダリ髭……」 マリーしかいない。 「ああ気にするな。こっちの話だ。 さて、どうする。何なら、タヌキだけ残してって、あとは先に行ってもいいぜ?」 「お、おい!? なんだ、中で……」 「ん?」 砦の硝子が次々に割れ、内部で騒動が起きている。 「はっ。ルイス……?」 「ええ、騎凛先生を置いていくわけにはいかないでしょう。 朝霧さん、教官を頼みます。……少し蹴散らしていきますから」 朝霧は、頷いた。ルイスは武器を取る。 「あっ、おいお前ら!」 朝霧、騎凛を背負い、走る。小さな巡礼たちも、走る。 「自分も、騎凛先生を護りとおします。騎士として!」 ユウ・メイドver.も剣を抜いた。 「おっ、このメイド?」 「こいつら怪しいぞ」 「おい、出口を固めろ!」 出口では、 「たぁっ!」 隠れ身で門の脇に身を潜めていた三厳が、兵を打ち払う。 「おのれっ」 追おうとした兵に、ルイス、サクラ、ユウの三人が、立ちふさがる。 「貴様ら、何者だ!」 「食えれば仕事は何でもよかったのさ。このところの騒ぎには感謝してるぜ? ってわけで、ただの傭兵ですよ?」 カン。黒羊の兵と打ち合う、ルイス。 兵は、続々砦から出てくる。ロボは……無事逃げたか? 出口にも兵が出てきているが、もう朝霧らの姿は見えない。 「……うーん、軽く無双を要求されている気分ですね。実力が伴っているかは別として」 奈落の鉄鎖を振り回し、チェインスマイトで攻めるサクラ。 「ルイス、そろそろバーストダッシュ(脱出)でしょうか?」 「ええ、それにしてもかなりの数。早く脱しないと取り囲まれ……ユウさん? ユウさん?!」 「はぁっ!」メイド姿で、敵のど真ん中で華麗に舞うユウ。 「もしでき得ることなら、わかっていたならロボに伝えて、マリー殿の捕らわれている位置だけでも見つけておければ……」 「だけど、あのマリーさんが捕らわれるとは一体何故……?」 戦う三人のもとへ、敵兵をかき分け近付いてくる者があった。 「どけ、どけい! 私が黒羊郷、西の関所の守将ゴーランドラ。弁髪の次に血祭りに上げて欲しい奴らはどいつだ?」 「何?」 黒光りする全身鎧の将。マリーを見上げる以上の巨体だ。……こいつが。黒鉄球を振り回し、ゆっくりにじり寄って来る。 「てぁっ!」ユウが、舞う。 「ユウさん、危険だ!」 * 「う゛う゛う゛……さ、さう゛いな。サミュ……。かか、帰るか?」 「ン? 何処に帰るのレーヂエ。ここ山の中だヨ」 「……だよな。う゛ーうう゛」 雪降る山道を行く、サミュエル・ハワード(さみゅえる・はわーど)(犬耳)とレーヂエ(猫耳)。 「あっためあおうカ?」 「……そ、そうか……?」 雪。すでに、二人の肩にも頭にも降り積もってきている。 「ネエ、レーヂエ? ヴァレナセレダってどの辺かナ?」 「ヴァ・レ・ナ・セレ・ダ・・?」 「ウン。ヴァレナセレダ向かってるんだよネ。ハルモニアのあル……」 「……」「……」 風が、とても冷たい。(犬)耳(も猫耳)も冷え切っている。 「……ここは何処だ? サミュ……」 「山の中……」 ぴゅうぴゅう。ハックション。 「ふっふっふ」 「サミュ?」 「じつは宿でお弁当つくってきたのダ!!」 「……お、おお! そ、それはいいぞ。そろそろ、お昼の時間だものな」 「レーヂエ……今、真夜中だヨ」 「……」「……」 辺りの真っ白い木々の合い間合い間から、見たこともない黒い獣人たちが、その様子を、目を鈍光らせて見つめている。 |
||