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リアクション
5-03 ジャレイラ(2)
「ジャレイラってのは何考えてんだか……
まぁ、ティアには興味を持ってるみたいだし、このまま近付けさせておくか」
メニエス配下のロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)だが、メニエスが谷の南側でジャレイラに代わって一時指揮を執ることになったため、ティアを連れてこちら(ジャレイラのいる陣地)へ来ている。ティアを連れていくよう言ったのは、ジャレイラ自身だ。意図は、わからない。
ヒラニィの言っていたように、同族(剣の花嫁)であるからかも知れない。
最初、ジャレイラに付き従っていた綺羅瑠璃というのも、剣の花嫁だった。瑠璃は、メニエスと共に、対教導団の指揮を預かってここにいないが、代わりに、ティアをこちらに連れてきたのだろうか。
うーん。よくわからない。こんなペットが何だって言うんだろ。
ロザリアスはそうぼやきながら、ティア・アーミルトリングス(てぃあ・あーみるとりんぐす)のことをまた、ばし、ばしと叩くのであった。
「はぁ。暇なんだけど。ペットを叩くのにも、飽きたしね……
おっ。ジャレイラ。来たようね……よし、ちょっとこれを連れていってみるか。ほら、来なっ」
「……う、ぅ」
ロザリアスは、幕舎の方から歩いてきたジャレイラの方へ、ティアを乱暴に引っ張っていく。
「ね、ね」
ジャレイラが気付く。
「ああ。……」
ティアは、ジャレイラと目が合うと、すぐに目を背ける。いつも、何かに怯えるようなティアである。
「……。ティア。ロザリアス、何故そのようにいつも、ティアを無理矢理引っ張って歩く。
メニエスのこともあるだろう。我が介入することではないが……」
ティアがこのように怯えているのは、メニエスやロザリアスのせいであろうとも、言いたげではある。
ふん。……ま、それはそうなんだけど。と、ロザリアスは悪戯な笑みを浮かべる。……そうだ。
ロザリアスはまたティアのことをわざと少し強引に引っ張って、
「なんで連れて行こうと思ったの?」と言い、「あ、兵士の慰みものとして使うとか? 戦争とかじゃ絶対出てくる問題だからね。生きてさえいれば、文句は言わないから好きに使っていいよ〜」
そう言ってみた。
ティアはそれを聞くと、さすがに泣きそうな表情を浮かべ、首を振った。それでも何も反抗の言葉は出ないようだ……が、不快を表したのは、ジャレイラだった。
「何?」
ジャレイラの怒りは、意外な感じであった。
「……。別に、冗談だけれど?」
ジャレイラは行った。
ふーん。ティアのことは、同情でもしているのだろうか。ロザリアスは考える。友達だとでも? 同族であることから来るものなのか。それとも、ジャレイラ自身の……? 何れにしても、ティアには心は許しているようだね。……
ロザリアスは、ティアを見下すように見やる。「文句あるの? 何、さっきの表情。首振ってたよね?!」
ティアを引っ張って、与えられている部屋へ戻っていく。
「そうだ。本当に、そうしちゃおうかな。ジャレイラはああ言うけど、男どもにとってはね?」
ロザリアスは意地悪に言い放ち、ティアが嫌そうな顔をすると睨み付けた。
「なんでも……ないです……好きに、使ってください……」
*
「……」
我ら(剣の花嫁)は、決して他人に使われるだけの存在ではない。
我々はまして、(光条兵器をしまうための)道具ではない筈だ……!
我々は、自ら剣をとって戦うこともできる。現に我は、誰よりもこの剣を扱えるのだ。
そしてもちろん、戦うことだけではない筈だったのだが。
何れにしても、結局のところ戦いのために利用されたのであれば、また悲しい存在であった。