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リアクション
5-04 戦いのために生きる
「何してる……琳?」
ジャレイラが自室へ戻ると、琳が部屋の片付けと共にちょっとした模様替えをしていた。
「あ、ああ、ええっと。
あんまり何もなくて殺伐してるから。今はここが、ジャレイラさんの帰ってくる家なんだと思って……もらおうとか」
「花、か。
ふぅん。……落ち着かんな」
「あ、駄目……だよね」
「いや、……。
戦に来ているんだ。教導団を倒し、そうすれば……」
そうすれば?
ジャレイラさん。貴女はどこへ、帰るの……?
我々のやり方は、間違っていたのだろうか。
「? ジャレイラさん」
「さて……。
そろそろ、前線に戻らねばならないか。早く、教導団を倒してしまわねば」そうすれば、こんな戦など。
「ああっ。……そうかぁ。そうだよね。また陣を移動するんだもんね。
あの、ジャレイラさん……
どうしてそんなに、……やっぱり教導団と?」
「我が使命だからな。教導団がいる限り、ヒラニプラに平和はない。やつらは滅ぼされねばならない」
教導団の生徒達にしても、上からの命に従い、敵を排除する。それが、軍人である、か。
ジャレイラも、また、同じく敵側十二星華であるティセラがそうであったように、エリュシオンによって、(彼女の場合、教導団が敵であることを)教え込まれていることになる。
しかし、ジャレイラが戦わざるを得ない……いや、戦い続けることになるには、そうなる必然性というべき彼女なりの生い立ちや境遇もあったわけであろうが。ともかく、ジャレイラ自身にとって今や、使命であり生き方の信念となっていたのだろう。であるならそれはもう彼女自身の意志、と言えるだろうか。ある日突然、洗脳が解けるように、簡単に生が変わるものではない。戦うこと。ジャレイラは……戦うしかあるまい。無論、戦う者にとって、その先に待っているものの姿はいつもよく見えている筈だ。それでも。
シャンバラ教導団の生徒達は、その道の始めは自ら選択している者も多い。もともとの性質や、物心付くより以前に特殊部隊にいたことから、より必然的にその道に来ざるを得なかった、といったことはあるだろう。
多くの者は、戦うべき理由を見出せずに、葛藤やとき反発を持ちながら、成長していくことになるだろう。その結果、(教導団を卒業するまでに)軍人であることを辞めるかも知れない。
そうでない者もいる。戦わずにはいられない者。戦うことが生き方になっている者。無論、その自らの生き方について、悩む者はいるだろう。だが、結局は……。
どの生き方が幸せなのだろうか。
いや、軍人とは……戦う運命から逃れられなくなったときにはもう、一般的な幸せなどは遠に手に入らぬものになっているのかも知れない。